記憶に残そうと思わないことが速読の術という逆説 — 印南敦史「遅読家のための読書術」(ダイヤモンド社)

LifeHacksでビジネス書を中心に書評を展開している、印南敦史氏の読書術が記されているのが本書。

本書によれば同氏はもともと速読の方ではなかったということであるし、

意識的にはどうかは別にして、ほとんどの人が「真剣に読まない(いい加減に読む)習慣」をここ数年で身につけている。

脳が「新しい読み方」に馴染みはじめているのに、本だけは「これまでの読み方」を押し通そうとするーこれが猛烈なストレスを引き起こしています。

というスマホによる読書・活字文化が変容を起こしていることを、「多読の手法」「多読した本の内容の残し方」といった

構成は

はじめに  ーなぜ「1ページ5分」の遅読家が年700本の書評家になれたのか

第1章 なぜ。読むのが遅いのか  ーフロー・リーディングの考え方

第2章 なぜ読む時間がないのか?  ー月20冊の読書習慣をつくる方法

第3章 なぜ読んでも忘れるのか  ー読書体験をストックする極意

第4章 流し読みにもルールがある  ー要点を逃さない「サーチ読書法」

第5章 本とどう出会い、どう別れるか  ー700冊の選書・管理術

終章 多読家になって見えてきたこと

となっていて、本書の推奨する読書法は一言で抜き出すと、「フロー・リーディング」というもの。

”フロー・リーディング”とは

「その本に書かれた内容が、自分の内部を”流れていく”ことに価値を見出す読書法」

ということであるのだが、これだけではいまいちイメージがつかみづらい。

当方流に解釈すれば、「本の内容をすべて理解しようとして読むのではなく、読み進めていくことを重要視して、何が残るかはそれぞれの本に任せる」といった感じであろうか。

で、多読するための生活のシステム化の手法も数々紹介されていて、

読書の習慣化には小中学校の「朝の10分間読書」と同じように読書の、時間帯、場所、シーン、シチュエーションを決めること

本をチョイスするときは「読みたい化どうか」だけでなく「速く読めそうか」という基準でも選ぶ

本の内容を残すために、書評や感想を「書く」ということを取り入れ、その基礎としてそのためにはA4用紙を用紙して、「読みながら気になった箇所をどんどん書き写していく」(これは、「僕らが毎日やっている最強の読み方」で、池上 彰氏が紹介していた方法でもあるな)、それもなるべき短く、数行に収まるように(1ライン・サンプリング)と言った方法

には、ふむふむと頷くことも多く、書評や感想も「1ライン・レビュー」でよいというのも斬新である。

さらには、読書の習慣づけをしつつ、読書の幅を広げるテクニックとして

「明日読むべき本が決められていること」で毎週6冊の本を選ぶとして、1冊か2冊くらいは、ちょっと読む気がしないくらいの本」を入れる

といったものなど、ほうと唸るコンテンツが多い。

遅読に悩む多くの読書家にはオススメであるな。

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