女性の猟師本2冊を読み比べてみる。

 
 
最近、狩猟のことを調べている。仕事がらみで有害鳥獣駆除のことを調べる必要があって関係の本を読み進めているのだが、なかば必然的に、「マタギ」という脇道に迷いこんでしまっている。
 
その迷い込む過程で出会ったのが、この女性猟師のルポあるいは体験記である、田中康弘「女猟師ーわたしが猟師になったわけ」と畠山千春「狩猟女子の暮らしづくりーわたし解体はじめました」である。
 
 

構成は、「女猟師ーわたしが猟師になったわけ」が
 
序章 狩猟する女性に惹かれて
第1章 渡辺亜子
 畑を荒らす害獣も極上の獲物として
 農閑期の楽しみとなる
第2章 原 薫
 山に魅せられた木こり系ヨガ講師
 猪を山で狩る
第3章 安本日奈子
 狐狸庵に詰まった
 獲物に捧ぐ思いと山からの恵み
第4章 吉井あゆみ
 子どものころ狩りで育ち
 狩猟で生計を立てるプロ猟師の矜持
第5章 広畑美加
 猟犬本来の歓喜を
 自ら与えるため手にした猟銃
終章 狩猟という文化が担うもの
 
「狩猟女子の暮らしづくりーわたし解体はじめました」が
 
第1章 平凡な女子が新米猟師へ
 私が解体と狩猟を始めたわけ
 生まれて初めて、鶏を絞めた日
 体験をシェアしていこう
第2章 解体 命を絞めていただく
 うさぎ編 初めてのうさぎ狩り見学
 テン(!?)編 知り合いの農家からテンがやってきた
 アナグマ編 シェアメイトがアナグマを拾ってくる
 烏骨鶏編 「育てて食べる」を実践する
第3章 狩猟 生きものとのやりとり
 狩猟を始める!
 タヌキ編 初めての「止めさし」
 イノシシ編 ついに、狩猟をしに山へ
 シティガール、山へ入る
 初めての獲物
第4章 山と街 お肉の事情
 山のお肉のおはなし
 街のお肉のおはなし
 認めて、感謝して、食べていく
第5章 解体・狩猟を始める入門ガイド
 狩猟免許の取得方法
 鶏の解体
 イノシシの解体と皮なめし
 皮なめし 詳細バージョン
 イノシシを使い切る
 野生肉の料理
 解体&狩猟の現場を味わう
となっている。
 
前書が日本各地の女性の猟師ー専業の猟師からレタス農家が駆除目的で始めたもの、山間の料理店でジビエを提供している人など、様々な環境の女性へのルポ、後書は、東日本大震災で自分の食べるものは自給するという思想に目覚めた若い女性の生活記録、といった体裁のもので、自ずとその立ち位置や背景などは異なっている。
後書の著者は動物の解体や狩猟の状況などのマスコミ報道、ブログ炎上騒ぎで今は猟関係のブログ記事は遠慮している風なので、私がさらに言及する必要もないのだが、あえて論評すると、ファッション性、流行りものを追いかけている風情があって、生活に根ざした女性猟師の話を読むならば、前書の方が個人的にはオススメ。後者の方は賛否いろいろあるが自給自足の生活スタイルを目指したい、当然「肉」も、といった方向き。
 
「狩猟(ハンティング)」というものは、「フィッシング」や「農作業」と同じように「生命」をもらう行為であるのだが、どういうわけか、それらより心理的な抵抗が強いもので、それをとりあげるには、やはり謙虚さというかひっそりとした感が重要なような気がする。
 
「ハンターガール」といった名称が妙に流行り言葉になっている今、そうした「命戴いてます」的なアピールをしないと、やっかみや批判に耐えられないということもあるのかもしれないが、やはり「狩猟」というものは、そうそうしゃしゃり出るようにアピールするものではないような気がするのだが、いかがであろうか。
 
ま。この2冊。従前からの「猟師」としての暮らしをする女性の話と「ハンター」である女性の話、双方を比べながら、今の「猟師の状況」を垣間見るといった読み方が一番良いのかもしれないですな。

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