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梅田望夫 「ウェブ時代をゆく」(ちくま新書)

ずいぶん読むのに時間がかかってしまったな、というのが読み終えて、まず思ったこと。

章立ては

序 章 混沌として面白い時代
第一章 グーグルと「もう一つの地球」
第二章 新しいリーダーシップ
第三章 「高速道路」と「けものみち」
第四章 ロールモデル思考
第五章 手ぶらの知的生産
第六章 大組織VS小組織
第七章 新しい職業
終 章 ウェブは自ら助くる者を助く

序章では福沢諭吉の「一身にして二生を経る」という言葉を引いて、ウェブ進化、そしてリアルとネットの境界の話が語られ、第一章では、題名どおり、現在のネットの世界を牛耳っているといっても過言ではない「グーグル」は何者であり、何を目指そうとしているのかが、第二章では、Rubyの生みの親であり、育ての親でありつづけている、島根県出身のプログラマである「まつもとゆきひろ」やLinuxの生みの親である、リーナス・トーパルズに代表されるオープンソースの世界の中での、「リーダー」はどういうスタイルをとるのか、そして第三章では、「知」の高速道路とその先の大渋滞、高みを目指す道ではなく、その周辺で自らの興味に最大限に従いながら模索する「けものみち」の生き方が語られる。

このあたり、梅田氏の「ウェブ進化論」や脳学者の茂木健一郎や作家の平野啓一郎との対談や、氏のブログの読者であれば、「ああ、あれか」と思い当たるとこ所も多いに違いない。まさに氏の、現時点における、「ウェブ」についての思索の「まとめ」的な位置づけの本である。そういった意味で「時間がかかってしまった」のは、今までの「ウェブ」をめぐる様々な論考のあちこちに連想が及んで、思考が寄り道をしすぎた所為かもしれないと思っている。

一貫して流れるのは、ウェブの進化、あるいは、ウェブのあちら側の世界への、(若干、無理をしながらも)楽観的な期待であろう。

この辺は、私も同様なところがあって、最近の学校裏サイトや自殺サイトなど心配なことはあっても(各種のネットを利用した詐欺は、詐欺の手法選択の問題なので、あまり心配はしていないのだが)、基本的には、時代の新しい在り方というより、すでにそれなくしては経済社会や文化的な想像行為すらも成立できなくなっている「ウェブ」というものに、無邪気な期待や希望をもっている(もっとも、ネットの利用という面において、格差が生じてしまっているのも事実で、ウェブに親和性をもつ者と持たない者との「隔たり」は増すのだろうな、という不安を抱えこみながらであるが)。

「ウェブ」への期待は、

 学ぼうと思えば、無制限に知識が呈示されるというウェブの特性(これを、梅田氏は「知の高速道路」と表現する)と、

 また「クラウド・コンピューティング」という言葉で示されるような、ネットの「あちら側」に様々な個々人の情報が置けて、ほぼ無料で提供されている、amazonの「なか身検索」やGoogleの取組のように、スキャンされた書物とウェブ情報への検索と内容への自由なアクセスが提供されるサービスや「はてな」などを利用した共同の知的生産活動をサポートするフレーム

ということに表されるように、知的活動の「自由さ」と「柔軟さ」が、そんなに金持ちでない庶民でも活用できるということに端的に現れているのでは、なかろうか。

もちろん、「文系のオープンソースの道具」の必要性に代表されるように、共同の知的活動を、よりレベルの高いものとしていくためには、さらなるツールや環境の整備が必要となるのだろうが、そういったツールやルールも、既にどこかで動き初めているのではないか、と思わせてしまうのが、「ウェブ」を取り巻く時代の流れというものだろう。

最終章のタイトル「ウェブはは自ら助くる者を助く」という言葉に象徴されるように、ウェブを使った、新しいビジネスの行く末と、暮らしの在り方に、光明を感じさせてくれる一冊である。

お薦め度 ★★★★
(ちょっと好みは別れるかも。ネットへの親和度によって星の数は変わるだろうね。)

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