2008年11月02日

吉越誠一郎 「デッドライン仕事術」(祥伝社新書)

元トリンプ社長の吉越浩一郎氏の仕事の能率をアップさせて、時間外をなくす仕事のやり方を開陳したビジネス本。

トリンプ当時から、独特の仕事の進め方で、業績を上げてきた
吉越氏の著作らしく、明解で、わかりやすいノウハウが満載である。

「デッドライン仕事術」とは簡単に言えば「就業時間も仕事も、すべてに明確な締切りを設定する」ということで、この締切りを意識して仕事をするからこそ、時間外もなくなり、能率も上がる、というものなのだが、よく読むと、単純にそれだけではないらしい。

例えば、

締切りを意識し、守らせるために、会議で、かなり厳しく、ボトルネックになっているところを確認して、鞭をいれたり

時間外をなくす意識づけをするために、終業時になると、自動的に電気が切れるシステムを導入したり、

勤務に集中できる時間を確保するために、会社外からの電話を取り次がない時間を設定したり

などなど、「デッドライン」を守るために様々な工夫がされている。

たしかに「締切りを守れ」といったスローガンを叫んでいても、守られないのが「締切り」といったものだから、

そのほかに

「仕事のスピード」は「判断のスピード」だ

とか

社内の「常識」のレベルを上がれば、判断力も高まる

など「うんうん」と頷けるアドバイスも数々。


ところどころ「ワーク」と「ライフ」はまったく別物だ(この時の「ライフ」は私生活という意味らしい)

「社員教育」は無駄だ

など、ちょっと欧米っぽすぎたり、過激過ぎるところがなきにしもあらずだが、かなりぐいぐいと引き込まれて読めるビジネス本である。

ただ、このうちの時間外禁止の話は、聞くところによると、吉越氏が社長の時は実行されていたが、社長が変わって、トリンプでも実行されなくなっている、という話を小耳にはさんだことがある。変遷というものは、どこの世界にもあるものなのだ。

まあ、そんなところを割引しても、ちょっとやってみようかな、と思わせるところの多いビジネス本であることには間違いない。さらに、かなり論旨が明快なので、サクサク読めることも確かである。

ちょっとした時間の合間に読むビジネス本としておすすめ。

2008年09月27日

佐々木俊尚 「フラット革命」(講談社)

「ウェブ世界」の水先案内人として確かな判断を示してくれる筆者の2007年の論考。


今回取り上げられているのは「インターネットのつくるフラットな空間がマスメディアや人間関係、政治などにどのような影響を与えつつあるのか」ということ。

構成は
第一章 フラット化するマスメディア
第二章 よるべなく漂流する人たち
第三章 組み替えられる人間関係
第四章 公共性をだれが保証するのか
といった構成で

インターネットとマスコミュニケーション、とりわけ、「ネット君臨」に見られる新聞系のマスコミから発信されるインターネット不信あるいはクズ論への論考

から始まり、

インターネットの普及とともに、崩壊と希薄化を増してきた戦後社会の「企業社会にくるまれた」家族主義の姿から、「ミクシィ」で象徴される、個々人を媒体とした新しい関係性の構築の姿

へと展開し、

集団である一定の価値観を共有(それが半ば強制された共有であっても)していた時代、いわば「われわれ」の時代から、インターネットによて、個々の価値観がいくつかの繋がりは持ちながらも、混じらない個体として存立する時代の「公共」のあり方、へと結ばれていく。


 純粋に個人的な感想をいえば、最初の旧来のマスコミが、インターネットの出現によりその足場を侵食されていく姿、本書の言葉を借りれば「匿名言論の出現」「取材の可視化」「ブログ論壇の出現」により、自らの不可侵性を失い、報道する、表現する自らが、報道・表現される客体となってしまう姿は、一種、旧勢力の崩壊の爽快さを感じてしまうところがなきにしもあらずではある。
 だが、章が進み、それでは、旧制度がまがりなりにも担保していた「公共性」あるいは「ぶつかり合う価値観の調整機能」を誰が、どう担っていくか、という問題には「うーむ」と唸って、立ちすくんでしまいそうになる。

インターネットが、個々人の自由なコミュニケーションの領域を開き、あらたな情報共有と議論の場であることを牧歌的に信じていればよかった時代は過ぎてしまい、インターネットの世界が、現実の世界と同じように人間関係の泥臭さにまみれていることがわかり(学校「裏掲示板」なんてのはその典型だろう)、その一方で旧来の人間系の情報システムを破壊してしまっている時代に突入してしまっていることは、おそらく間違いなくて、それは、戦後の「会社」を中心として生活や人生設計すればよかった時代が、「グローバル化」とともに、よるべない「個」の世界へ解体されていっていることと並行している。

そうしたネットの世界を象徴する言葉として。「サラダボウル」という表現が書中にでてきて、それはいわゆる「坩堝」と対比されて使われていて、文章を引用すると

ネットの世界では、坩堝という言葉はあまり使われない。坩堝は投げ込まれたいくつもの素材を溶かし、それらの素材を融合させてひとつにしていく。だが、ネットの世界では、投げ込まれた人々や情報は、決して融合するわけではない。差異はそのままで残されて、融合されることなく混沌とそこに存在しているのだ。
 だからネットの世界は、坩堝ではなく「サラダボウル」のようなものなのだ。サラダボウルの中にはトマトやレタス、キュウリ、セロリなどさまざまな野菜が投げ込まれ、しかし決して交じり合うことなく、しかしひとつの調和を保ってそこに存在している

とうことらしいのだが、そのボウルの中で、トマトとキュウリのぶつかりあいの調整や、レタスとセロリの味の違いを調和を、図っていくのかということが「公共性の確保」ということなのだろう。

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2008年08月15日

川崎昌平 「ネットカフェ難民」(幻冬社新書)

もともとは、日本テレビのドキュメントに端を発したものらしいのだが、その放映が2007年1月で、本書の刊行が2007年9月だから、ほぼ同時代的な「ネットカフェ難民」の記録として考えていいだろう。

筆者は、カバー裏を見ると、ひきこもり&ニート生活後、電話で連絡を受けて日雇い生活をするワンコールワーカーの生活に入ったらしい。
まさに現代社会のある一面をきちんと一人で体現している。

さて本書は、筆者が実家を出て、ネットカフェ暮らしをはじめ、貯金が心細くなると、携帯で登録して、携帯で連絡を受けて日雇い労働に出かける生活に入り、実家近くで、その日の日雇い労働を終える、という1ヶ月間の暮らしが綴られている。

正直なところ、ネットカフェというものには、ほとんど縁がない。インターネットというものが今のように普及した頃には、既に就職してから十数年が過ぎ、子供もいる境遇で、おまけに実社会に出るには、サラリーマンが普通で、自由業は、それこそ恵まれた才能のある人たち用のもの、会社を辞めるのは倒産した時かリストラされた時という時代を生きてきたため、今のようなフリーター、あるいは非正規が普通という世相は、なんとなくいごごちが悪い。
そうした個人的な感覚を持ちながら本書を読むと、なぜか妙な「明るさ」が漂っている感じがするのが不思議だ。

書かれているのは、けして波瀾万丈のことがあるわけではなく、派遣労働といっても、千葉の鞄会社での鞄の中敷きを入れる作業や、スーパーでの実演販売、イベントの後片付けといったん、なんとも平凡なもの、女性との出会いといえば、その千葉の会社でバイトの間だけ、同じバイトの女性を一緒に作業をするだけのものだし、寝泊まりは、題名どおりのネットカフェかマクドナルドという生活。

ネットカフェ難民に象徴される生活は、最近の陰惨な事件を連想させるように、けして将来に向けての夢とか野望といったことは、かけらも感じさせない生活なのだが、なにか妙な白夜のような明るさを漂わせている。

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2008年08月12日

佐々木俊尚 「次世代ウェブ ー グーグルの次のモデル 」(光文社新書)

インターネットのビジネスモデルをリードする「グーグル」を超えようとしているビジネスモデルの動向を知らせてくれるのが本書。

こうした新しいビジネスモデルを紹介する場合は、アメリカの最新モデルが紹介されることが多くて、なにか遠い世界で起こっている出来事のような印象を受けるケースが多いのだが、本書は、どちらかといえば、日本の新たなビジネスモデルの胎動の紹介に多くのページが割かれていることを評価したい。

取り上げられているのは、ミクシィ、ビジネス寄り、文系寄りのソーシャルニュースコミュニティや日本の新しい検索エンジン開発の動きなど、ネットの世界の住人の方々には、既によく知っている事例も入っているのだが、こうした新書として、広く一般の人々をターゲットとして書かれているものとしては、やむを得まい。

また、若干、時期がずれるせいか、YouTubeは取り上げられているが、「ニコニコ」は出ていないといった、ちょこちょことした不満はあるのだが、ネットビジネスのトレンドを大きく捉えるという目的で読むとすれば、十分目的を達することのできる一冊である。

このうち、気になる言葉などを少し。

それは、楽天のビジネスの話をとりあげている「変化」という章で、faddict.net blogというブログの引用あおしながら語られる「Web2.0」は「地主制度2.0」ではないかという主張だ。

少し引用すると

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2008年08月07日

梅田望夫 「ウェブ時代 五つの定理」(文芸春秋)

おなじみの経営コンサルタントというか、ウェブ時代の適切な水先案内人である梅田望夫さんが、シリコンバレーの第一級のビジョナリーたちの言葉を紹介しながら、ウェブ時代の新しい作法や起業の道案内をしてくれるのが本書である。

ビジョナリーとは、テクノロジー業界の最先端を走る起業家や投資家、「普通の人」よりも何歩も先を行く天才的技術者、日々の濃密な経験から世界を俯瞰して眺めている企業経営者、複数の専門性を極めた大学教授といった人たちの中で、とりわけ言語表現能力が高い人々のことで、こうした人々が英語で発する切れ味の良い言葉を読み、その言葉の背景にある思考や発想に寄り添って深く考えることで、

未来を見通すことなど誰にもできないが、こうすればクリアに想像できる

世界の成り立ちなど誰にもわからないけれど、こうすれば見晴らしがよくなる

といったことができると発見し、それを繰り返すことで、変化の予兆を捉えるというのが、筆者の勉強法のようだ。


もとより英語力のない私なぞには、及びもつかないが、こうした先達の言葉を紹介し、その意味と示す未来を魅せてくれる本書のような存在は非常にありがたい。


そしてこうしたビジョナリーの言葉は「五つの定理」として整理され、それぞれのテーマ毎に分類・整理され、構造化されている。

「五つの定理」とは
①アントレプレナーシップ
②チーム力
③技術者の眼
④グーグリネス
⑤大人の流儀

で、いずれも、こうした「ウェブ」の世界を端的に現す言葉であるようだ。

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2008年08月02日

梅田望夫 「シリコンバレー精神」(ちくま文庫)

1996年秋から2001年夏にかけて、筆者のシリコンバレーの経験に基づくエッセイというか、シリコンバレーの一時期を切り取った、現地にいた当事者の記録の集合体である。

いくつか、ネット関連のエポックとなるものがいつ起こったのか調べてみると

windows95の発売が文字通り1995年
グーグルの創業が1998年
ネットバブルの崩壊が2000年

となっている。

そうした意味で、単なるネットに関するエッセイとしてではなく、インターネット時代の幕開けとして「シリコンバレー」が輝き初め、ネットバブルの波の到来と崩壊、そして再生へ、といっためまぐるしくはあるが、私たちの生活に大きな変化を与えた一時代の記録としても貴重な一冊である。

ただ、「シリコンバレー」あるいはそれに代表される「ネットの世界」に住む人たちのスタイルも丁寧に書かれているので、時代の記録集としてだけではなく、「ネット」あるいは「ウェブ」という、一種特殊ではあるが、確実に私たちに浸透してきている思考スタイルや行動スタイルのついての評論集としても読むべきであろう。

いくつか、その一端を引用すると、ベンチャー企業の興廃著しいシリコンバレーのビジネススタイルは


第一に、事業の成功・失敗はあくまでもビジネスというルールのある世界でのゲームで、それを絶対に人生に反映させないこと
第二に、事業とは「失敗するのが普通、成功したら凄いぞ」というある種「いい加減な」遊び感覚を心の底から持つこと。「成功するのが当たり前、失敗したら終わり」という「まじめ」発想を一掃しなければならない。
第三に、失敗したときに、「投資家や従業員や取引先といった関係者に迷惑がかかる」という考えを捨てること。皆、自己責任の原則で集まってきているのだと、自分勝手に「都合良く思いこまなければならない
この3つの知恵は、不運や失敗をしたたかに乗り切っていくための救命胴着

なのであり、その中で挫けることなく挑戦を続ける人々の心の有り様を「マドル・スルー」という言葉で表現している。

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2008年07月23日

勝間和代 「新・知的生産術ー自分をGoogle化する方法」(ダイヤモンド社)

今、売れっ子の経済評論家である勝間和代さんの知的体力アップを図るノウハウと考え方が満載された本である。

こうしたビジネス本の効用の一つには、著者のパワフルさが読んでいるうちに伝染してくるっていうのがあって、
そうした伝染力が強ければ強いほど、読後は、「よし、俺も」っと元気がでるっていうことがあり、この本もそのパワーを十分秘めております。

「捨てる技術で大切なのは「Not to do list」を「つくること。すなわちやってはいけないことのリストをつくること」といった発想の転換に気づかせてくれたり、インプット力やアウトプット力を高める具体的な技術が、キチキチと提案されていたりとか、(「○○を高める6つの技術」とか「▲▲を見極める5つの方法」とか、なんとなくコンサルタントと話をしてきるような気分になるのは、著者の商売柄かもしれないが)、なんとなく勉強の凄くできる生徒会長から、勉強法を懇切丁寧に教わっているような気持ちになってくる。

なかには、ちょっとデジタル依存なんじゃない、と思ってしまったり(オーディオブックはそういった意味で、まだ、私にはなじみが薄いんだよな)、「本を読むときはスピード最優先で、線引きやまとめ書きといった面倒なことはしない」といった、おいおい、頭の良い人はいいけど、それじゃ俺らは頭に残んないんだよね、と思ってしまうところがないわけではないのだが、総じて、ふむふむ、これは良いですよね、といったアイデアと使えそうなノウハウが満載である。

著者も「1%の本質を見極める5つの技術」の一つとして「本代をケチらずに良書を読むこと」とおっしゃっておられることでもあり、ここは千円札2枚と割り切って購入して、ワシワシ読んだ方が得だと思う一冊である。

2008年07月20日

宋 文州 「仕事ができない人は話も長い」(日経BP出版センター)

元ソフトブレーンの創業者で、辛口の経済評論の宋 文州さんのメルマガをまとめた著作。

宋さんのコラムはNikkeiBPにも以前連載されていて(「宋文州の傍目八目」)、まだいくつかは読めるので、興味ある人は読んでみるとよい。
著者は名前で推測できるように、中国籍で、日本に留学したのが縁で、日本でビジネスを始められたのだが、その経歴と日本人の思考スタイルにどっぷりと浸かっていない、そのくせ日本人の思考スタイルを、どうかすると普通の日本人より理解している評論は、辛口ながら教務深く読める。

本書は、2004年から2006年までのメルマガをまとめたもので、宋氏自身もソフトブレーンの取締役を辞任したりしているのだが、世間ではホリエモンや村上氏などのネットバブルを謳歌した人たちが凋落した時と重なっていて、日本のネットバブルのまっただ中にいた人の証言禄として読んでも面白い。

で、いくつか印象に残ったフレーズを引用すると

「我々が他人に言われるから努力するケースは、ほとんどない。努力したい時に努力しているだけである。努力したくなるような環境をつくることが、上司や親ができるせいぜいの「努力」である

とか

他人がまだやったことのない新しいことをやり出すとき、いくら正しいこと、価値のあることであっても、すぐ理解される保証はない。初期段階ではむしろ誤解されたり、白い目で見られてりすることもよくある。開拓精神やベンチャー精神といえば聞こえはいいが、実行する人には大変な信念と勇気と忍耐が必要である。

新人のゴミ拾いと大声挨拶はこのためにある。正しいことだが、恥ずかしいし、泥臭い。それを抵抗なく実行してしまうのは、ベンチャー精神であり、引っ込んでしまうのは大手病である。

とか

いわゆる「統制」がとれている会社や、「戦闘力」あある会社ほど選択肢と柔軟性がない。そんな会社は変化した社会に適応できなくなるとトップが焦ってくる。「変化!変化!」といくら呼びかけても変化できない。社員の多様な選択肢を許し育てない組織の脆さである。

などなど。

ベンチャー企業の経営者らしく、変化と多様性に信頼を寄せている論調で、閉塞感のある時のビジネス書として読めば元気が出る。

最後に、この人の人生へのスタンスを最も現しているな、ともった一文を紹介してレビューの〆としよう。

「群れない。こびを売らない。傲慢にもならない。しっかり自己を持つ」

2008年03月02日

梅田望夫 「ウェブ時代をゆく」(ちくま新書)

ずいぶん読むのに時間がかかってしまったな、というのが読み終えて、まず思ったこと。

章立ては

序 章 混沌として面白い時代
第一章 グーグルと「もう一つの地球」
第二章 新しいリーダーシップ
第三章 「高速道路」と「けものみち」
第四章 ロールモデル思考
第五章 手ぶらの知的生産
第六章 大組織VS小組織
第七章 新しい職業
終 章 ウェブは自ら助くる者を助く

序章では福沢諭吉の「一身にして二生を経る」という言葉を引いて、ウェブ進化、そしてリアルとネットの境界の話が語られ、第一章では、題名どおり、現在のネットの世界を牛耳っているといっても過言ではない「グーグル」は何者であり、何を目指そうとしているのかが、第二章では、Rubyの生みの親であり、育ての親でありつづけている、島根県出身のプログラマである「まつもとゆきひろ」やLinuxの生みの親である、リーナス・トーパルズに代表されるオープンソースの世界の中での、「リーダー」はどういうスタイルをとるのか、そして第三章では、「知」の高速道路とその先の大渋滞、高みを目指す道ではなく、その周辺で自らの興味に最大限に従いながら模索する「けものみち」の生き方が語られる。

このあたり、梅田氏の「ウェブ進化論」や脳学者の茂木健一郎や作家の平野啓一郎との対談や、氏のブログの読者であれば、「ああ、あれか」と思い当たるとこ所も多いに違いない。まさに氏の、現時点における、「ウェブ」についての思索の「まとめ」的な位置づけの本である。そういった意味で「時間がかかってしまった」のは、今までの「ウェブ」をめぐる様々な論考のあちこちに連想が及んで、思考が寄り道をしすぎた所為かもしれないと思っている。

一貫して流れるのは、ウェブの進化、あるいは、ウェブのあちら側の世界への、(若干、無理をしながらも)楽観的な期待であろう。

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2007年06月24日

野村 進 「千年、働いてきました」(角川oneテーマ21)

日本の老舗企業のルポ。

あらためて、日本が手仕事の国、職人の国、製造業の国であることを知る一冊である。
筆者が書中で「商人のアジア」と「職人のアジア」という言葉を使っていて、中国や韓国、東南アジア諸国が「商人のアジア」に属する一方で、日本はアジアで唯一といってもよい「職人のアジア」だといっているあたり、なんとなく感覚で共感するところが多い。

かの地を旅して思う、なんとはなしのキツさというか厳しさは、こうしたあたりにも起因しているのかもしれないなーと思ってしまう。

本書で、取り上げられている老舗はアトピー性皮膚炎の治療薬を開発した「造り酒屋」であったり、コピーのトナーを製造する「木ロウ製造業」であったり、トレハロースを開発した水飴屋さんであったり、もともとの生業も、新たに進出した分野もさまざまなのだが、共通するのは、老舗ならではの業界通の知識を生かした上での、新展開ということだろう。

で、こうした老舗企業が元気よく活動している、それも複数といったところが、日本の中小企業の元気さ(業績の元気さというよりは、気概としての元気さ)を表しているように思う。
一方で、こうした老舗の製造業の活躍に思わず共感してしまう自身の感情を考えると、日本人の遺伝子の中に組み込まれた「製造業」の大きさというものも感じてしまい、日本の産業構造が「製造業」を中心に語られるのも無理ないかもしれないと思う。

自分の意識の中の「職人」志向に思わず気づかされてしまった一冊でありました。

2007年03月27日

斉藤 孝 「段取り力」(ちくま文庫)

「段取り力」っていうのは、いうまでもなく、筆者の造語。

一言でいえば何っていうのは、ちょっと難しくて、
 ・質の違いをきっちり見分ける
 ・大筋を外さない力と優先順位をつける力
 ・与えられたものの順番を入れ替えて、自分なりに組み替える力
といった表現で表されているのだが、要は感覚的に「段取りが良い」「段取りが悪い」といった感じであらわす以外ないものらしい。

ただ、的確な一言で表されなくても、物事をきちんと要領よく処理していく能力には間違いなくて、本書では
 ・トヨタのカイゼン
 ・建築家 安藤忠雄の例
 ・「プロジェクトホテル」の窪山哲男氏の話
など具体例をとって、さまざまな成功事例の中にある優れた「段取り力」を解剖していく。

で、後半部分からはその「段取り力」の磨き方というか鍛え方が紹介されていく。

どんなものかってネタばれしてしまうと、営業妨害なので書かない。本書を読んでください。さすが斉藤先生という感じで、サクサク読めて、ふーむ、と関心してしまう本である。

2006年05月03日

梅田望夫 「ウェブ進化論」

最近のはやり言葉ではあるのだが、何のことやら、いまいちよくわからないweb2.0をはじめとした、インターネットを中心としたウェブ社会の、これからをとりあげた本。

基本としては、「子供の頃から、こうした新しい道具を与えられた世代からは、明らかに旧世代とは違うリテラシー(表現能力)をもった人たちが数多く育っていくに違いない」ということを背景に、「これから始まる「本当の大変化」は、着実な技術を伴いながら、長い時間かけて緩やかに起こるものである。短兵急ではない本質的な変化だからこそ逆に、ゆっくりとだが確実に社会を変えていく。「気づいたときには、いろいろなことがもう大きく変わっていた。」というのが主旨。

そして基本スタンスとして、そうした変化を望ましいものとして捉えているように思えるのだが、
「人は、ネットの世界に住まなくたって、これまで通りのやり方で生きていける。そう思う人たちがマイノリティになる時代はそう簡単にはやってこない。
ゆっくりと確実に変わっていく社会の姿とは、二つの価値観が融合し、何か新しいものが創造される世界だろうか。それともお互いに理解しあうことのない二つの別世界が並立するようなイメージとなるだろうか」
といったあたりが、よくある進化論的なネット崇拝の議論とは違うところ。

へーと、関心させられた一つは、

「次の10年への三大潮流」を「インターネット」「チープ革命」「オープンソース」と定義づけ、それらが相乗効果を起こし、そのインパクトがある閾値を超えた結果、リアル世界(バーチャルなインターネットの世界と対立させるように、筆者は現実社会をこう表現している)では絶対成立し得ない「三大法則」とも言うべき全く新しいルールに基づき、ネット世界は発展を始めた。その「三大法則」とは

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2006年02月11日

森永卓郎 「新版 年収300万円時代を生き抜く経済学」(知恵の森文庫)

小泉政権の推し進める「構造改革」によって、「総中流」といわれていた日本の階層は、「富裕層」と「貧困層」に極度に分化していく。きっと、一般サラリーマンの年収は300万円程度になるだろう。いや、それも気楽に獲得できる収入ではなくて下手をすると年収100万円程度の階層へなる危険性も秘められている。

さあ、どうしますか。と問いかけてくる本である。


著者は、いわゆる小泉改革に賛成ではない、というか、むしろ反対派だろう。小泉政策を、金持ちと官僚に住みやすい国をつくろうとしている政策だ、とまで言い切っている。 しかも民主党も、同じ穴の狢ぐらいに言ってたんじゃなかったかしら。 少し昔になるが、道路公団の会議の時も委員長どころか改革派といわれていた猪瀬直樹氏にも噛み付いていたし、郵政改革のときも派手に反対論をぶつけていたように思う。
そうした筆者が、小泉改革の果てにある貧富の差の拡大した「新・階級社会」となる日本で、日本人を幸せにするモデルをアメリカとヨーロッパを比較して考えると、

アメリカもヨーロッパも貧富の差は歴然としてある。その違いは、アメリカは所得と社会的地位が比例する社会、大陸ヨーロッパは厳然とした階級分断(貴族と一般庶民)が残る世界。アメリカには数は希少とはいえ「アメリカンドリーム」の夢はあるが、ヨーロッパでは、一般庶民が貴族になりあがることはない。


それらを総体として考えても、今後、貧富の差が大きくなっていく日本で日本人を幸せにするモデルは「大陸ヨーロッパ」。お金はちょっときつくなっても、「ゆとり」を目指す生活を始めては、というのが主な論旨。

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2006年02月09日

斉藤 孝 「三色ボールペン情報活用術」 (角川oneテーマ21)

いまさら、という感じがして恥ずかしいのだが、やっと読みました。


斉藤 孝さんって、やたら賢そうで、妙に納得させられそうで、苦手だったんですよね。
でも、思い切って読むと・・・、妙に納得させられて感化されてしまいました。

三色チェックは、資料を「自分」の中に取り込む作業だ

ということで、三色ボールペンといっても、実は三色ではない。黒を除外するから、四色ボールぺンの「赤」「青」「緑」を使って、書物に限らず、テキストを読み砕き、優先順位をつけ、資料を解体して、自分の血肉とする手法、というよりは「哲学」を語った本である。





「赤」は、それを落としてしまうと本質を欠くという部分

「青」は、そこまで強くない。とりあえず重要というところ

「緑」は、自分のセンス、自分のアンテナに引っかかってくるところ。とにかく自分はよいなと思うところ


といった基準で、本から資料から、ありとあらゆるテキストに、その基準で線を引き、丸でぐるぐる囲いをし、果てはメモや手帳もその色分けで記そうと提案しているのが、この本である。



いくつか、気をひいたところを引用すると

キーワードを見つけながら読むという方法は、その本の著者、あるいはその資料の作成者の表現したいことを的確につかむこと・・・いうなれば「情報ハンター」になることだと思う。

とか

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2005年12月11日

内田洋子 「イタリア人の働き方ー国民全員が社長の国」(光文社文庫)

イタリアというと正直のところ、あまり勤勉なイメージを持っていない。恋を語るには熱心だが、ビジネスとか仕事ということになると、とたんにテンションが下がってしまう国民のように思っていた。なぜローマ帝国やルネッサンス期のヴェネチア共和国のような優れた政体や政治を持っていた国が、そうなったのか。そのくせ、一メーカーをとってみると業界リーダーのような会社がなぜ多いのか、ずっと疑問をもっていたときに出会ったのがこの本。

一読してすべて氷解というわけではないのだが、一番の収穫は、国家とか自治体とか、そういう組織には関係なく元気で個性のあるイタリアの零細企業の数々を知ったこと。

紹介されているのは

たくさんの有名人が訪れる靴磨きの名人の店(ロザリーナ・ダッラーゴ)

何を着て何を買えばよいか、金持ちたちの買い物すべてにアドバイスするパーソナルショッパー(クラウディア・ベルトリーニ)

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2005年12月03日

沼上 幹 「組織戦略の考え方」(ちくま新書)

会社をはじめとして、いわゆる「組織論」に関わっている人には、例えば日本的経営を賞賛する風が一点してアメリカ型組織を絶賛する風に変わってしまったことへの違和感など、参考になるところや同意できるところも多いと思う。

構成は

第1部は組織に関する基本的な議論
第2部は日本の組織の劣化に関する議論
第3部は組織の腐り方についての分析、対処法

まず官僚制である。筆者は、「官僚制」を悪者として扱ってはいない。

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2005年11月27日

山田真哉 「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」(光文社新書)

会計士で、「女子大生会計士の事件簿」の作者でもある山田真哉氏の、「やさしい」会計学の本。

筆者は「本当の会計学入門書をつくるために会計の常識からいったん離れよう」との決意でこの本を始める。こうした意気込みで始まる入門書、特に会計とか法律の入門書は、やさしいものであった例がないのだが、この本は結構サクサクと読めた。


興味をひくエピソードに沿って会計学の知識が学べる本である。会計の常識から離れた会計学入門書というのは偽りないと思う。
(何度も簿記や会計学を投げ出した私が、そう感じるのだから間違いない)

エピソードは
 「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」
 「ベッドタウンに高級フランス店の謎」
 「在庫だらけの自然食品店」
 「完売したのに怒られた」
 「トップを逃して満足するギャンブラー」
 「あの人はなぜいつもワリカンの支払い役になるのか」
 「数字に弱くても「数字のセンス」があればいい」
の7つ

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2005年11月18日

マイケル・デル「デルの革命」(日経ビジネス文庫)

皆さんもよくご存知であろう、DELLの総帥の著書である。

コンピュータ販売をダイレクト販売・インターネット販売という方策を使って根幹から変えてしまい、今では世界ナンバーワンの売り上げを誇る企業にまで急成長させた経営者自らの話だから、かなり斬新で、エクセレンスである。
成功した人が、成功した手法について語っているため、成功の理由を後でつけた感の部分があるのは否めないのだが、やはり、あの当時、こうしたダイレクト販売を始める、といった勇気と見切りの良さ、アイデアの突飛さは、なかなか真似のできるものではない。
私のような凡庸なサラリーマンは、へーっと驚いて読むしかないような事例が多々あるのと、成功物語につきものの、なにかしらの爽快感、高揚感がある一冊。

そうした、いわゆる成功物語の部分を差し引いても、一流のビジネスマンの発言として、うならされる箇所は多い。

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「ナンバーワン企業の法則 勝者が選んだポジショニング」(日経ビジネス文庫)

すべての分野で価値を収める企業はないという前提から、いままでナンバーワンという呼称のもとにひとからげに扱われていたさまざまな市場を支配していたリーダー企業を
・オペレーショナル・エクセレンスを目指す企業
・製品リーダーを目指す企業
・カスタマー・インテマシーを目指す企業
の3つに分類し、それぞれの企業の行動原理や価値基準を分析して、勝ち残っていく企業のあり方を提示している。

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2005年11月14日

堀江貴文 「100億稼ぐ仕事術」(SB文庫)

なにかと話題の多い、ライブドアの堀江会長の仕事術、ビジネスのやり方を「ヒト」「ジカン」「ジョウホウ」「カネ」「ツール」の5つの切り口から、綴ったもの。

傍若無人で拝金主義の権化のようにいわれることもある筆者であるが、ネット業界で雄をなしている人だけあって、やはり、その仕事のやり方はスキがない。

メールを仕事の基本にして、一日5000通読むとか、
ノートパソコンにアポイントから何から仕事にかすることはすべて入れておく、
PCのショートカットキーを使うとか
やるべき仕事は全てメールで自分あてに出し、デジタルに管理する

とか、やはり、ITで一時代を築きつつある人だけに、IT機器やIT的な考え方にどっぷりつかっているのだなー、と思っていると、

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