久々に江戸に帰っての、信平の活躍はどうだ — 佐々木裕一「公家武者 松平信平 11 乱れ坊主」(二見時代小説文庫)

京の都で、幕府に叛旗を翻そうとする陰謀を阻止した信平のその後の京、そして江戸帰還後の活躍を描くのが本巻。
構成は
第一話 林檎の香り
第二話 乱れ坊主
第三話 狙われた友
第四話 死闘!鳳凰の舞
となっていて、第一話は京都、第二話以降は江戸が舞台。そして、今回は大事件の解決後とあって、大陰謀はなし。
第一話は、佐賀藩京屋敷の書物方の息子の江戸留学を助ける話であるのだが、これに信平の妻・松姫の悪阻の治療が絡む。人助けが信平の江戸帰還の助けになるという、「情けは人の◯◯」の諺を地で行く展開。
第二話は、同心・五味のところへ逃げ込んできた、美女・秋にまつわる事件。「乱れ坊主」というのは小石川・長仙寺の親兼という坊主のことなのだが、こいつが二十年前に取り潰された旗本の成れの果てらしく。こういった設定どおり、旗本に対する恨みを持っていて、旗本の妻や娘を毒牙にかける、という「必殺△△人」っぽい設定。
第三話は善衛門の弟弟子の旗本・梅村春宗の息子に関連する事件。彼の長男は何者かに襲われ命を落としたのだが、次男・敬之介も襲われる。ために敬之介助は家督を継ぐのを嫌がって・・・という展開。事件の首謀には、春宗を逆恨みする旗本がいるのだが、その旗本の動機の影には息子可愛さの教育パパ・ママの気配がするのが現代的。
第四話はひさびさの大活劇。この話の敵役・紫女井左京はかなりの剣の使い手。この男が、とりたてた動機もなく、江戸市中の剣術家相手のとにかく暴れこんでくるのだから、凶暴極まりない。とかく、こうした理由のない暴れ者というのは、理性的につけこむところがないから、手がつけられなくなるのはいつの時代も同じであるようだ。そして、さすがの信平の彼の剣技によって・・・、というところで結末は原書で確認いただきたい。
ひさびさの単話仕立てであるが、長編ものと違って、それぞれ違った味わいの仕立てがされている。長いシリーズものの、ちょっとした箸休め、といったところでありますかな。

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