西村ミツル・梶川卓郎「信長のシェフ 11」(芳文社コミックス)

さて、11巻は、信長の命によって小谷城に潜伏して、お市の方ほか娘達の救出を図る辺りからスタート。

初めのほうの、チェックポイントは、生意気そうでありながら、妙に可愛らしく描いてある「茶々」様で、後年の姿を彷彿とさせながらも、小谷城落城から娘時代のいわば落人暮らしが、その陰にはあったのかな、とまだまだ天真爛漫な姿に、妙に感情移入してしまう。

とはいいつつも、前半の読みどころは、小谷城落城にあたって、長政がお市の方を織田方へ逃すところ。ものの本によっては、豊臣秀吉ほか織田方の武将が、無理やりに城から落としたというものもあるんだが、長政・市夫妻には、悲劇の主らしく、夫婦の情愛ありつつもやむなく・・、といった泣かせどころが必要で、あまり人間の醜いところを描かない、この「信長のシェフ」は綺麗に料理してありますな。

 

で、なぜ浅井長政が裏切ったのかというところは、明智光秀がなで本能寺の変を起こしたのか、というところと同じくよくわかないところで、この物語では、「革新」に惹かれつつも、その破壊性についていけず、「古きよきもの」を慈しむところが原因と描いているようであるのだが、果たして作者の意中にあうかどうかは皆様のご判断で。

そして、この巻の最後の方は、木下藤吉郎が「羽柴」へと改名する小エピソードを挟んで、本願寺方へ幽閉された「楓」の救出の使者として、明智光秀と本願寺へと赴き、本願寺の料理人となっている「ようこ」と再会するところまで。もっとも再会とかいっても、「ようこ」は「ケン」を本願寺に取り込むよう顕如の命をうけてあれこれしようとするので、事はそうカンタンではないな、というところで、次巻へ続く。

 

小谷城落城、朝倉・浅井滅亡といった大イベントはあるのだが、どちらかというと「静的」な印象を受ける巻でありますな

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