カメラマンもビジネスマンも「マメさ」と「現場の肌感覚」が大事 — 渡部陽一「戦場カメラマンの仕事術」(光文社新書)

その独特の喋り方と、戦場を駆け巡ってきたカメラマンとしての実績が、どうにもマッチしないことがかえって人気がでた原因でもあった、戦場カメラマン・渡部陽一氏の本。表題には「仕事術」とあるが、むしろ戦場の現場に入るスタンスといった気持ちでとらえた方が良い。
 
構成は
 
【第一部】僕が見てきた世界
第一章 取材は準備から始まる
第二章 戦場カメラマンになろうとは思わなかった
第三章 現場で学んだ取材の作法
第四章 戦場取材のリアル
第五章 戦場では活字が心の癒やしになる
【第二部】僕が出会った日本のジャーナリスト
イントロダクション
山本皓一(フォトジャーナリスト)
松浦一樹(読売新聞社)
渡辺照明(産経新聞社)
原田浩司(共同通信社)
 
となっていて、エッセンス的なものをすくい上げると、まずは、現地に入って取材の体制をつくるところだが、
 
僕は信頼関係を構築するためには、小マメな連絡が武器になると思います(P23)
 
マメさというのは、日本人の感覚ではやりすぎといわれるぐらいが外国ではちょうどよかったりします。・・・僕達にしてみれば驚きの連続ですが、その感覚を自分のチャンネル都市手持ちうことができれば大きな力となります。外国ではしつこければしつこいほど、誠意と受け止めてもらえるからです(P48)
 
とあるように、人間関係を濃密に構成するところがキーであるらしく、このへんは、営業活動と共通するところがあるかも。
 
さらに、
 
そうやって何日も安宿に泊まって生活していると、そこの国の人たちの生々しい日常の息吹や生活の知恵を感じ取れるんですね(P55)
 
その地域の考え方や慣習と言うものを、テキストからだけではなく肌で知る。やってはいけないこと、大丈夫だと思っても実はその地域ではタブーであること、一歩引いたほうがいい状況、絶対に土足で踏み込んではダメだというルールを自分からすくい上げて感じ取る。これは取材の基礎力になる経験です(P56)
 
といったあたりには、「現場の肌感覚」の大事さがうかがわれ、ビジネスの場面と同じであるな、と感じる。
 
まあ、カメラマンと言う仕事は、そこで生活している人々の日常にどかどかと入っていって、「写真」をとるのが仕事であるから、一番重要なのは、そこに入っていける「人間力」といったものであろうから、ビジネスとの共通点も多いのも頷ける。
 
渡部氏の人柄が、あとこちに滲み出てくるようなエッセイっぽい一冊でありますな。
 

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