月別アーカイブ: 2016年8月

梶川卓郎/西村ミツル「信長のシェフ 4」(芳文社)

Kindle Unlimitedに1〜3巻がノミネートされていたので、3巻一気にダウンロードして読んだのがキッカケで4巻を購入。まんまとAmazonの手に乗ってしまったというわけであるのだが、1巻でUnlimited対象を止めずに、姉川の合戦の前夜、浅井軍側に、主人公のケンが囚われてしまったところまで対象をひろげる辺りは、きちんと原作を読んでAmazonも設定しているのかと思った次第。

 

さて第4巻は囚われとなった浅井の牢内から脱出して、姉川の合戦、そして合戦後終了後、信長が堺の町へ手を伸ばしていく先鋒として出発する直前まで。

 

まあ、脱出の前ぶりで偏食のきつい「茶々」の食事をつくるところとか、姉川の合戦の潮目が変わった陰にケンのつくった肉料理が、といった、戦国時代に現代のイタリアンかフレンチのシェフがタイムスリップして大活躍っという、タイムスリップものの定番は当然セッティングされているのだが、その仕掛けがうまくいった原因に、浅井と織田の軍の構成の違いや浅井長政が織田信長に叛いた理由の基礎に、「地元(近江)の領地を守る」という土地への拘泥の意識の格差をもってくるあたりは、この漫画が単なるタイムスリップものでは終わらんぞ、という心構えを示しているようで頼もしい限りである。

 

作中で提供される戦国料理の数々や、信長配下の忍び「楓」が忍びになった理由とか、家康とケンとの料理を通じたつながりとか、これから信長の天下布武が進展していくに従って意味がわかっていく伏線の数々とかは現物を読んでいただければと思う次第ではあるが、当方もAmazonの術中に嵌ってしばらくは続巻を買い込みそうな予感である。

高橋葉介「もののけ草紙」壱〜四(KInlde Unlimited)

本シリーズの「もののけ草紙」はお座敷芸人の「手の目」が幼い頃から、成長して妖艶な女芸人となり、弟子ができ、「手の目」自体は姿を隠し、といった展開で進んでいくのだが、氏のシリーズ物によくある伝で、脈絡をもって進んでいくのだはなくて、突然「手の目」が成長して登場したり、弟子の「 」が男の子から女の子に変わったりといった具合で、このへんが高橋葉介漫画に馴染めるかどうかの試金石でもあるのだろう。

時代設定的には昭和の戦争直前のあたりから戦後まもなくといったところで、世の中がざわつき、さらには今までの価値観が根底から崩れる時代で「魑魅魍魎」も出現しやすいところを選ぶあたりは手練の技でもある。そして、その時代の持つ(と私が思っている)怪しげな風情を巧みに活かしながら、セピア色の調子で描かれているので、グロテスクな部分も何かしらお伽話、どこか遠いところの噺として読ませるところが、氏の作品の魅力でもあるのだろう。

異色ものが好きではあるが、高橋葉介ものを食わず嫌いであった向きには、せっかくUnlimitedの対象となったところでまとめ読みしてみてもよいのではなかろうか

「信長のシェフ」1〜3巻(Kindle Unlimited)

対象となっている作品でいろいろと議論が出始めているKindle Unlimitedではあるのだが、シリーズものの試し読みには結構便利なもので、この「信長のシェフ」は1巻から3巻までが対象となっている(H28.8月現在)ので、試し読みには結構な分量といっていい。

設定は、JINで定番となった、現代人が過去の時代にタイムスリップしてしまい、その時代に歴史的なイベントに巻き込まれていく、そしてひょっとするとタイムスリップした主人公の行動が歴史の分岐点になったりして、といったもの。

こうしたタイムスリップもので肝となるのは、スリップする時代と、主人公の職業といったところで、その時代が刺激的であればあるほど、そして主人公の職業のその時代とのミスマッチ具合が大きいほど面白い設定になるのだが、この「信長のシェフ」の場合、紛れ込む時代が戦国、しかも時代の風雲児 信長の京都上洛のあたりから、主人公はフランス料理のシェフといったところで、設定としてはかなり良い出来。

で、タイムスリップした後は、戦国時代にはありえなかったと思われる女刀匠との出会いや、信長の家臣との交流、それも正直な忠義者で有名な森可成(森蘭丸のお父さんであるな)であったりとか、それなりの奇手が用意されている。

そして、信長の京都上洛から朝倉討伐の前が、この1〜3巻の舞台で、信長が絶頂から谷底に堕ちて苦労した時代を丁寧に描いているのもなかなかのものありますな、ふむふむ、と頷く次第。
とりわけ、信長や秀吉を主人公とした歴史小説なのでは、甘ちゃんの若殿っぽく描かれることが多くて損をしている浅井長政が、家族思いではあるが。信長のしっかりとした、常識人のパートナーとして描かれ、その彼が、信長を裏切るには、信長の常人が付いて行くには難しすぎる先進性を伺わせるあたりは、「ほう」とうならせる。

私も途中巻までしか読んでいないので、通巻での感想は言えないのだが、少なくとも、Unlimitedで提供されている巻はかなりの出来。は興味ある方は登録して、Ulimitedのお試し期間中の1ケ月に固め読みするというのも一つの手法ではありますな。

鳥取市役所の食堂で「素ラーメン」を食す

「素ラーメン」自体は、かなり復活が進んでいて、鳥取市や山陰自動車道の道の駅あたりでも食せるのだが、中部地区に近くなると、どことなく「牛骨」の色合いが強くなってきて、汁が甘めになってくるので、当方としては東部地区の少々しょっぱい系の「素ラーメン」のほうが古の味に近いような気がしている。

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その点、この鳥取市役所の素ラーメンは古の味をかなり残していて、お値段も250円と極度にリーズナブルなのが良い所。食券方式で入口で券を買い、麺の渡し口のところでラーメンをもらう方式。天カスはお好み次第のセルフサービス。本当の「天カス」で粒が揃っていないのと、サラサラ系でないのが御愛嬌ではある。

高城 剛「LIFE PACKING」「LIFE PACKING 2.1」


高城 剛が1dayから1year、そしてFutureと旅をし、旅をしながら仕事をし、暮らしていく上での必須のアイテムとパッキング方法を綴ったレポート的な一冊。

「LOFE PACKING」と「LIFE PACKING 2.1」の違いは氏が拠点となるべき住居をまだ持っていた時と不動産を全て手放してしまってから、の違い。

 

当然、書かれた時の違いはあって、スマホが前書ではiPhone5であったに対し、後書ではAppleがつまらなくなったということでAndroid2台というところであったり、HDDがSDカードに変わっていたりといった変化はありつつも、ビニールのカード入れや白のシャツといった定番的に変化しないものもあって、それはそれなりに時代の変化と変わらないものを見る思いで楽しいものではある。だが、やはり注目して読むべきは、移動、変転することへのあくことのない追及であり、そのために持つものを極度にスリム化していく、という熱意であろう。

 

で、こういう提案は、定住し、固定化した仕事をもっている、いわゆる一般ビジネスマンに全く役に立たないかといえばそうでもない気がしていて、例えば私なぞ、今、家族の住む実家から100kmほど離れたところでプチ単身赴任をしているわけだが、1週間あるいは2週間おきに2〜3日実家へ帰る生活は、本拠をどちらに見るかで期間は異なるのだが、1周間〜2週間おきの旅行あるいは2〜3日の旅行を繰り返していると見てもいいし、単身赴任自体が1年間の旅行と考えられなくもない。

 

といった気分になると、とかく侘びしくなりがちな単身生活も「旅」の色合いを意識することで、高城氏なみの「最先端」の生活を送っていると、なにやら心持ちが変わってくような気がするのであるが如何か。

ただまあ、そのためには経費が必要なのも確か。例えば200GのSDカードは1枚8000円程度するが、2TのHDDであれば1万円少々で手に入るのも確か。フツーの人々は「LIFE PACKING」と「LIFE PACKING 2.1」の間ぐらいを目指していくのが背伸びが過ぎず、頃合いかもしれませんね

黒川依「ひとり暮らしのOLを描きました」① (ゼノンコミックス Kindle Unlimited)

幸いなことに、娘は実家の近くに就職していて、自宅通勤状態であるので、身につまされる量は少ないのだが、仮に、娘がこんな感じで都会で頑張っていたら、すぐさま迎えにお父さんは行っしまうぞ、といった、年頃の娘を持つ父親にはちょっと「うるうる」感を呼び覚ましてしまうコミックである。

収録は

1日目 こんなにいいお手m喜なのに会社を行くためのエネルギーを蓄えているひとり暮らしのOL

7日目 いつの間にか1ヶ月が終わってたことに愕然とするひとり暮らしのOL

21日間 今週末こそ有意義な時間を過ごそうと思って早寝したのに起きたらもう夕方になっていたひとり暮らしのOL

といった28編とおまけの同窓会編2編が収録されているのが第1巻。勝手な想像ではあるが、主人公は中堅企業の総務ないしは営業系のOL。会社ではどちらかというと目立たないかあるいは叱られ役のほう。出身は地方都市で地元の近くで就職しろという親の声を振りきって都会(東京だろうね)で就職したので、そうそうは親に泣き言も言えない、といった具合。

昔、高度成長やバブルの時代は、大概一旗を挙げに都会にやってくるのは「男」であって女性は「木綿のハンカチーフ」よろしく田舎というか出身地にあって、けなげに地元を守って切らすているというのが通例出会ったのだが、女の子たちも都会に吸い寄せられ、「資本主義」の体制に組み込まれてしまうのが、最近の「グローバル主義」というものでもあろう。

移住定住の促進、あるいは子育て環境の改善と、都会地から地方部へと若い人たちを呼び寄せようとする「地方創生」の活動はどこの県、地方都市でも声高に言われているのだが、自然回帰の声も一部のナチュラリスト志向の人には届いても、このコミックの主人公であるような「都会に勤めてしまったフツーの女の子」に届かないのが、なんとも悲しくもある。

 

まあ、第二巻では、この娘の笑顔のシーンが増えているそうであるから、Kindle Unlimitedで一巻を読んで、第二巻は買ってあげるというのがよろしいかもしれないですね。

Kindle Unlimitedが開始されたので、早速お試しした

待望の、というか本当に開始するの、と眉唾で見ていたKindle Unlimitedが開始されたということとで、早速30日間の無料お試しを申し込んだ。

Unlimitedで提供されるリストを見ると、かなり雑誌もあるので、ついでにというか、申し訳ないが今まで自動更新していたビューンの購読は少しストップさせて戴いて、両方のサービスを見比べてみようと思う。

識者がレポートされているように、コミックはいままでセール本で提供されていたもの(例えば特攻の島であるとか、信長のシェフ、新・ブラックジャックへよろしく)といったタイトルが多く、今まで購入したものと被るものを多いのは確かだが、1巻とか限定巻の提供でも、シリーズ物であれば試し読みとしてもかなりメリット感はあると思った次第。

小説はジェイ・P・ホーガンの@「星を継ぐもの」とか、花咲舞シリースの一部や江戸川乱歩シリーズなどが目立つが、アガサ・クリスティシリーズはほとんどないといった感じを受けるが、まあこれから充実されるのだろう。

ビジネス本は、「夢をかなえるぞう」とか「仕事は楽しいめん」といった定番ものが目立つ。まあ、ビジネス本は「旬」「流行り」といったところがあり、「今」のものはUnlimitedでの提供は難しいだろうが、旬のものを有料で読んだ後で、タネ本、底本となった古典や定番ものを読むことはよくあるので、そこそこ利用できるんでは、と思っているところ。

全ての出版社が参加しているというわけではないそうで、サービスとしては発展途上というところでありましょうが、これからUnlimited対象本が増加することを望む次第であります。

佐藤オオキ☓松井優征「ひらめき教室 「弱者」のための仕事論」(集英社新書)

対談集には異質の世界観をもつ人同士がその異なる世界をぶつけあうものと、同質の世界観をもつ人同士が同じ世界を確かめ練り上げていくいくものがあると思うのだが、本書は後者のパターン。

で、その世界観というのが、売れっ子で気鋭のデザイナーと「暗殺皇室」という独特の世界観をもったコミックの作者という、第一印象では、派手な世界観を想像してしまうのだが、どうかすると欲のすくない仕事人間の仕事論ですらあるように感じる。

構成は

第一章 漫画の時間

第二章 デザインの時間

第三章 ひらめきの時間

となっていて、それぞれの仕事場を訪問しあいながら、「仕事」について対談をするという形式。

で、売れっ子であるが、冷静さを失っていない二人のアイデア出しの方法も一種、冷めたイメージが多くて、それは

おもしろさから目を逸らさないことですかね。自分の漫画を見るとき、「本当におもしろいのか?」と薄目で見るんです。まつ毛がブラインド状になるぐらいまで、薄目になる

であったり

アイデアを探すとき、俯瞰はしないように気をつけていますね。経験を積んでだんだん全体がわかってくると、俯瞰できるようになるんですけど、あえてそこは目線を上げないようにする。むしろ一般の目線よりちょっと下げるぐらいの方が、物事はクリアに見えたりしますから。

といったところで、その先に

現状の問題に対する答えではなく、先にいくつも答えを想像してしまう。Aの1、Aの2、Aの3……その答えの中で、一番相性のいい質問に返ってくる。向きとしては逆。ちょっと先の未来を予測して、今の課題を見つける。まず答えをイメージして、それにもっとも合う質問を逆算しているから、その問題は必ず解けるんですよ。説明した相手には「何で答えを知っているんだ?」とビックリされますね。

といったところに斬新さを感じる。そして、その基礎となる私生活も

普段の生活では、毎日同じことを繰り返します。毎日同じ喫茶店に同じコーヒーを一日何回か飲みに行って、毎日同じ道に犬を散歩に連れていき、毎日同じ蕎麦屋さんに通って同じメニューを頼んでいます。

とか

淡々と同じことを繰り返すことで、たぶん脳がリラックスするんですよ。服も同じ白いシャツを二〇枚、同じ黒いパンツを二〇枚持っています。選ぶとき、考えなくていいから。普段の仕事が変化ばっかりなので、私生活では変化を嫌いますね。客観的に見て、相当つまらない人間だなと思います

といったところも、若き成功者の対談集を読むとよくでてくる妙に高揚したギラギラ感がなくてむしろ好ましい。

さてさて、今後この二人、

佐藤さんの言ったアーティスト型というか、やりたいことがしっかりある人って、自分にはわりともろいように思えて。そのやりたいことがなくなってしまったら、そこから何も生みだせなくなってしまう気がするんですよ。この業界で息長く頑張るには、やりたいことがない方が絶対やりやすいし、長持ちする。

という信念であるらしく、これからどういうプロダクトが生み出されるか、ワクワクしながら追いかけましょうかね。