今までの苦い「地域活性化」の経験をきちんと認識しよう — 飯田泰之ほか「地域再生の失敗学」(光文社新書)

「地方創生」「地域活性化」「地域の活力を取り戻す」・・・、こういうテーマが行政の予算や開発計画、総合計画の中で踊らないことはまずないと思うのだが、いかんせん、成功例となると、これもまた希少な部類の言葉であるような気がする。
本書は、そうした「地域再生」について、今までの行政や政府などの公的セクターっぽい視点からではなく、むしろ研究的な側面から実践者、現場の分析者の目線で語ったのが本書。
 

 

構成は
 

 

第1章 経営から見た「正しい地域再生」
第2章 官民連携の新しい戦略
第3章 フラット化しない地域経済
第4章 人口減少の先進地としての過疎地域
第5章 現場から考えるこれからの地域再生
 

 

となっていて、登場するのは、経営的な視点でのまちこしの専門家、地域経済学の専門家、経営学者といった、およそ今までの「まちおこし」では主流として登場してこなかった層の人たちであり、冒頭でも
 
現在の状況から考えると、これまでの地域再生策は基本的に失敗だったとまとめざるを得ないのではないでしょうか。従来型の政策の多くは失敗だった。これを認めることが、これからの地域再生を考える出発点となるでしょう。(P4)
 

 

とかなり挑戦的である。
 

 

ただ、そう言われるのもしょうがないところがあって、例えば、
 
地域活性化では、貿易黒字が大切です。地域内に来てもらうだけでなく、商品を出して外貨を稼ぐ。活性化を口指す上で、地域から山ていくお金よりも地域に入ってくるお金を多くするのが基本原則
 

 

といったあたりは、とかく目を惹いたり、派手であれば良しとしがちな地域活性化の動きに対する警鐘でもある。
 

 

さらには、
 

 

地域経済の再生は地域の稼ぐ力の向上によってもたらされる。
そして、稼ぐ力を決定するのは人と人が相互にコミュニケーションをとることで発揮されるクリエイティビティであり、人と人との聞で生まれる信用である。
このような観点から地域経済を考えると、その再生のために必要なのは、いかにして地域内でクリエイティブな発想を生みやすい環境を整備していくか、さらには地域外とどのようにして相互に信頼できる人間関係を構築するかであるということになる
 

 

といったあたりは、地域内あるいは地域間の関係性の構築の重要性を教えてくれる。
 

 

そして
 

 

目指すべき唯一の目標、モデルはもはやなくなった、ということも重要なポイントです。都市であれば東京を目指し、田舎は田園都市を目指すといった唯一のビジョンから脱して、将米世代の選択肢を減らさないことを意識する必必があると思います。
今の「正解」が、将米においても正解であり続けるとは限りません。将米どんなことが起こるかわからないという前提に立って、将来世代に多くの選択肢を手渡すことも我々の責務だと思います。
 

 

といったところは、地域が元気になる上で、高度成長からバブル時代、そしてバブル後を通じて、東京への一極集中を促し、地方を疲弊化させてきてしまった、当方のような年配者の「務め」というものを、改めて提示されているような気がするのだが、どうであろうか。
 

 

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