「教養」という言葉で何を連想しますか? — 出口治明「人生を面白くする 本物の教養 」(幻冬舎新書)

「教養」という言葉ほど、日本の近現代の中で、明治から昭和初期の頂上のあたりから、バブル崩壊後グローバリズム全盛期の底辺期まで、毀誉褒貶のアップダウンが激しかった言葉もないような気がしている。
 そして、現在の混沌期も「教養」というものに対するう胡散臭そうに見る目は衰えていないように思えるのだが、そんな時に「教養」の価値を高らかに訴える「出口治明さんの言説は小気味いい。
構成は
第1章 教養とは何か
第2章 日本のリーダー層は勉強が足りない
第3章 出口流・知的生産の方法
第4章 本を読む
第5章 人に会う
第6章 旅に出る
第7章 教養としての時事問題ー国内編ー
第8章 教養としての時事問題ー世界の中に日本編ー
第9章 英語はあなたの人生を変える
第10章 自分の頭で考える生き方
となっているのだが、この順番のとらわれず、出口流の「教養主義」と思って自由に楽しんで読んだほうが良い気がする。
で、そういう読み方をする場合、気になった言葉、フレーズをあちらこちら書き散らのも許されるはずと勝手に思ってレビューしてみよう。
最初に「うっく」となるのは冒頭の方の
教養」とは生き方の問題ではないでしょうか(P18)
といったところで、ひさびさに「教養」というものをここまで持ち上げる話は見ないですね〜、と驚かされる。
さらには、アメリカの学生の
米の大学生が在学中にどのくらい本を読んでいるかを調べた調査がありました。
それによると、日本の大学生が平均約一○○冊の本を読んでいるのに対して、アメリカの大学生は平均約四○○冊という結果が出ていました。
じっに日本の四倍、勉強量に圧倒的な差があります。
とか、イギリスの
「インドを失った連合王国はもはや今後大きく成長することができない国家です。
いわば、没落が運命づけられている国です。学生たちには、そのことをしっかり認識してほしいと思っています。オックスフォードは明日の連合王国を担っていくエリートを輩出する学校ですから、未来のリーダーたちに、連合王国の現実を過不足なくしっかり理解してもらいたいのです。そして、没落を止めることはできないまでも、そのスピードを緩めることが、いかにチャレンジングな難しい仕事であるかを理解し、納得してもらいたいと考えています。」
といったところに世界帝国である(あった)国の矜持に感嘆するとともに、留学生の状況や今までの歴史的蓄積から、日本は中国に抜かれ離されるのであろうかな、という危機感と、「あぁ、やはり日本は武辺のくにであったのか・・」と嘆息してしまうのである。
まあ、こんな偏屈な読み方はしなくても、一つの分野を極める方法として
たとえば、何か新しい分野を勉強しようとするときは、まず図詳館で、その分野の厚い本を五、六冊借りてきて読み始めます。
分厚い本から読み始め、だんだん薄い本へと読み進んでいく。
これが新しい分野を勉強しようとするときの私の読み方のルールです。
分厚い本には詳しく商度なことがたくさん評かれていますから、岐初は何が沸いてあるのか分からず、読むのが大変です。しかし、「この分野について勉強しよう」と決めているのですから、辛抱してていねいに読みます。それでも、たいていは部分的にしか理解できませんので、岐初の一冊は「点の即解」にとどまります。
二冊目を読むと、こんどは少しずつ点と点が結びついてこれまで理解したことがつながり始めます。「線の理解」、すなわち線が浮かんでくるのです。分厚い本を五冊ぐらい読んでから薄い本を読むと、それまでの点がすべて線になってつながり、さらには「なるほど、この分野はこういうことなのか」と全体像が見えてきて、一挙に「面の理解」に広がります。
極論すると、いままで読んだ本すべてが、同時に脈に落ちるのです。
一カ月ぐらい時間をかけて一○冊ほど読むと、もう大丈夫です。
その分野に詳しい人と話をしても、何を言っているのかが分かり、会祇が楽しくなります。私はこのようなやり方で、新しい分野を開拓してきました。
といった一種の実用的なテクニックも披瀝されているので、その点はご安心を。
ただまあ、本書の効用は、「生産性」あるいは「効率」だけの議論で、心が荒れてきた時に
どのような問題であれ、「幹」と「枝葉」を峻別して考えていくことが必要です。
どんな事例でも一○○%メリットだけという話は存在しません。
必ずメリットとデメリットが混在しています。
まだら状のなかにあって肝心なことは何か、何が「幹」で、何が「枝葉」かを見極めていくことが、大局的な判断を謝らないために求められているのです。
(P200)
といったことを胸において、書物とともに着々と人生の「歩」進めていくべきことが大事であること教えてくれるところなのかもしれんですね。

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