とんとん拍子のレベルアップ。ステージクリアも間近か? — 佐々木裕一「公家武者 松平信平 4 暴れ公卿」(二見時代文庫)

この公家武者シリーズは、一冊の中にいくつか小さな話はあるが、一つのまとまったストーリ展開というのが多いのだが、今回は久々にそれぞれが独立した物語に成っている。
 
収録は
 
第一話 子連れ善衛門
第二話 湯島天神参り
第三話 女剣士
第四話 暴れ公卿
 
の四話。ざっくりとレビューすると
 
まず「子連れ善衛門」は高座藩のお家騒動に巻き込まれる話。高座藩の嫡男・彦丸が侍女と襲われているのを善衛門が助ける。彦丸はこのショックで声を失う、というおまけつき。お家騒動は、江戸家老と国家老、江戸家老の家臣、正室が入り乱れての勢力争い、跡目争いで、騙し騙されと結構複雑な展開。
 
第二話の「湯島天神参り」は遊び人を襲って逆に右腕を切り落とされた侍を助けることが発端。侍に襲われた遊び人・四郎の正体は、武家や大店の女房や娘を騙して関係をもち、これをネタに脅して売春をさせる悪どい売春ブローカー。途中、登場する
武家の妻女の姿がなんとも切ない。最終的には、悪人は栄えず、はいつものことなのだが、一寸の虫にも五分の魂的展開は、悲しいが、なんとなく腑に落ちる展開
 
第三話の「女剣士」では、信平の臣下となった佐吉に弟子入り志願の侍が現れる。五千石の旗本の家臣という紛れもない「武士」なのだが、剣術がからっきし(と本人が思い込んでいて)、家中の剣術師範だけでなく、自分の妻に稽古をつけられる始末。しかも、妻は以前、剣術師範に試合で勝った経歴もあり・・・、といった設定。最終的には、能ある鷹は、でなく自覚していない能ある鷹といった具合で、夫婦円満となるのがこのシリーズの良いところ。
 
最終の第四話では、40年前、京都で公卿が起こした宮中を巻き込んだ乱交事件の復讐を、その公卿の息子が企むものを、信平がどう阻止するかが見もの。そして、RPGと同じように、信平のレベルがあがると敵方もだんだんと進化してきていて、第一作のときほど油断もしないし、簡単にやられもしないという造りになっているので、少しハラハラしながら読ませるあたりは、作者の技の見せ所である。
 
ということで、今巻は着々と信平が加増されて、松姫との新婚生活も間近か?といった準備編。もっとも、智慧伊豆や酒井大老など幕閣の目線は冷たいままなので、次巻以降の波乱も期待させて次巻へ続くのであった。
 

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