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北森 鴻 「花の下にて春死なむ」(講談社文庫)

北森 鴻のミステリで、さすが巧いな!と思うのが探偵役の造型で、この「花の下にて春死なむ」のビアバー香菜里屋の工藤マスターも期待を裏切らない出来の探偵役である。 タイプとしては、北森氏お得意のアームチェアディクティティブなのだが、訳知りで世間知に溢れたバーのマスターといった役柄が、作品の静謐な感じをましている。

収録は
「花の下にて春死なむ」
「家族写真」
「終の棲み家」
「殺人者の赤い手」
「七皿は多すぎる」
「魚の交わり」
の6篇。

構成としては、不遇の俳人の隠された過去、故郷を捨てざるを得なかった彼の紐津をフリーライターの飯嶋七緒が探っていくシリーズ第1作であろう「花の下にて春死なむ」から始まり、香菜里屋を訪れるさまざまな客たちが関わる事件を経て、第1話の俳人が鎌倉で遭遇したらしい殺人事件の謎を解き明かす「魚の交わり」で終わるのだが、いずれも香菜里屋の店内での謎解きで締めくくられるのが、全篇を通じて静謐な印象を与えている。

とはいっても、読み口は静かでも、出てくる事件や謎はさまざまでいろんな味が楽しめるのはまちがいない短編集である。

作品中に出てくるマスターの涎のでそうな料理の数々といっしょにどうぞ。

お薦め度 ★★★

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