明治の幻想譚、各種 ー 三木笙子「世界記憶コンクール」(東京創元社)

「人魚は空に還える」で登場した日露戦争当時の名探偵、雑誌社勤めの里見高広と天才挿絵画家 有村 礼シリーズの第二弾である。

収録は

第一話 世界記憶コンクール

第二話 氷のような女

第三話 黄金の日々

第四話 生人形の涙

となっていて、第一話、第三話、第四話は高広が主人公、第二話は高広の父親の、今は司法大臣になった里見基博、第三話は、第一作でも登場した若手の天才彫刻家の森恵である。

ざっくりとシチュエーションをレビューすると、第一話は、質屋の息子が、アメリカから将来売られるであろう「記憶力」の戦争に勝つための選考会で選ばれトレーニングを積増されるのだがその真相は、というもの

第二話は、父親 里見基博が司法省に出仕し始めたわけとが明らかになる話。時期はフランス留学後の話で、氷の検査と、廃棄されるしかない不衛生な氷の大量の使い道のわけ。最後の方で基博の細君との出会いも明らかになる。

第三話は、恵が通い始めた東京美術学校の混血の同級生 唐澤幸生の話。彼が所持しているらしい多治見の陶磁器の製法の争奪騒ぎで、彼を小さな頃に捨てたイギリス人の父親の秘書が登場するのだが、彼女の本当の狙いは、といったお話。

第四話は、高広が主人公であるのは間違いないのだが、彼が直に経験する事件だけではなくて、幕末当時に日本に駐在し、再び日本を訪れた英国のアーリントン卿が幕末当時に出会った生き人形が動く、声を出したという謎と、今回、日本の皇族に授与するために持参した勲章の紛失の謎の両方を解決する話。

話の詳細は原書を読んで欲しいのだが、こういう時代ミステリーの意外な引き立て役は、その時代の影を映すようなものが出てくるかどうかということもあって、そこは第二話の「悪水氷」とか、第三話の陶磁器など、日露戦争当時の明治の日本のことはよく知らないが、さもありなんといったものをきちんと抑えてある。

明治後期というのは、どちらかというと馴染みの薄い時代であると思うのだが、そこがかえってミステリーを忍びこませやすいのかもしれないですね。

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