時代設定は戦国時代、天文18年春から天文19年夏にかけての2年間の物語である。そして、舞台は信濃。
ということなら、武田信玄(晴信)が信濃制圧に向けて着々と動き始めていた頃、さては、そのあたりの信濃の国を統一する話か、と思ったのだが、かなりの見当違い。「勝者」の物語ではなく「敗れていった者」の物語であった。
だが、この「敗者」の姿が尋常ではない。いったいに「敗者」というものは美しく見えてくるのは、日本人の性なのだが、この物語の主人公、諸国を渡り歩く合戦屋 石堂一徹 の姿は、「颯々」として、なにかすっきりとした爽快感を覚えるたたずまいで、これぞ「武者」であるな、と喝采をおくりたくなる。
さて物語りは、中信濃の深志と北信濃の塩田平の間の横山郷、遠藤吉弘の居館のあたりで、吉弘の娘 若菜と、一徹が出会うところから始まる。(もっとも、一徹と若菜の恋物語が云々、という展開ではない)。
この遠藤家、三千八百石程度の身上で、近隣の土豪との争いにあけくれていた家で、さほど有力な家であったわけではない。それが、石堂一徹が、軍師として食客になってから、以前から仇敵であった隣の高橋家を滅ぼし、ついで不破、といった風に、領地を拡大していく。このまま進めば、中信濃一の豪族、小笠原長時との対決は必至では・・・といった形で展開し、「天下」を狙う、石堂一徹の野望の片鱗も明らかになる。




