ミスや意図しない手抜きといったことが組織の命運や行く末を左右することが多くなったご時勢である。しかも、「ちょっとしたこと」というのが、以前に比べて比較にならないほど影響力を持っているように思える。
そんな時代にあって、「ミス」が起きる原因、そして組織的な防衛の方法についての、新書ながらしっかりまとめてあるのが本書であろう。
構成は
Ⅰ 理論編 なぜ人はミスをし続けるのか
第1章 人は「有能」だからこそ間違える
第2章 間違えのメカニズム追究はきりがない
第3章 そもそも「間違い」とは何か?
第4章 時代が事務ミスを許さない
Ⅱ 実践編 ミスはこう防ぐ
第5章 ミスの解決は「6つの面」から考える
第6章 「気付かない」から事故になる
第7章 異変のはじまりはどこか
第8章 「ミスをしないこと」は目標になりえるか
第9章 御社の「手順」はムダだらけ
第10章 氾濫する「ダメ書式レイアウト」
第11章 「ミス」に強い組織に変える
なっていて、まず、「おおっ」と思うのが、ミスが起きる原因で
「能力が無いからミスをする」ではなく、「むしろ能力の副作用でミスをする」「ミスの大半は素人がしでかす」から「玄人のミスも警戒すべき」
といった方向にミスが起きる原因を修正すべきといったところであるし、
人間の頭は、意思とは関係なく、強制的かつ即時的に、情報の乱れを除去してしまうことがわかります
といった人間の能力の高さゆえのミスの発生といったことも気づかせてくれる。
そして
各作業を失敗せずに実行できる能力を、作業確実実行力と言います。ミスをせず、無駄を出さず、締め切りに遅れずに、所定の品質を満たす結果を出す技能のことです。しばしば、この技能に優れている人は優秀であると表彰されます。しかし実際には、作業確実実行力は、事故防止に対してあまり効果がありません。
といったところは、いわゆる世間の「優秀」という概念が「ミスの発生」という観点とは全く別に考えるべきであると提案するあたり、世間の「デキる人」思想への挑戦でもあるらしい。
もっとも、ミスの発生防止には
ミスの対策を考える人は、必ず現場に足を運ばなければいけません。現場に行き、現物を見て、現実を知ることが肝腎なのです。これを「三現主義」といいます。
「ご視察」は三現主義とは全く異なるものです。現場を見るには、抜き打ちで気まぐれなコースを歩み、閉ざされた扉を自発的に開ける探求心がなければいけません。
とか
第二次世界大戦中、イギリスのチャーチル首相は、自分に送付される文書の膨大さにしびれを切らし、ついにお触れを出しました。
◯どの文書も1ページ以内に納めること(書ききれない場合は、詳細情報へのアクセス方法を付記すればよい)。◯要点を箇条書きする。◯明確に言い切ること(何をすれば良いのかが曖味な指示や、「ご参考まで」の情報を書かない)
といったあたりは、やはり現場主義、物事は単純にしる。といった基本原理が有効であることを示しているのかもしれない。
なにはともあれ、仕事をしていればフツーの人は「ミス」は付き物。うまい具合に付き合いながら、できるだけ大きな被害ないようにやっていく方法を、それぞれに模索するしかないようで、本書はそんなあなたの一助になる(かもしれない)一冊ですね。
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