太平になりそうになると、なにやら蠢くのが世の常か — 山田芳裕「へうげもの 三服」(講談社文庫)

このところ、続けてエントリーしている、古田織部シリーズの文庫版第三巻。

時代的には1582年6月〜1586年6月。本能寺の変の後、秀吉の中国大返し、そして光秀が破れて秀吉の天下となるところ。市井の説による、明智光秀が天海僧正となる話は、どうやらこの「へうげもの」ではとらぬらしい。

三巻目の読みどころは

・光秀の実直さと民を思うが裏切られる切なさ

・徳川家康の田舎くさいほどの真面目さ

・石田三成の「いかにも」というあざとさと裏なり瓢箪さ

というところか。

さらに織部本人が、本能寺の変の真相を知って、秀吉の業の深さに恐れつつも、自らの武人としての限界を悟るあたりもポイントではありますな。

さらには、本能寺の変自体が、千宗易(利休)のト書きのもとに、秀吉が黒子を勤め、明智光秀が演じる、ということなのであるが、座付作者と興行主との確執が生まれつつあるのだが、それは次の巻以降の展開であろうか。

おまけとして、お茶々が秀吉の側室となる時も、この巻にはあるんだが、秀吉の乱破らしい出自を垣間見せる「茶々の緊縛」があるので、お好きな方は本書で鑑賞あれ。

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