下町のレストラン・ミステリー その2 — 近藤史恵「ヴァン・ショーをあなたに」(創元推理文庫)

レストランものミステリーが発展展開していくのに難しいのは、その場所の限界にもある。というのも、レストランという限られた場所・登場人物に縛られて、どうしてもその幅が拡充しないということあるからだ。この「ビストロ・デ・マル」シリーズもそうしたところに陥らないかな、と思っていたのだが、二作目では、レストランの外のミステリーを散りばめて、そこのところを回避しようとしているようだ。

 

構成は

 

錆びないスキレット
憂さ晴らしのピストゥ
ブーランジュリーのメロンパン
マドモワゼル・ブイヤベースにご用心
氷姫
天空の泉
ヴァン・ショーをあなたに

 

となっていて、例えば、「天空の泉」や「ヴァン・ショーをあなたに」はシェフのフランス修行・放浪時代にエピソードであったりする。
ただ、菜食主義者の突然の来訪に豆腐をつかったフレンチで対応したり、最近店に頻繁に訪れるようになった女性客がブイヤベースを好んで注文するわけとか、このレストランを舞台にした、誰も死ななない、というこのミステリー特有のほっこりしたところは健在であるのでご安心を。

 

一作目に引き続き「飽きのこない味」と表現しておきましょうか

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