古代の「イズモ」の役割を再認識する(関 裕二「古代史謎解き紀行 Ⅱ 出雲編」)

 
関 裕二氏の古代史モノ「古代史謎解き紀行」。1巻目の「ヤマト編」に続く第2巻の「古代史謎解き紀行 出雲編」(ポプラ社)。
ただ、私が若いころの古代史紀行といえば、畿内の次は、当時、邪馬台国論争の片側の雄であった「北九州」というのが定番であったのだが、ここで「出雲」というのが最近の銅鐸・銅剣あるいは出雲大社の発掘の状況によるものなのだろう。
 
構成は
第1章 出雲神話という迷路
第2章 出雲の謎を旅する
第3章 出雲の考古学に迷い込む
第4章 出雲と「境界」の謎
第5章 アメノヒボコと出雲の謎
となっている。
 
今回の主舞台となっている「出雲」なのだが、ご存知のように日本書紀やら古事記などではヤマトの先王朝としての扱い付がされていたのだが、歴史学の中ではぞんざいな扱いがされてきたことは間違いない。まあ、近世〜近代〜現代の歴史の流れの中では、瀬戸内海→太平洋側に中心軸があったことは否めないのであれこれケチをつけてもしょうがないのだが、にそれが最近の考古学的発掘、で突如「古代出雲王朝」ってな調子で喧しくなるのもなにか人気稼業のような気がして、嬉しいような軽薄なような気がする。
 
それはさておき、本書の主題は前著を受けて、古代出雲が「ヤマト」の成立に果たしてきた役割を、鉄の流布状況とセットで論じ始めているのが新鮮である。しかも、古代の主流は「出雲」か「ヤマト」かはたまた「北九州」かといった本流争いにしのぎを削るのではなく、三者の関係性で「瀬戸内海」「纒向」をキーにして古代の勢力図を描いているあたりが、「歴史読み物」らしく「真偽ないまぜ」「ヨタ的ネタ」の塩梅が絶妙なものとなっている。
おまけに筆者の「藤原憎し」と「蘇我びいき」とあわせて「物部」氏が顔を出し始めていて、古代史の「三巨頭」揃い踏みの「さわりの段」といった様相を見せているのが本書。
 
史実は考古学的な発見・発掘と歴史研究を待たないといけないのだろうが、「歴史読み物」「歴史紀行」としては、通説のそこかしこのアラを探って思いがけない異説を出してくれるかが肝となる。
そのあたり、応神天皇と神功皇后、アメノヒボコと豊岡といった、一種マイナーやコンテンツによって、今までの「大和王権」を様々な勢力がうごめく「ヤマト王権」へと変貌させてくれてる筆者に感謝である。
 

 

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