カテゴリー別アーカイブ: 仕事術

批判や反対だけしてくる人にどう対応するか

先日、仕事の関係で複数人で対談する機会があったのだが、その中の一人がとにかく反対したり、批判だけをしてくる人で、司会もちょっと手を焼く事例に遭遇した。

なにせ、当日の対談の内容について「あえて、情報を入れないで臨んだ」といったことを広言して来る態度なので、まあ何おか言わんや、なのであるが、出席者の発言は発言なので、ほっとくわけにはいかない、といった状況。彼の意見へ反論を少しすると、「自分はこう思うから」といった態度で、他人の意見は全く聞き入れないので、なんとも手に負えないのである。

で、当方としては、批判のための批判のあたりは無視、彼の言葉の端っこをこちらに都合のよいようにとって、話をほかへ膨らましていくといった態度で対応。結局のところ、はたからみていると、おそらく話が噛み合わないままに終わったように見えたのであろうが、とかく批判だけしている人とは議論にならず、下手をすると中傷合戦になることが多いので、それだけは避けることができた(公開討論の中傷合戦はどちらが正しくても、あまり美しくないので、好きではない)

 

こうした時の対応で、一番まずいのは、正面から受けて議論を拡大して説得しようとすること。なにせ、相手は話題についての知識・情報をあえて少ない状態でやってきているのだがら、もともと自らの感覚だけで反応している状態なんで、感情的なやりとりに陥ってしまうことが多いような気がする。

 

こうした時の対応としては

①こちらから遠ざかっていく。離れたポジションを確保して関わらない

②別のエリアにもっていって、「すれ違い」にあえてなる

といったやり方が、こちらの被害が一番少ないと思う。

「全員がこちらを理解してくれるわけではない」、そんな感覚で物事に対処することも必要なのでありましょうね。

 

タスク管理への「救急医療」概念の導入 — 裴英洙「トリアージ仕事術」(ダイヤモンド社)

仕事をしていく上で、一番重要ではあるが、なかなか思うようにいかないのが「タスク管理」であろう。そうした「タスク管理」の手法に救急医療の概念でもある「トリアージ」という考えを持ち込んだのが本書の特徴。
 
構成は
 
序章 忙殺&プレッシャーの毎日から解放される 3つの原則
1章 仕事はトリアージで動く
2章 自分のパフォーマンスを最大化する
3章 とにかく「ばらつき」をなくせ
4章 体・コンディションの整え方
5章 人のパフォーマンスも上げてしまおう。
 
で、本書によれば、
 
「トリアージは優先づけの技術」(P22)で「トリアージとは、今、あなたがすべきことを見出し、たくさん抱えているタスクに優先順位をつけて、限られた資源を効率的に配分すること」(P26)
 
であるそうなのだが、この辺りは、通常の「タスク管理」でよく言われていることと変わらないのだが
 
トリアージの基本は、まず現状の資源で対応可能かどうか、からスタートする(P24)
 
どう逆立ちしても対処できない問題は、当面の間、優先順位から外す(P25)
 
といったあたり当面できないことも「タスク」として整理してしまい、後で混乱する
 
ただ惜しむらくは
 
優先順位のつけ方ーヒト・モノ・カネ・タイムの基準。これら4項目でそれぞれ点数をつける(P32)
 
限られた時間内でクライアントの求める最大限のパフォーマンスを挙げるためには、「ここまでは自分でできる」「ここから先は自分ではできない」と勇気を持って因数分解することが必要(P47)
 
といった感じで、「トリアージ」の具体的手法への言及はちょっと踏み込み不足であるように感じられるあたり。
 
ただまあ、「手抜き3原則}、「緊張を消す方法」とか「情報の捨て方5ケ条」といった小技は結構参考になるし、タスク管理の方法論ではないにせよ、ミスが起こりやすい状況の分析で出て来る「ボスには逆らうな」症候群、「我々はスーパーチームだ」症候群、「お見合い」症候群、「社会的手抜き」症候群は、ふむふむと頷けることが多い。
 
これ一冊で、タスク管理と仕事の管理が全て解決、といった類のものではないが、サイドメニュー本として、読んでおいてもよいですね
 

創業物語の「苦い」部分も書かれているのが良いね — 遠山正道「スープで行きますー商社マンがSoup Stock Tokyoを作る」(新潮社)

 三菱商事の商社マンで、食品産業とは縁のなかった筆者が、日本で初であろうスープのファストフード専門店の立ち上げから、軌道に乗せるまでの奮闘の数々を綴ったもの

 
構成は
 
第一章 成功することを決めた
第二章 Soup Stock Tokyoの誕生
第三章 働き始めたビジネス
第四章 つきつけられた現実
第五章 スマイルズの人々
第六章 振り返りとこれから
 
となっていて、初版発行が2006年であるので、その後の事故米穀混入の件であるとか、スマイルズの分社化といったこと以前のものであるのだが、本書を読む目的は、一人の若い起業家が自分の精魂を傾ける分野を如何に見つけ、会社を立ち上げ、お決まりの経営危機をどう乗り越えていったか、といったところが大勢であろうから、そこはあまり関係ないといっていい。
 
で、こうした事業立ち上げの物語を読む際には、力点の置き方というのが、人それぞれに、あるいは読者が置かれているビジネス環境その時ごとに違ってくるのが通例で、当方的には、流行を掴んだ会社がどのあたりで危機に陥って、どう切り抜けたか、といったところにスポットで当てて読んでみた。
 
同社の危機が訪れたのは1998年8月1号店の開業から6年後、苦労はあれども店舗も増えて、さらに勢いに乗って強化展開をしようかといったあたりで、登っていくときほど足下に気をつけないとね、といった織田信長的な危機の迎え方である。
 
それは、三ヶ月にわたっての業績の伸び悩みという事態で現れ、しかも、その原因がつかめない、分析しきれないというおまけつきである。そして、三ヶ月で創業以来の蓄えを使い切ってしまうという事態を迎えるのだが、その根本原因は
 
以前よりも本部から店舗へ指示することが多くなっていました。
そこには、ブランドとしてのイメージを統一して質を良くしていこうという狙いがあったのですが、現場には、その意図まで伝わっていませんでした。
そのために、私に近い所にいる本部のメンバーが偉くて、現場は私の意図を想像するしかないという構図ができ、不満が蔓延していたのです。
また、その頃、各店が達成すべき「売上予算」が、その店舗に伝わっていないという、とんでもない事態も判明しました。
本部と店舗の聞には、いつの間にか大きな構ができていたのです。
 
 
といったことで、その解決手段が
 
私は常々、大企業によくみられる、閉塞感のある縦割りの仕事の仕方が嫌いでした。
それよりも感性を重視し、素敵な会社を作ろうと立ち上げたのがスマイルズです。
仕事の仕方も、デザインや雑誌編集、レコード製作などのような「プロジェクト型」が良いと思ってきました。背広もネクタイもしないで、異業種の才能達が意見を交換しながら物事を決めていく、あの感じです。私はそれを、「スパゲティ型」なんて呼んでいました。
しかし、これは「攻めるに強く、守るには弱い」やり方であることもわかってきました。社内の誰も、店舗の営業の結果に責任を持つ構造になっていなかったのです。
私は自分の認識が甘かったことを思い知りました。
「スパゲティ型」から「定食型」へ。おかずがきちんと仕切りに収まっている幕の内弁当のようなイメージです。分業して、それぞれの仕事に責任を持ってもらう。個人の個性を信頼し尊重すれば、自分たちらしくできるはず。とにかく、そう信じることにしました。
 
という、オーソドクスなところに帰着する辺り、「基本」を大事にすることの重要さと、すべての組織において、「本部と現場」との乖離は常に起きる課題で、しかも、経営を揺るがす事態を簡単につくり出すのだな、と改めて認識した次第。
 
 まあ、当方が取り上げたところだけではなく、創業部分であるとか、人材確保の方法であるとか、それぞれに、「ああ、こういうやり方もあるのか」と気付かされるところは多いだが、なによりも評価したいのは、経営危機に陥った時の「苦い」部分の描き方であろう。「甘い味」ばかりでは、経営書としては薄っぺらになるもので、やはり、こういう苦みがないと物事はしまらないよな、と思った次第なのである。
 

立身出世だけにとらわれない、汎用的な「リーダー論」の基本書の一つ — 河野英太郎「99%の人がしていないたった1%のリーダーのコツ」 (Discover)

前著「99%の人がしていないたった1%のコツ」で仕事の段取り関係のビジネス本で評判をとった著者の今度は「リーダー論」。
「リーダー論」というと、どうしても会社などの組織上の「地位」と密接不可分なところがあって、例えば佐々木常夫氏の「そうか、君は課長になったのか」とかは管理職という側面がセットになっているのだが、本書は、そういう会社内のランクとは別の「リーダー論」として読むべきで、それは「はじめに」の冒頭の
 
リーダーとはあくまでもチームや組織で仕事をする上の「役割」であり、特別、り‥ダーが偉いわけでも、価値が高いわけでもない
 
といったところで、立ち位置を示している。
 
 
で、構成は
 
CHAPTER1 メンバー選びのコツ
CHAPTER2 仕事の依頼のコツ
CHAPTER3 メンバー評価のコツ
CHAPTER4 トラブル対処のコツ
CHAPTER5 チームを前進させるコツ
CHAPTER6 モチベーションを高めるコツ
CHAPTER7 人を育てるコツ
CHAPTER8 自分を整えるコツ
 
となっていて、「組織管理」ではなく「チーム管理」という色彩が強い印象で、
 
実際には、すべての領域で自分が「トップ」であることを優先した結果、チームの目標が達成できないほうが、人心は離れていきます。
いかに自分より優れた人に働きやすい環境を提供するかが、リーダーの仕事であるとすらいえるのです
 
 
 
リーダーや一部のだれかばかりがメンパーを引っ張り、それ以外のメンパーはあとに続く、というチームであってはいけません。
それではチームで仕事をしている意味が半減します。
リーダーの能力以上の成果が出ない組織になってしまうのです
 
といったところを見ると、いわゆる「立身出世術」とは一線を画するリーダー論であり、「リーダーの職能」論として読むべきであるようだ。
 
であるから
 
チーム編成をするときは、「前に出て引っ張る人」「全体を冷静に見渡す人」「専門分野で貢献する人」「それぞれを支える人」など、個々のリーダーシツプの特徴を見極めることが重要です
 
 
仕事の制り振りを考えるとき、どうしても一部の人に仕事の配分が集中してしまうことがあります。
 
私はそれでもやはり、まずはうまくやれそうな人に依頼すべきだと考えています。過去の経験では、できる人というのは私の想定以上のパフォーマンスを出すケースがほとんでした
 
と「組織をうまく運営する」というよりは「組織体のパフォーマンスを上げる方法」といったところが顔を出すのはやむを得ないが、一方で、会社などのオフィシャルな組織だけでなく、いわゆる「組織」全般でのリーダー論として汎用性は高い。
 
 
ただ、もちろん
 
駆け込んできた人に対して「解決策を考えてからもつてこい!」という対応をしてはならないということです。
なぜなら現場で解決策を考えているうちに、解決できないところまで状況が進んでしまうことがあるからです。
 
といった組織運営のコツも披瀝されているのでご安心を。
 
初版が2013年であるので、すでに4年が経過した本ではあるが、基本書は少々以前の本であっても、目を通しておくべきで、この本もその「基本書」の一冊である気がしますね。
 

「ミス」は続くよ、どこまで、といってもいられないあなたへの処方箋 — 中田亨「事務ミス」をなめるな (光文社新書)

ミスや意図しない手抜きといったことが組織の命運や行く末を左右することが多くなったご時勢である。しかも、「ちょっとしたこと」というのが、以前に比べて比較にならないほど影響力を持っているように思える。
そんな時代にあって、「ミス」が起きる原因、そして組織的な防衛の方法についての、新書ながらしっかりまとめてあるのが本書であろう。
 
構成は
 
Ⅰ 理論編 なぜ人はミスをし続けるのか
 第1章 人は「有能」だからこそ間違える
 第2章 間違えのメカニズム追究はきりがない
 第3章 そもそも「間違い」とは何か?
 第4章 時代が事務ミスを許さない
Ⅱ 実践編 ミスはこう防ぐ
 第5章 ミスの解決は「6つの面」から考える
 第6章 「気付かない」から事故になる
 第7章 異変のはじまりはどこか
 第8章 「ミスをしないこと」は目標になりえるか
 第9章 御社の「手順」はムダだらけ
 第10章 氾濫する「ダメ書式レイアウト」
 第11章 「ミス」に強い組織に変える
 
なっていて、まず、「おおっ」と思うのが、ミスが起きる原因で
 
「能力が無いからミスをする」ではなく、「むしろ能力の副作用でミスをする」
「ミスの大半は素人がしでかす」から「玄人のミスも警戒すべき」
 
といった方向にミスが起きる原因を修正すべきといったところであるし、
 
人間の頭は、意思とは関係なく、強制的かつ即時的に、情報の乱れを除去してしまうことがわかります
 
といった人間の能力の高さゆえのミスの発生といったことも気づかせてくれる。
 
そして
 
各作業を失敗せずに実行できる能力を、作業確実実行力と言います。
ミスをせず、無駄を出さず、締め切りに遅れずに、所定の品質を満たす結果を出す技能のことです。
しばしば、この技能に優れている人は優秀であると表彰されます。
しかし実際には、作業確実実行力は、事故防止に対してあまり効果がありません。
 
といったところは、いわゆる世間の「優秀」という概念が「ミスの発生」という観点とは全く別に考えるべきであると提案するあたり、世間の「デキる人」思想への挑戦でもあるらしい。
 
もっとも、ミスの発生防止には
 
ミスの対策を考える人は、必ず現場に足を運ばなければいけません。
現場に行き、現物を見て、現実を知ることが肝腎なのです。
これを「三現主義」といいます。
 
「ご視察」は三現主義とは全く異なるものです。
現場を見るには、抜き打ちで気まぐれなコースを歩み、閉ざされた扉を自発的に開ける探求心がなければいけません。
 
とか
 
第二次世界大戦中、イギリスのチャーチル首相は、自分に送付される文書の膨大さにしびれを切らし、ついにお触れを出しました。
 
◯どの文書も1ページ以内に納めること(書ききれない場合は、詳細情報へのアクセス方法を付記すればよい)。
◯要点を箇条書きする。
◯明確に言い切ること(何をすれば良いのかが曖味な指示や、「ご参考まで」の情報を書かない)
 
といったあたりは、やはり現場主義、物事は単純にしる。といった基本原理が有効であることを示しているのかもしれない。
 
なにはともあれ、仕事をしていればフツーの人は「ミス」は付き物。うまい具合に付き合いながら、できるだけ大きな被害ないようにやっていく方法を、それぞれに模索するしかないようで、本書はそんなあなたの一助になる(かもしれない)一冊ですね。
 
 

慢心を捨てた先に光明がある、ということかな — 畑村洋太郎「技術大国幻想の終わり」(講談社現代新書)

日本の「ものづくり」の力が落ち込んでいくにつれて、「日本、実はスゴイ」「日本、やっぱりエライ」といった番組や主張が増えてきた。最近になって、こうした主張へのアンチテーゼの言説が出てきているのだが、今度は、「日本はやっぱりダメ」的なところへ大きく振れるものが多くて、「中庸」ってなことはないのかと思う次第。
 
本書は
 
第1部 日本の状況
 1 エネルギーと食料
 2 自然環境
 3 人口と社会階層
 4 産業構造の変化
 5 産業が停滞するのはなぜか
第2部 日本がこれから意識すること
第3部 日本の生きる道
 1 市場のあるところでつくる
 2 それぞれの社会が求めている商品を売る
 3 日本の経験を売る
 4 ものづくりと価値
 5 決定的なのはトップ
 
と言う構成になっていて、有り体に言えば、「失敗学」の提唱者で大権威でもある畑村洋太郎氏の日本の「ものづくり」への大苦言でありつつも、日本の技術者・開発者への助言とエールである。当方的には、こうした悪いことは悪いと言うが、良いところは良いという本書のような立ち位置が清々しい。
 
で、「苦言」の部分であるが
 
技術を扱っている者は、製品や機械が壊れるときのモデルやシナリオを把握し、あるいはのメカニズムを正確に考えることが非常に重要です。
 
しかし、そういうことを考えようとしないのが、今の日本の特徴になっています。ダメになるプロセスを考えないということは当然、対応策も考えていないということです。
 
ところでなぜ日本は、このような傲慢な国になってしまったのでしょうか。・・これはかなり近年のことではないでしょうか。とくに今の日本人のメンタリティに大きな影響を与えているのは、1945年から94年までの50年間の「成功体験」でしょう(P15)
 
と、日本の成功に基づく「慢心」がその根底にあったのではと看破する。
で、よくある言説では、「だから日本は・・」ってなことになりがちなのであるが、筆者の場合
 
品質幻想が日本をダメにする
・日本人がつくるものが優れているという幻想
・職人の技幻想
・品質という言葉に対する間違った理解。品質とは、あくまで消費者の要求に応えているかどうかで決まってくる(P58)
 
といった反省点を明らかにした上で
 
国や土地が違えば生活環境は異なるし、民族や人種が違えば風俗や生活習慣なども異なります。本書ではそれを人々が感じている「価値」と表現していますが、価値を製品開発に取り込むことが求められているのが今の時代です(P120)
 
とか
 
日本としては、運用や保守のシステムを含め、セットで販売することにこそ意味があるし、だからこそ簡単には真似のできない日本の独自性が売りにできるのです(P132)
 
といったように、次への道筋を助言がでてくるところが、氏の日本の技術・開発者への期待を失っていない証でもあろう。
 
とはいうものの
 
いまの日本の社会、企業を覆っているいちばん大きな問題は、「考えの硬直化」だと考えています。(P176)
 
日本に必要なのは、このように自分自身で状況を把握し、自分なりの考えをつくることができる人材です(P181)
 
と、我々が我が身の様々な錆を落としていかなければならないことは数多く指摘されている。ただ、錆を落とすためのアドバイスも多数書き込まれているので、今は「失敗」の苦さを噛みしめながら、未来を信じての精進する時なのでありますかね。
 

ビジネス読書には「教養書」が必須 — 山口 周「外資系コンサルが教える読書を仕事につなげる技術」(中経出版)

帯に「MBAに行かずに独学だけで・・・」「1000冊読んで・・・」といった言葉が踊るので「多読の読書術」と思うむきもあるかもしれないが、むしろ「精読の読書術」といった趣があるので注意しておいたほうがいい。
 
構成は
 
第1章 「仕事につなげる読書」6つの大原則
第2章 【ビジネス書×何を読むか】ビジネス書は「これだけ」読めばいい
第3章 【ビジネス書×どう読むか】古典には読む「順番」がある
第4章 【教養書×何を読むか】好きな本を読んで「ライバルと差別化」する
第5章 【教養書×何を読むか】情報の「イケス」をつくれ
第6章 「書店を散歩する」技術
第7章 「本棚」で読書を仕事につなげる
特別付録 これだけ読めばいい!「ビジネス書マンダラ」
 
となっていて、「仕事のための読書で「教養書」の扱いが出てきていて。これは
 
逆に言えば、経営学を学ぶにあたっては次々に出されるビジネス書の新刊を読む必要はない、ということです。
 
という考えによるもののようだが、このあたり、他の著書と同じく、山口氏の独自の切り口・斬新さが光るところであろう。
 
本書には、コンサルタント経験を活かした、特定分野に短期間に詳しくなる方法として
 
「知的生産」にかかわる仕事をしていると、短期間である分野の知識を集中的に学ばなければならない場面があると思います。
(中略)
このようなときにお勧めしたいのが、入門書5冊+専門書5冊=10冊の「1日読書」です。午前中を入門書の斜め読みに、午後は専門書の拾い読みにあてる、というのが基本的なプログラムです。
(中略)
5冊を午前中の2〜3時間を使って斜め読みします。斜め読みでは㈰図表だけ、㈪パラグラフの冒頭で自然と引き込まれた箇所だけ、を読みます。どんなに長くてもおそらく1冊につき30分程度で済むはずです。
午後は専門書。午前中につかんだ全体像やキーワードをもとに、特に深めたい部分を集中して読みます。
(中略)
ここでポイントになるのが、期限を1日に限定するということです
 
といったテクニックも随所に照会されているので、それを拾っていくのも本書活用の一方法だが、当方的には
 
定番のビジネス書がビジネスにおける規定演技だとすれば、リベラルアーツに関連する書籍はビジネスにおける自由演技に相当します。そして、そこでどれだけユニークな本を読み、それを自分の血肉としてアウトプットにつなげていくかが、「その人らしさ」を左右することになります。
 
成功する人には「さまざまな出会いや偶然を、前向きに楽しめる」という共通項があることがわかっています
 
といったことを基本にして
 
自分が重要だと思った情報は、脳内に記憶するのではなく、いつでもアクセス可能な場所=イケスにそのまま泳がせておき。状況に応じて調達し、他の情報と組み合わせて調理=知的生産するほうが合理的です
 
 
1冊の本でインプットした情報(魚)をイケスにいれるためには、次のようなステップで1冊を3回読みます
ーーーー
1回目:線を引く、2回目:5つ選ぶ、3回目:転記する
ーーーー
1回目→2回目→3回目と、自分にとって必要な情報をスクリーニングしていくのです
筆者の場合、アンダーラインの箇所がどんなに多かったとしても、イケスに放り込むのは基本的に5カ所、どんなに多くても9つまでにしています
 
あるいは
 
本の活用方法は2つしかありません。ひとつは、重要と思われる箇所を転記して必要に応じていつでもアクセスできるようにすること。もうひとつは、折りに触れて再読することです。
 
といった、読書による「継続的な知的生産」の手法をすくいとっていくというのが良いようだ。
 
本書に引用するスティ−ブ・ジョブズの言葉によると
 
創造性とは「なにかをつなげること」なんだ。クリエイティブな人に対して、どうt¥やって創造したのかを尋ねたら、彼らはちょっとバツが悪いんじゃないかな。なぜなら、実際になにかを作り出すなんてことはしていないから。彼らはただ自分の経験から得られた知見をつなぎ合わせて、それを新しいモノゴトに統合させるんだ
 
とのこと。自分は独創的でないから・・と悩まず、読書による「創造性の創出」にチャレンジしようではありませんか。

「論理的思考」は究極の仕事術ではないかも — 山口 周「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか」(光文社新書)

「美術」といえば、当方の学生時代は、よほど成績が良くて、しかも絵心のあるというかなり特殊な、語弊を恐れず言うと、コミックの中でしかないようなものだったのだが、どうやら、エリートというか組織の決定権を持つ人にとっては、重要な価値判断は「美意識」が肝なのよ、ということらしい。
 
構成は
 
はじめに
名門美術学校の意外な上顧客
忙しい読者のために
本書における「経営の美意識」の適用範囲
 
第1章 論理的・理性的な情報処理スキルの限界
第2章 巨大な「自己実現欲求の市場」の登場
第3章 システムの変化が早すぎる世界
第4章 脳科学と美意識
第5章 受験エリートと美意識
第6章 美のモノサシ
第7章 どう「美意識」を鍛えるか?
 
おわりに
 
となっているのだが、基本のところは、コンサルタントが力説する「ロジカル」なんとか、とか、論理性などいうことは実はマジックワードではなくて
 
確かに、過去の経営史を紐解いてみれば、優れた意思決定の多くは、論理的に説明できないことが多い。つまり、これは「非論理的」なのではなく「超論理的」だということです。一方で、過去の失敗事例を紐解いてみると、その多くは論理的に説明できることが多い。つまり「論理を踏み外した先に、いくら直感や感性を駆動しても、勝利はない」ということです。
 
といったことらしく、これはよくある社内研修やらMBAの真似事研修を、真っ向から否定するもので痛快ではあるし、
 
億万長者で、ステレオコンポ会社のCEOであるハーマンは、MBA取得者を雇うことにまったく値打ちを感じないのだという。その代わりに、と彼は言う。 「『詩人をマネージャーにしなさい』と言うんだ。詩人というのは独創的なシステム思考ができる人だからね。彼らは自分たちの住む世界を観察し、その意味を読み取る義務を感じている。
 
といったあたりには、今までの「デキる人」という認識を揺さぶってくる。
 
で、そうした論理的思考がもたらすものが、ともすれば「常識」とか「世間知」というものから離れがちであることはなんとなく感じていて、そこを
 
わかりやすいシステムを一種のゲームとして与えられ、それを上手にこなせばどんどん年収も地位も上がっていくというとき、システムに適応し、言うなればハムスターのようにカラカラとシステムの歯車を回している自分を、より高い次元から俯瞰的に眺める。そのようなメタ認知の能力を獲得し、自分の「有り様」について、システム内の評価とは別のモノサシで評価するためにも「美意識」が求められる、ということです。
 
と看破する論調は小気味良い。
 
そして、では、そうしたシステムに用意される判断基準から離れた時の「基準は何か
」ということについては
 
「自分がいいと思うかどうか、ピンとくるかどうか」が最終的な意思決定の立脚点であって、データや説明などは参照しない、むしろそんなものが必要になっている時点で、そのデザインはダメだというわけです。
 
 
システムの内部にいて、これに最適化しながらも、システムそのものへの懐疑は失わない。そして、システムの有り様に対して発言力や影響力を発揮できるだけの権力を獲得するためにしたたかに動き回りながら、理想的な社会の実現に向けて、システムの改変を試みる。
 
といった、ちょっと「ヒネ」た対応が必要となるようだ。
 
なんにせよ、「エリートの判断ミスによる業績凋落」や「組織的隠蔽による企業危機」といったことが、どぷやら日常茶飯のように生じている今、
 
システムを改変できるのはシステムの内部にいて影響力と発言力を持つエリートですが、そのエリートが、システムの歪みそのものから大きな便益を得ているため、システムの歪みを矯正するインセンティブがない。システムに参加しているプレイヤーが各人の利益を最大化しようとして振る舞うことで、全体としての利得は縮小してしまうわけで、これはゲーム理論でいうナッシュ均衡の状態です。これが、現在の世界が抱えている問題がなかなか解決できない本質的な理由です。
 
といった、「はぐれ者」の処世方法が有効になっているようなのであるが、さて、個人的にどうこなすか、結構、難しい処世術ではありますな。

「会話力」は ”人間生活+出世” の基礎であるようだ — 斎藤 孝「すごい「会話力」」(講談社現代新書)

斎藤孝先生は、「◯◯力」という言葉を生み出す名人でもあって、今までも「雑談力」とか「語彙力」とか、思わず「えっ」と引き寄せられる言葉をつくり出してきている。
そういう著者の今回の「◯◯力」は「会話(力)」。
 
ただ今回は「会話」というちょっとありふれた言葉を使っているので「すごい」と「会話力」が融合して初めて気を引くかな、と思う次第。
で、その「すごい会話力」とは「交友(友人と良い関係を築く)」「仕事」「愛(恋愛し、結婚し、家族を形成する」の人生の三つの課題をこなしていく総合的な会話力であるそうな。
 
さて、本書の構成は
 
まえがきー会話部への御招待
第1章 会話の構造ー会話力は実は上達が早い
第2章 「会話身体」で人間関係力を磨く
第3章 情報交換とは「贈与」と「返礼」の精神
第4章 マインドフルネスー幸福感を味わう
第5章 活字力と「後輩力」で差をつける
第6章 「大人会話力」でパワーアップ
第7章 言葉遣いのセンスを古典と名作に学ぶ
終章 究極の会話力
あとがきー座の会話力へ
 
で、本書で言う「会話力」とは
 
会話には三つの段階があり、それぞれの段階に応じた会話力が求められます。
一番基礎的な会話力は、言葉のやりとりを通じて相手と仲良くなる「雑談力」です。(P30)
 
私達の会話の大半は雑談なのです。
・・・実は雑談には、その場の人間同士の距離を縮め、場の空気を和らげる力があります(P31)
 
会話力の第2段階は「意味のやり取り」の会話力です。・・・これは、言い換えれば、相手の話の意味を上手に要約する力です。(P35)
 
さらにその上をいく最上位の第3段階が「クリエイティブな会話力」です・
これは話しているうちに「ああ、それならこうやってみよう」というアイデアがお互い出てくる会話力です。
クリエイティブな会話力とは、「お互いの間に新しい意味が生まれる」会話です(P36)
 
という3つであるそうなのだが、この会話力のテクニックは
 
会話の中で、相手に何を薦める時、違う観点から三つ用意しておくと、相手に「お得感」を持ってもらうことができます(P92)
 
とか
 
「他人がジョークを言ったら盛大に笑う」(P159)
 
 
相手が何か情報を開示してくれたら、まずは「へ〜」と軽く驚くのが礼儀です(P161)
 
といった小技の集合体でもあるのだが、ジョークへの対応のあたりは欧米人の得意技でもある。
 
もっとも
 
欧米人の会話には、古典からの引用が非常にたくさん出てきます。引用を使うと話の内容が一気に教養に満ち溢れた感じになるのです。
(中略)
では何を引用すればいいのか。欧米では不動のトップ3が確定しています。旧約聖書、新約聖書、シェイクスピアの三点です(P175)
 
といったあたりは、趣味良い会話には、「教養」が欠かせんな、と我が身を振り返ってちょっと寒くなる。
 
さて、
 
人間の意思決定というものは、実は感情に左右されています。(P19)
 
現代はビジネスが高度で複雑になっていますが、じつはそこで求められる能力の中で、「感じが良い」ということは非常に大きな比重を占めるようになってきています。(P25)
 
といった時代風景の中で
 
人の幸福感は、何によって増やすことが出来るのでしょうか。私は「会話」だと確信しています。(P28)
 
と、「会話」の重要性を一貫して主張するのが本書の大筋。本書で紹介される「小技」をつまみながら、会話の力を磨いてみてはいかがかな。

アメリカ流フロンティア精神で前へ前へと進んでいく方法論 — 「やり抜く人の9つの習慣ーコロンビア大学の成功の科学」(Discover)

アメリカの成功に向けたステップを解説するビジネス本は、日本のそれに比べて妙な説教臭さや求道精神がないのが好みである。
本書もそうしたアメリカ流ビジネス本のスタンダードのようなつくりで、一種の明るさをもって、これから仕事や人生にどう向うかってなことを考えさせてくれる。
 
構成は
 
第1章 目標に具体性を与える
第2章 目標達成への行動計画をつくる
第3章 目標までの距離を意識する
第4章 現実的楽観主義者になる
第5章 「成長すること」に集中する
第6章 「やり抜く力」を持つ
第7章 筋肉を鍛えるように意志力を鍛える
第8章 自分を追い込まない
第9章 「やめるべきこと」より「やるべきこと」に集中する
 
となっていて、目次を見てわかるように、人生ないしは仕事でどういう目標を設定し、それをどう達成するか、といったアメリカらしいプラグマティックなつくりである。
 
それは
 
目標について、私がいつも最初に教えることーそれは「具体的にしなさい」ということです。例えば、「やせたい」と思うのならば、目標は「やせる」ではなく「5キロやせる」とすべきです。
 
とか
 
「これから思考」を重視して、目標までの距離を測ると、モチベーヨンは維持されます。さらには、「これからやるべきこと」を意識することでモチベーションを高めることもできます。
 
「望むことは簡単にできる」「ほしいものは簡単に手に入る」と感上げると失敗の確立が高まるという研究があります。
 
といったところにも見て取れる。
 
目標を設定するときは「今、何ができるのか」ではなく「これから、何ができるようになりたいか」を考えるようにしてください。
 
 
「証明ゴール」の問題点は、まったく未知の課題や難しい課題に取り組むときに、逆効果になる可能性があることです。
 
「成長すること」にフォーカスすると「仕事の意味」が変わってきます。
 
といったところは、とかく求道的になって、新しい課題がでてくると縮んでしまう”日本”のやり方とは対象的におおしろい。
 
そして、こうした楽天的なビジネス本で嬉しいのは、打ちひしがれているときや、失敗して失意の中にいるときに、なんとか前へ立ち上がっていく力を注入してくれる所で
 
行動を変えたいのなら「やめたいこと」を考えるのではなく、「やりたいこと」「やるべきこと」を考えるのです。
 
成功とは「正しい選択」「正しい戦略」「正しい行動」によってつかむものです。決して生まれつきのDNAで決まるものではありません。
 
といったところは、とかく失敗を考えて縮みこんでしまいがちな我々の行動と精神を鼓舞してくれる一冊ですね。