よりよく「伝える」には ”技術” が必要 — 池上 彰「わかりやすく<伝える>技術」(講談社現代新書)

ここのところ、池上彰さんの「伝える」ということをテーマにした本を続けてエントリーしているのだが、今回は、「わかりやすく<伝える>技術」。

「伝える力」の第1版は2007年、「伝える力2」の第1版が2012年で、本書「わかりやすく<伝える>技術」が2009年なので、「伝える」シリーズの中間どころのレクチャー本という位置づけだろう。ただ、「伝える」「伝える2」との違いは、講談社現代新書らしく、かなり細かなテクニックも紹介されているところ。

それは構成にも現れていて

第1章 まず「話の地図」を相手に示そう

第2章 相手のことを考えるということ

第3章 わかりやすい図解とは何か

第4章 図解してから原稿を書き直す

第5章 実践編 三分間プレゼンの基本

第6章 空気を読むこと、予想を裏切ること

第7章 すぐ応用できるわかりやすく<伝える>ためのコツ

第8章 「日本語力」を磨く

第9章 「声の出し方」「話し方」は独学でも

第10章 日頃からできる「わかりやすさ」のトレーニング

といった成り立ちで、「話す」といったことに限定しないで、「表現する」「説明する」上での技術論が添加されている。

それは、

一つの長い文にすると、文章の中身の要素同士が論理的につながっていなくても、まるでつながっているように思えてしまうのです。(P61)

わかりやすい説明をするうえでは、「絶対に必要な情報」と「あってもなくていい情報」を峻別し、「絶対に必要な情報」だけを伝えること。「ノイズ」をカットした、クリアな情報が必要なのです(P85)

パワポには。文章を書いてはいけません。文章にすると、聴衆は、画面の文字を読んでしまいます。そんなことなら、そのパワポをプリントして聴衆に配ればいいのです。

プリントにしないのであれば、文章にせず、伝えたい要点、キーワードだけを抜き出すのです。(P91)

パワーポイントは1枚40秒で見せていく(P114)

3つの項目に組み立てて、パワポの見出しは文章にしない(P121)

といったところでも明らかであろう。

この中で、なんといっても読みどころは、

最終原稿と書きましたが、理想的な発表とは、実は「原稿を書かない」ことです。

原稿を書くと、どうしても本番で読んでしまいます。文章になっている原稿は、かいつまんで話すことがむずかしく、ついダラダラと読んでしまいがちです。

また、読みはじめてしまうと、目の前に聴衆がいても、視線はひたすら原稿を追いかけることになります。聞いている側は、自分が無視されているような印象を受けてしまいます。これでは発表の中身が頭に入りません。

一方、手持ちがメモだけなら、その場で自分で話し言葉にしなければなりません。その結果、自然な日本語になります。

メモの長さは、三〇分までならA4一枚で十分です。

私の場合、一時間半の公園になるとA4二枚版程度です。

メモは箇条書きで要素を書き出します。一時間半の、どういう話から入り、話をどういうふうに持っていって。最後はどういうふうにまとめようかということまでを想定します。

その流れを忘れないようにするためのメモ書きなのです(P94・P95・P96)

といったところや、

独立して学んだことは。二つあります。

「空気を読むこと」、そして「期待を裏切ること」です。(P139)

という、やはり「話のプロ」の経験が発揮されるところであるかな。

まとめて三冊読むのもよし、テクニックに限って、セレクトして読むもよしなのであるが、よりよく「伝える」ことは、技術的な基礎が必要と考えておいたほうがよいですね。

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