10年前の殺人が発端となる、隠された秘宝をめぐる大量殺人 — 和田はつ子「料理人季蔵捕物控 思い出鍋」(時代小説文庫)

第9弾で、秘宝探しにまつわっておきた事件の解決編が第10弾。9弾目の「菊花酒」の最終話「黄翡翠芋」の続きといったところ。
収録は
第1話 相愛まんじゅう
第2話 希望餅
第3話 牛蒡孝行
第4話 思い出鍋
第1話で、塩梅屋が筍の調達で世話になっている光徳寺の和尚が教えている画の会でのトラブル相談が最終話の伏線として張られているので、ここは注意どころ、
さて主な筋は、二十年前の死骸が発見され、手がかりとなるのは、以前、流行した、饅頭に仕込まれてた陶製の「桜の印」。被害者は意外に早く判明して、10年前くらいに手代に金を持ち逃げされて潰れた「小田原屋」の手代・宗助であることが判明。これをきっかけに、宗助を殺した犯人探しが主筋として展開する。
犯人は、この金を持ち逃げした手代・七之助であることは結構早くに判明するのだが、この七之助が、やたら凶悪で、この事件に関わる人をやたらと毒殺するので始末が悪い。
ただ、この犯行の裏には第9弾の後半で出てきた「秘宝」探しが絡んでいて、それが光徳寺に関係しているようで・・、と言う感じで、最初の伏線が生きてくる。
そして、このシリーズは、一話ごとに凝った料理が出てくるのだが、今回は「牛蒡孝行」にでてくる
季蔵は、まず、人参だけは輪切りに、葱は小指半分ほどに切って茹でた。形の似ている巻湯葉も、ほぼ、葱と同じ大きさに揃える。小ぶりの椎茸は十字に切れ目を入れておく。
(中略)
あとの葉物はさっと茹でて、葉が一番小さい京葉を芯に、小松菜で巻き、最後に大きな葉の三河島菜でくるくると巻き上げ、食べやすい大きさに切っておく。こうすると、葉によって異なる緑の濃淡が美しい。
後は鍋に青物と巻湯葉を入れ、大豆の絞り汁である豆乳に、出汁、昆布風味の煎り酒を加えて調味して火にかける
という「精進明日香鍋」が珍しいのだが、最終話で殺人の道具として使われていて、縁起の面ではどうかな、という次第であります。

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