茶人大名の戦国絵巻〜北条氏滅亡から利休が捕らわれるまで — 山田芳裕「へうげもの 六服」(講談社文庫)

武人にして茶人である数寄大名・古田織部を描いたコミックの文庫版の第6巻。

時代は1590年6月下旬から1591年2月まで。

事件的にいうと戦国関東の雄・北条氏の滅亡から始まる。

その後、織田長益が出家して織田有楽斎となったり、利休の娘・お吟が関白秀吉の側室となる。お吟は松永久秀の娘であるらしく、秀吉の暗殺の気持ちも秘めていた、なんとも業の深い親娘ではある。

さらには、利休が秀吉暗殺の陰謀を企み、家康を引き込もうとするが失敗。利休の叛意を察知した、石田三成が、大徳寺山門の上に安置された利休の木像の県などで、利休の誅殺を画策し、利休が捕らわれ屋敷に蟄居させられ、処刑の日を待つ、といったところまで。利休が蟄居先に護送される途中で、その後に利休介錯の原因となる、細川・古田両名が利休を遠目に見送るといったエピソードの挿入もある。

年数的には9ヶ月ほどなのだが、時代が動くときにはさまざまな物事が連続して起こるのだな、あらためて感じさせる。

利休にせよ、石田三成にせよ、さらには豊臣秀長死去の際の黒田如水など、なにかと陰謀を企むのは、時代のもつ特徴なのか、両人の性格ゆえなのかはわからないが、こうした陰謀好きは、自らの陰謀に溺れてしまうというのが通例のよう。世の中や為政者を自らの思うがままに動かしたいという念が強すぎると、関白が山上宗二を誅殺したり、利休が明智光秀を謀反に追い込んで滅亡させたり、といった、自らが求める(数寄・風流)の道を担う後継者を潰してしまうという愚を犯すものであるらしい。

そういう陰謀者の愚を脇に置きながら、我らが主人公・古田織部は、伊達政宗と蒲生氏郷との喧嘩の仲裁をしたり、京都に瀬戸屋を使って自作の染め付け茶碗の商売をしたりとか、ちょっと小物感が拭えない。「利休」という大きな壁がそびえていると、思う存分好き勝手ができないようで、突き抜ける気持ちが必要であるな。

さて、今巻は、個人的に豊臣家がずでんどうと転んでしまう原因となった、「利休の処刑」の前夜の風景といったところ。信長が鎮めた「時代」が騒ぎ始めるのはこれからであるな。

コメント

タイトルとURLをコピーしました