意識の慮外にあった古代マケドニアが以外に面白い ー 岩明均「ヒストリエ 6」

第5巻に続いて、引き続きマケドニアの王宮生活である。
このマケドニア王家、どこの王家にも共通の複雑さと、当主のフィリッポス王がいわゆる名君であることもそれに拍車をかけているようである。
前巻でつくった玩具はアレクサンドロスの弟向け。弟はどうやら成長に障害があるようなのだが、、兄と弟(義理の兄弟なのだが)の間は、妙な軋轢があるのはお決まりといったところである。
収録は
第49話 王子・2
第50話 王子・3
第51話 乗馬教室・1
第52話 乗馬教室・2
第53話 乗馬教室・3
第54話 ご学友たち
第55話 滝
第56話 心肺停止
第57話 ヘファイスティオン・1
で、前半はエウメネスの宮廷・馬術訓練の話が中心。後半はアレクサンドロスのミエザの学校のエピソードが中心なのだが、アレクサンドロスとエウメネスのさらなる接近とミエザの学校で起きたアレクサンドロスの級友の墜落事故をきっかけに、アレクサンドロスの秘密が垣間見える、というのがおおまかなあらすじ。

今のところ、5巻、6巻あたりはマケドニアに来ても宮廷内が中心で、まだマケドニアがギリシアの中心になるべく動き始めるところの主人公エウメネスは遭遇しておらず、いわば「胎動編」といったところか。
このほかに、馬術を習っているところで、母親の片身の品がペンダントなどの装飾品ではなく馬の鐙であることが判明し、鐙の実装したりもしている。鐙はもともと中国由来で、ヨーロッパに伝わったのは7世紀というネット情報もあるので、このあたりはスキタイ人らしさを出すための創作であるかも。
さて、今回の締めは、王の命令で馬術をマケドニア貴族メナンドロス(この人はフィリッポス王のカルディア潜行にも同行していたよね)に習う所での、理想の軍隊についてのメナンドロスの講釈
軍というものは個々ではなく集団なんだよ
統制されてこそ最大の力を発揮する

例えば、こちらの部隊に3〜4人突出した能力を持つ武人が交じってるとするな
片や、こちらの中には1人だけ能力の劣った兵がいて、部隊全員がその劣等兵の動作に合わせ統一した動きをとったとする

すると不思議にこっちの劣等兵に合わせた部隊のほうが強かったりするんだ。

要は「一つなる」ということ
そのためには兵の個性に合わせて思い思いの装備をつくるのではなく統一規格の装備の全員が肉体を合わせるよう訓練していく
1対1で負け、10対10で敗れても、100対100、千対千で勝てばよい
とマケドニア流の「強い組織」のあり方論を紹介して了とする。

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