副題が「妖怪と暮らす人々を訪ねて」で、訪問するところは、バリ、沖縄、ボルネオである。それぞれの地を訪ね、人に会い、それを綴る、という旅行記の基本はおさえてあるのだが、ちょっと普通の旅行記とは違う。
それは、目に見えるもののレポートだけでなく、目に見えないもの、いわゆる「おばけ」を見ようとする、あるいは感じようとする旅でもあるからだろう。
そして、いわゆる異世界探訪ものとは、また違うのは、そうした目に見えない世界を、我々の住む世界とは異なる世界としてリポートしようとするのではなく、我々と地続きの世界としてレポートしようとしているからだろう。
訪れるところの人々もまた”異世界””おばけ”に非常に近しい。
異界へのゲートがあちこちに開いていて、そこからさまざまなおばけたちが、島へ入り込んでいると考えているバリの人たち
魔物はいつでもあちこちを徘徊しているものだと想定していて、毎日の暮らしの中で魔物をどうやって避けるかに心を砕いて、”石敢富”や”シーサー”を祀る沖縄の人たち
マレー半島やインドネシアから精霊らちが大挙して還っていく、おばけたちの故郷となるような”町”をかかえるボルネオの人たち
そして、そうした人たちの感ずる”おばけ”は
「黒魔術の体系に身を投じて、その次元で、もう一つの生を獲得した妖術使いのレアック」
「古くて、太くて、根っこがまるで生き物のように曲がりくねっているような老樹の精霊ともいえるキジムナー」
「はらわたをひきずって飛び、人の生き血を吸うポンティアナ」
といった、生活の中の隣の暗闇にいそうなものばかりである。