またさらに堅物同心に誘惑がやってきた — 近藤久惠「寒椿ゆれる」(光文社文庫)

堅物同心・玉島千蔭と売れっ子の女形役者・水木巴之丞、売れっ子花魁・梅ケ枝の三者が繰り広げる捕物帳の第4弾。
収録は
「猪鍋」
「清姫」
「寒椿」
の三編。
このシリーズは、一冊ごとに千蔭に関係する「女性」が現れる筋立てになっていて、1作目は「梅ケ枝」、2作目は千蔭の親父の千次郎の内儀になってしまう、跳ねっ返りの「お駒」、三作目は、お駒の幼馴染の商家のお嬢様の「おふく」といった具合で
千蔭と良い仲になりそうで、離れていってしまうのであるのだが、今回は、どうも結納までいってしまいそうな、祐筆家のお嬢様の「おろく」という女性。
ただ、大身のお嬢様らしからぬ大柄で、やたら「数字」にこだわるという行き遅れでもある。
ざっくりとレビューすると
「猪鍋」は千蔭の若い母親となったお駒が妊娠し、つわりが酷いため、体が弱っている。そんな時に巴之丞に勧められた猪鍋屋にまつわる事件。この猪鍋屋、上方帰りの若主人によって大繁盛店になったんもだが、この若主人が上方で修行した見せの若旦那が敵で狙っているし、若主人は若主人で繁盛店の驕りか、女道楽が・・、といった事件の種満載の設定。さて、この店が急に繁盛店となった理由は?
「清姫」は、ご想像どおり「安珍清姫」が下敷きであるのだが、襲いかかられた巴之丞には見に覚えもなく、さらには犯人らしき娘にも覚えがないという筋。さらには、この犯人らしい娘が、「蛇」らしきあやしさではなく、「猫」に似てるとはあまり粋ではない。
三話目の「寒椿」は、今までの二話で千蔭と結納までいきそうになっている「おろく」嬢との仲が、案の定と言うか、大波乱、大破綻となる。もともと、祐筆の家の6女で、町奉行の同心の千蔭とは家格がまったく釣り合わないにもかかわらず、なぜにこうトントン拍子に縁談が進むのか、といったところの謎が解けると、千蔭のライバルの北町奉行所の大石の実直さが生きるというところであるか。ついでにいうと、「椿」はこの話でも首が落ちるということで忌み嫌われていることになっているのだが、他の説によれば、ポトンと落ちるところが「潔い」と実は評価されていたという話もあって、一筋から物事を捉えててはいけないということか。
さてさて、このシリーズも4作目となると、これからどう展開するか、とりわけ、千蔭と梅ケ枝との仲がどうなるか、が気になるところなのだが、ここまで、いろんな女性を登場させておい、最後にまさかのドンデンてなことがあるのかもしれんですね。

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