田舎娘の立身出世の料理譚 — 本庄 敬・末田雄一郎「ハルの肴」(ニチブン・コミックス)

Kindle Unlimitedではコミックのシリーズ物が全巻対象となることがあるので、休日などに一気読みするというのが、当方の個人的な新しい楽しみ方になっている。

この「ハルの肴」もそんな類で、北海道から画家を目指して上京した春野ハルが、進学していた専門学校が突如閉鎖され、露頭に迷っていた所を両国の老舗居酒屋「大門」の主人に拾われて店に勤め始めのあたりから始まる料理人修行の物語で全8巻

「料理人修行」とはいっても新メニューの開発とか料理人勝負とか、料理をテーマにしたバトルものになる作品が多い中で、ハルという娘が「大門」の店の人や常連客や近所の人に見守られながら育っていく、という久々に見る人情もので、江戸期からの老舗とはいっても、居酒屋での修行であるせいか、腕の上達も料理の手法や技量取得というよりは、人とのつながりの拡大が、料理の腕の上達につながっている風に読ますのが斬新なところではある。

もっとも根底に、”ハル”が幼い頃に生き別れとなった父親の捜索という一筋を通してあるので、単純な人の輪の拡大万々歳というわけではないのであるが、ハルのひたむきさが丁寧に描かれているせいか、ときおりほろっとさせるのが妙手である。

初期の頃や6巻あたりで料理メニュー自慢や、料理勝負に向かいかけるところもあるのだが、「ハル」の物語にとどまっているのが個人的には好評価で、たまにはこうした真っ直ぐな成長物語を読むのも爽快ではありますな。

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