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メンタリストDaigo「週40時間の自由をつくる 超時間術」(実務教育出版)

「メンタリスト」というのは、Daigo氏が広めた言葉で、「心理学に基づく暗示や錯覚などのテクニックを駆使し、常識では考えられないようなパフォーマンスを見せる人」をいうらしく、彼の著書も「人の心を見抜く」「人の心を操る」といった、心理系のものが多いのだが、本書はそんな心理学の知見を活かしながら「時間管理」にまつわる「思い込み」をなくして、どう時間を生み出すか、ということと、そのための「メンタルの整え方」といたところを扱ったもの。

【構成は】

第1章 時間にまつわる3つの勘違い
 勘違い1 物理的な時間がない
 勘違い2 やるべきことが多すぎる
 勘違い3 忙しい人は仕事ができる
第2章 時間感覚を正す7つのフィックス
 フィックス1 ゴールコンフリクトを正す
 フィックス2 時間汚染を防げ!
 フィックス3 呼吸を整える
 フィックス4 リフレーミング
 フィックス5 親切
 フィックス6 スモールゴール
 フィックス7 自然
第3章 それでも時間がないあなたにおくるストレス対策
第4章 職場の「時間汚染」に打ち勝つ働き方
 働き方1 まずは通勤時間のストレスを防ごう!
 働き方2 仕事中の時間汚染に立ち向かうには?
第5章 自分の時間を取り戻す8週間プログラム
 第1週〜第2週 時間が伸びる感覚を味わう
 第3週〜第4週 乱れた時間角を整える
 第5週〜第6週 時間を取り戻す準備を整える
 第7週〜第8週 時間の呪縛を逃れる
 第8週 時間を捨ててみる

となっていて、最初のほうは、「時間管理に関する誤解」の解消、次に「メンタルの整え方」、最後に2ヶ月でそのテクニックを身につけるトレーニング法といった設えである。

【本書の注目ポイント】

◯「時間がない」という主張は根拠がない

まず、本書の主張で驚くのは「あなたの時間不足は「錯覚」(P49)」というもの。
そんなはずはない、俺はいつも時間に追われている、と言いたい向きが多いと思うのだが、筆者によれば

データを見ると、ここで不思議な事がわかります。現代人は昔の人より働いていないにも関わらず、趣味、娯楽、レジャーなどに使う時間は減っているのです。(P22)

多くのアメリカ人は「自分は週60〜64時間は働いていすはずだ」と答えた。
実際に計測した1週間の労働時間は、平均44.2時間だった(P23)

といったデータをもとに、我々の「忙しい」「時間がない」という感覚は、物理的な「仕事の量」というよりも、その処理・対応の仕方にあって、

「忙しい」と口にだすたびに、あなたの意識は未来や過去に向かい、そのせいで目の前の本当にやるべきことに集中できなくなる。
こうなると予定した作業はどんどん遅れてしまい、本当は余っていたはずの時間が無意識に浪費される。(P27)

忙しい人ほど1日にさまざまな作業を詰め込んでしまう

1日にジャンルが違う作業をいくつも行うと、それぞれのタスクを達成する確立は25%も下がった(P40)

といったように、時間配分や時間内に作業ややりたいことを詰め込みすぎて全てが中途半端になってしまうことによる「不完全感」が「忙しすぎて何もできない」という意識を生み出している、として「時間がない」という感覚が、極めて「心理的な」現象であることを主張している。

さらには

マルチタスクをすると、あなたの脳にストレスがかかり、扁桃体という感情をコントロールするエリアが活性化。その結果、あなたの脳はまるで時間が細切れになったかのように思い込み、つねに時間に追われているかのように感じてしまう。
多くの研究者は、この状態を「時間汚染」と呼んでいます。(P79)

といったように、「忙しい」感がさらに、時間が足りないという焦燥感を煽り立てていくといった悪循環にはまり込んでしまう、というのが「時間不足」の実態であるようだ。

◯時間を生み出すための対策は

「じゃあ、どうすれば」というところで、通常の「時間管理本」であれば、作業を省いたりとか、機器を導入したり、といった提案に行ってしまうのが通例なおだが、本書の場合は、そこが、とても「メンタリスト」的で

人間にこのような性質が備わっている限り、「忙しいアピール」が世の中から消えることはないでしょう。
しかし、この事実を知っていまえば、もう惑わされる必要はありません。
忙しそうにする人を横目に、自分は「本来の自由な時間」を有効に使う方法を考えていけばいい(P48)

といったように、人間の心理面で変わりそうもないことは諦めて

「今日は執筆を3本と瞑想を1時間する」といったように、再低減のやるべきことを決めたら、あとは時計を見ずにひたすら作業に取り組む。このようなスタイルで仕事をすると、いま眼の前のことに集中するしかなくなります。(P53)

といったように「時間ではなく「行動」で自己管理をする。」ことを勧めたり、「ToDo管理はインデックスカードで(P84)」とか、「私たちの脳は、一度に同じ能力を使った時にパニックを起こします。・・・ということは、逆に言えば、まったく違う能力を使ったマルチタスクであれば、何の問題も起きない(P86)」といった心理的なアドバイスが中心となるのは、とても新鮮である。

◯時間を生み出すためのメンタル・トレーニング

とはいうものの、「心の持ちよう」で時間を生み出すには、自然体ではなかなかできないのももちろんで、そのために、

 ・4秒かけて鼻から吸う
 ・4秒かけて鼻から吐く

という「サマ・ヴリッティ(等間隔呼吸法)」をはじめとする、「5つの科学的呼吸法」(サマ・ヴリッティ、腹式呼吸、片鼻呼吸法、カパーラバーティ、スダルシャンクリヤ)が紹介されたり、

「不安」も「興奮」も、私達の体に起きる変化は同じ。それならば、何もせずに不安のままでいるよりは、強引にでもポジティブな解釈に切り替えてしまったほうがいい

という発想からの、嫌な状況を前向きに解釈することで、ネガティブな感情に立ち向かうテクニックである「リフレーミング」や自分にとって有効なストレス対策をリストにしておく「コーピング・レパートリー」だとか、トレーニングあるいはスキル的な方法論も紹介されている。詳細のところは、本書を読んで確認していただきたい。
 

【まとめ】

「時間がない」「忙しい」というのは、働くビジネスマンの口癖のようになっていて、いつの間には、そんな気分でいないと仕事した気にならなくなっている自分に驚くことがあるはず。
本書は、そんな「心の持ちよう」を矯正してくれて、「時間を生み出す」本でもある。「時間の細切れ感」に気付いたら、ぜひご一読あれ。

 

【作者の他の著作】

ビジネスの全てを左右するのは「応答力」ー W・A・ヴァンス「答え方が人生を変える」

以前「質問力」ということが流行したことがある。たしかに仕事をしている時、相手の不備な点をえぐるように糺したり、不足なところを質問であぶり出したりすることが上手い人をみると、「鋭いな」とは思うものの、信頼をよせるかというと、裏をかかれそうで「なんだかなぁ」という人が多いのではなかろうか。

それに対して、困った質問や答えにくい質問に、うまく切り返す人を見ると、感心するとともに、信頼を寄せてしまうのが人の常というものであろう。
本書『ウィリアム・A・ヴァンス「答え方が人生を変える あらゆる成功を決めるのは「質問力」より「応答力」」(CCCメディアハウス)』は、そんな「答える力」、つまりは「応答力」についての数少ないビジネス本である。

【構成は】

第1章 あなたを最高のコミュニケーターにするのは「答え方」である
第2章 「質問をリープする」が最強の答え方である
第3章 「答え方」の基本7原則「質問をリープする」ための条件
第4章 どんな場面でも自由自在に自分の意見を述べるには?(第1のリープ)
第5章 相手と効率的に、より深く理解し合うには?(第2のリープ)
第6章 あなた自身をさりげなく売り込むには(第3のリープ)
第7章 情報の本質を人と分かち合うには?(第4のリープ)
第8章 あなたへの信頼を不動のものにするには?(第5のリープ)

【「応答力」を磨くメリットは】

ではなぜ、こうした「応答力」について書かれたことがなかったの、ということに対しては、これはもう単純で、

誰も、「質問」が「答え」より重要だなんてひと言も言っていない!

と「ごもっとも」な回答。

詳しくいうと

質問自体は、デートを確約してくれつわけでもなければ、大発見にみちびてくれるわけでもない。知識を深めたり、人間関係を良くしたり、パフォーマンスを向上させたりしてくれるわけでもなくて、ただそうした可能性を与えてくれるに過ぎない。
(略)
質問」と「答え」の力関係の宿命だ。「質問」はトピックを提供するだけであって、そこから論点を決定し、その後の行動や思考を形成していくのは「答え」と決まっている。

ということであるとのこと。

どうやら、我々は「質問」という切れ者のもつ華やかさに目を奪われていて、その華やかさを生かすも殺すも、実は実直者である「答え」次第であった、という基本のところを忘れていたということであるようだ。

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「想定外」の「ヒューマンエラー」を防止する王道はどこにある? — 中田 亨「ヒューマンエラーを防ぐ知恵」(朝日文庫)

台風、大雨、地震といった自然災害の脅威や被害が大きくなっている最近なのであるが、けして粗略に考えてはいけないのが、「人災」、「ヒューマンエラー」というもの。自然災害の時も、それにヒューマンエラーが重なると、被害が倍々ゲームで増大するのは、多くの事例が証明するところであろう。

本書は、その「ヒューマンエラー」に着目して、その発生メカニズムから、防止策まで幅広に扱っている。

構成は

第1章 ヒューマンエラーとは何か
第2章 なぜ事故は起こるのか
第3章 ヒューマンエラー解決法
第4章 事故が起こる前に・・・ヒューマンエラー防止法
第5章 実践 ヒューマンエラー防止活動
第6章 あなただったらどう考えますか
第7章 学びとヒューマンエラー

となっていて、そもそもヒューマンエラーの注意点は

・ヒューマンエラーはどこでも起こりうる
・ヒューマンエラーはその被害の量を予測しにくい
・ヒューマンエラーは防ぎにくい

ということで、その被害予測や、発生予測がとても困難な点にあるのだが、付け加えるとすれば、誰でもその原因者になりうるということであるし、さらには、

第一番の問題を取り除くと、第二番が昇進する。問題解決のための努力は、問題を扱いやすい形に変換するものにすぎず、問題の存在自体を消滅させることは稀(P67)

ということで、エラー防止の原因潰しがもぐら叩きのように際限ないというところでもある。

際限がないといって、防止策に途方に暮れるようでは、本書を読む意味がないのであって、もちろん本書内には、数々の「ヒューマンエラー」防止のための処方が数々示されている。
たとえば事故防止のためには「大事故の発生に先立っては、およそ329個のちいさなミスが発生している」という「ハインリヒの法則」の「小さなミス」の情報の吸い上げが重要なのだが、得てして、こうした情報というのは現場止まりになって、発生防止を総括する部署にはあがってこないもの。なので、小さなミス事例を吸い上げる要点として、アメリカの航空安全報告システム(ASRS)の例を紹介しながら

①小さなミスを再発見する。頻発する小さなミスは、それが”事故の予兆”、”事故の芽”であるという認識を麻痺させる。
②自分の犯した小さなミスを報告しても、報告者の不利益にならないようにする

といったことについて言及されていたり。ヒューマンエラーの抑止対策としての3つの方針

①作業を行いやすくする。ヒューマンエラーの発生頻度を抑制する。
②人に異常を気づかせる。損害が出る前に事故を回避できるようにする。
③被害を抑える。小さな事故が大きな事故に発展しないようにする

を組み合わせることを提唱し、「あえて手間を与える(強制覚醒策)」、あえて小さな事故を起こす(小事故誘導策)」、「わざと異常を起こす(小異常発生策)」といった少々乱暴なものから、「仕事の達成感を最後まで与えない(達成感保留策)」、「作業のぺーすを作業員の裁量に任せる(作業員主宰化策)」といった人間心理に基づくものまで、多種多様に策が示されているのは儲けものである。また、興味深いのは、ミスの原因の洗い出しをする際の有効な方策の一つとして

一斉検査するために工程に節をつけることは、新しい発想ではなく、むしろ昔ながらの作法にしばしば見られます。茶道にせよ武道にせよ、その段取りは節目だらけです。区切れなしにダラダラ進めるという作法はありません。・・・区切りをつけ間をとって、状況の安全を確かめ、また緊張感を高めてから、取り組みに臨みます。節目こそ、事故を遠ざけ、自分の力を引き出す仕組みなのです(P159)

とあるところで、とかく新しい手法に飛びつきがちな我々に、先人のノウハウをちゃんと学ぶべきことを、あらためて示唆している。

そして、ヒューマンエラーが起きた際によく耳にする「想定外」という言葉には

工学として最も妥当な態度は「この機械のどこが故障すると、どのような事故になりうる。その備えはこうする」というものです。万が一の故障が起こったとしても、「被害」の発生確率を抑える発想が大事なのです。決して「故障」の発生確率を問うものではありません。故障発生確率を考え出すと、「そんな故障はありえない。だから対策もしない」という結論に行き着いてしまいます(P135)

といったように、コスト面や人手の面から、エラーの発生可能性とエラー防止を安易に結びつけてしまう我々への警鐘をならすとともに、

問題解決を考える時には「問題の解決策はクライアントがもっている」と肝に銘じることが秘訣です。・・本当は自分のもっている解決方法を実行するために相談に来たのです。「〇〇ができれば問題を解決できるが、そうならないものかな」と思っているんです。・・・クライアントはアイデアを持っていないと決めつけて、口出しさせぬまま、コンサルタントがあれこれ答えめいた指図をするだけでは効き目がありません(P146)

といったように、専門家への丸投げや過信、現場の軽視に陥りがちな、本部や本社主導のエラー防止対策の危険性も指摘しているのである。

さて、ヒューマンエラーは、どこでも、だれでも起こしうるというはじめの言葉に従えば、関連する部署、関連する社員それぞれが危険意識を保持する、共有することが一番大事であるようだ。本書内で引用される「御神輿組織理論」
のごとく

大人数で御神輿を担いでいると、誰か一人が力を抜く。それでも神輿は進む。二人、三人と力を抜いても、まだ進む。ますます力を抜く人が増え、やがて限界が来て神輿は倒れる(P152)

といったことにならないよう、組織全体で考えを巡らすことが大事なんでありましょうね。

日本の会社の「属人化」をなくすには、職場の「達人崇拝」や「専門家の神格化」をやめることが一番

沢渡あまね氏の「問題地図」シリーズを読んでいて、働き方改革の阻害要因の一つに、仕事の「属人化」ということがよくでてくる。
「属人化」が進行すると、一定の仕事が特定の個人のノウハウとか知識に依存していて、その人がいないと仕事が滞ったりする上に、悪化すると、そのノウハウや人脈が伝承できず、その人を異動させられなかったり、退職されれば、はいそれまで、といったことがおこってくる。

さらには属人化しやすい専門の得意分野の持ち主を、本当なら、その分野のオーソリティといいう存在であるにもかかわらず、日本人の大好きな「〇〇道」という「道」を極めることと同一視して、すべての分野の通じる、対処できるという錯覚をして、多分野の調整業務が必要なポジションや、プランニングのポジションにつけてしまい、全体が機能不全に・・、といった例は、日本企業でよく耳にする例でもある。。

この「属人化」の解消方法として、「職場の問題地図」では

①脱属人化・標準化の取り組み自体を評価する
②ノウハウや知識の公開・共有を評価する
③その人に、育成者としての地位と名誉を与える

といったことがあげられているのだが、当方的に最も重視すべきなのは②であるように考えている。

というのも、海外は知らず、日本の「属人化」の陰には、「その道の達人崇拝」、あるいは、なんでも「術」から「道」に進化させちゃう傾向が隠れている気がするのである。

このため、本来なら、仕事の技術というのは、ほとんどが「テクニック」の部分で、スポーツの技のようなものと考えるべきなのだが、どうかすると、妙な「精神論」がくっついてきて、時と場合と相手方も考えず、いつでも有効な手法として祭り上げられ、その使い所と使い方は「秘伝」のごとく、家元のもとに秘められたままということになる。

で、この解決策は、とにかくオープンソースにすることが有効だろう。しかも、そのノウハウが適用された相手、シチュエーションも含めてオープンにできるように、一定のフォーマットは決めておく、そして、誰でも簡単にアクセスでき、追記できるシステムを開放する、といったことが大事なように思う。

出典は覚えていないが、司馬遼太郎がイギリスとスペインの植民地支配を比較して、イギリスはその支配のノウハウを外にオープンにしなかったのに対し、スペインはそれを開放した。これが帝国主義が進む中、イギリスの隆盛とスペインの衰退につながったということを言っていたような気がするのだが、一つの組織内において、特定の個人のノウハウ独占が招き弊害は大きい。人事的な処遇や報奨制度も含めて、組織内にノウハウをオープンにしたほうが得になるシステムをつくれるかどうかが、組織の浮沈を分けると思いますな。

「稼ぐ」体質になるには、日々の地道な行動が大事 — 午堂登紀雄『「お金をもらう」から「稼ぐ」人になる習慣術』(パンダ・パブリッシング)

最近、「働き方」を中心にしたレビューが多かったのだが、働く環境の整備も大事だけれど、「お金が儲かる」ようにならないと「働き方」だけよくしてもねー、という向きも多いかと思う。
そうした向きに、「根底にあるのは、「僕たちにとって無駄な経験は何もない。どんなことでも必ず何か学びがある」 という視点」に立って「考え、発想する」というビジネス心肺能力を鍛える方法、「試行錯誤を続ける」というビジネス足腰を鍛えるための方法や考え方という「稼ぐ」ためのノウハウについて論じたのが本書。

構成は

第1章 24時間まるごろ学校化作戦
第2章 知的生活につながる時間術
第3章 マルチプル時代を生き抜く知的生産術
第4章 どこでもオフィス化計画
第5章 情報をお金に換える作戦
第6章 知的生活を生む発想法

となっているのだが、「稼ぐ」ための具体的なヒントやTipsというよりは、本書は、「稼ぐ」思考形態になること、「稼ぐ」身体機能を身につけること、の紹介を主眼としていて、たとえば

タクシーに乗るとき、ホテルに泊まるとき、銀行に行くとき、美容院に行くとき、それぞれに視点を持っておくと、たくさんの気づきが得られます。そして、そういうことをメモしておく、ブログに書いておく、など何らかの手段で記録しておくと、それがいずれ話のネタになるのです。

サービスを受けてお金を払うときは、 次からは自分で同じことがやれるくらい、彼らが提供するものをじっと観察し、盗むようにしましょう。

講演やセミナーに出たら、内容だけでなく、講師の話し方、資料の作り方、運営の仕方、会場の環境などをじっと観察します。そして、次からは自分でセミナーができるくらい、注意を払って吸収します。

といった風に、「取り組み方」、「心の持ち方」のアドバイスの傾向が強い。それは、

世の中は、「マルチ」化、「マルチプル」化が進んでいる印象を受けます。企業経営でも単一の商品・サービスはいつか飽きられるため、周辺分野に手を広げていく必要に迫られています。

収入源も、「給与収入」ひとつだけでは心もとないため、複数の収入源をつくることによって、人生の余裕と選択肢が広がります。

といったような、今の企業社会が不安定化していることへの対応でもあるのだろうし、さらには、その不安定さ故に、具体の方法論をあれこれ考えても、すぐに陳腐化することへの対応でもある。このあたりは、大きな評判をとったビジネス書でも、その本が提案するものが具体的であればあるほど、数ヶ月も立たないうちに使えなくなってしまうことに共通していて、「抽象化」された手法ほど、読み取る上での裁量というか、余白の部分が大きくて、汎用性が高いことの現れでもある。

もっとも、その対応というのが

そんなマルチプル時代を最大限に楽しむには、思考や発想をマルチプルにする必要があります。 つまり自分の専門領域にこだわることなく、専門分野の境界を越えようとしてみることです。 そのためのひとつのキーワードが「複眼思考」 です。

ということで、「専門をとことん極める」ではなく、「専門を極めつつも、周辺に浮気する」といった、少々気まぐれな対応が必要になるようで、真面目な人には顔をしかめられてしまうかもしれず、さらには、

適切な意思決定や適切な問題解決には、情報がたくさんあったほうがいい、と多くの人は考えます。しかし、実際には情報量が増えれば増えるほど、僕たちは思考停止してしまいがちです。

こうした状況を防ぐひとつの考え方として、「アンラーンする」 というものがあります。アンラーンとは、「知識」という余分なゼイ肉を削ぎ落としていくことです。

と、今までのできるだけ広範囲に、より多くの情報を集めることを至上とする行動形態を戒めてもいるので、今まで精密に計画を練ったり、精密な市場調査に邁進してきた方々は注意を願いたいし、どうやら、今まで「王道」とされてきた手法とは、ちょっと道筋が微妙に離れているようである。

ともあれ、本書によれば、なにより肝心なのは

なかには、すでに知っていること、やっていることもあるでしょう。あるいは、それは自分にはできそうにない、というものもあるでしょう。
しかし、習慣を見直すとは、そうやって感じたことを一つひとつ立ち止まって、より自分に負荷がかかる方法へとバージョンアップさせていくことです。

今の自分を超えたいなら、よりしんどい方法を選ぶ。でもそれでは続かないから、それをいかに楽しめるか。ゲーム化できるかを工夫する。その試行錯誤の繰り返しが習慣をつくります。

というように、アドバイスをもとに習慣を一つ一つ「稼ぐ」方向へ変えていく、といった結構、地道な方法が必要であるらしい。「稼ぐ」に「王道」はない、ということなのであろう。本書のアドバイスの数々を、地道に、きちんと試してみましょうか。   

「フレームワーク」や「テンプレート」はシゴトの「型」じゃねぇ — 村井庸介「どんな会社でも結果をだせる! 「最強の仕事の型」」(クロスメディア・パブリッシング)

筆者は、野村総合研究所を皮切りに、リクルート、グリー、日本アイ・ビー・エムを経て、メガネスーパーの企業再生に辣腕を振るった人物なので、転職の数がビジネスマンの経歴だ、ってな調子の転職奨励本かと思いきや、豊富な各種各様の企業生活・ビジネス生活を通じた、どんな会社でも通用する「仕事のやり方」(筆者はこれを「型」といっている)を伝授する、いわば「教習本」。
 
構成は
 
第1章 どんな会社でも結果を出せる仕事の「型」とは
第2章 仕事でいちばん大切な「提案力」の磨き方
第3章 「GISOV」を実際に使うときのポイント
第4章 自分の付加価値を高め続けるための「仕事術」
 
となっていて、まず転職について、筆者は
 
業種・業界が違えば、持っておかねばならない基礎知識は異なります。しかし、本質となる行動プロセスは、同じ「GISOV」です。・・・実はどこに行こうと「仕事ってそんなもの」なのです。
私が転職をむやみに勧めない、いちばん大きな理由はそこにあります。「井戸の外に出たら、きっといまよりもすばらしい世界が広がっているんだろう」という「憧れ」ベースの転職なら、やまたほうがいいでしょう。井戸の外に出ても、いまと同じだからです。(P205)
 
と最後の方で述べているので、転職のノウハウを期待する向きはちょっと「残念」。本書の主眼は、筆者によれば、「よい提案ができるということは、すべての仕事に使える「仕事の基本」(P5)」で、その提案が「承認」される度合いを上げるための「型」について論じたのが本書であるようだ。
 
その「型」というのが、「GISOV」というもので、図式化すると
 
①G:GOAL(ゴール:目的、目標)
②I:ISSUE(イシュー:課題)
③S:Solution(ソリューション:解決策)
④O:Operation(オペレーション:実行計画)
⑤V:Value(バリュー:付加価値)
 
ということで、最後の⑤があるのが、独自なところ。そして、「V」が付加されているところが、通常のコンサルによる仕事術とは違うところで、なんといっても
 
私は「フレームワーク」「テンプレート」と「型」とは、少し意味が違うと考えています。
(略)
「フレームワーク」「テンプレート」はあくまでもツールにすぎません。確かに便利なのですが、必ずしも仕事の本質を学ぶことができるわけではないのです。提案がまさにそうです。「フレームワーク」に事例を当てはめただけの提案なら、「誰でも」できます。「フレームワーク」とはそういうものです。しかし「誰でも」できるような提案に価値はあるのでしょうか。そのレベルの提案なら、誰かがすでにやっているはずでしょう。(P51)
 
といったあたりは、クライアントの立場で、いつもコンサルから煙に巻かれている当方としては、溜飲が下がるところ。というのも、クライアントも横のつながりがあるから、よその会社のプレゼンで、自分のところに来ているものと同類のコンサル提案の見ることはよくありますからな。
 
で、本書は「GISOV」の型に沿ったガチガチのシゴト術が述べられるかというと、そうでもなくて
 
「どうやったら承認してもらえるか」を考えるよりも、「却下されるとしたら理由は何か。どうやったらその理由をなくすことができるか」と考えるほうが、提案をブラッシュアップする方策が具体的になる(P125)
 
ポイントは
①相手のことを徹底的に知る
②「相手によくなってもらいたい」という動機を忘れない(P125)
 
とか
 
「プロジェクトが成功する要因は、キックオフのときに、成功できると思っている人たちが集まっていること」(P130)
 
はじめてのことを「やってみようか」「それならできるかも」と感じさせ、さらに継続するために重要なのは、ハードルの設定の仕方。そのポイントは
①仕事の「型」に沿っており
②すぐに成果が目に見えて
③現状での負荷が大きくない(P132)
 
といった実践的なところが多いのは良いですな。
 
また、最初に「転職のノウハウを知りたい向きには・・」と書いたのだが、それは、転職するためのノウハウは出てこないよ、という意味で、実は、転職で一番大事な、転職した後の頭角の出し方として、
 
・社内で新しい提案をするタイミングは、ひと通り、既存の仕事やプロジェクト、作業を終えたときです。少なくともワンクールの仕事は、そのまま受け入れてやってみる。提案はそのあとです(P148)
・新しい会社に入ったら、まずは既存の仕事、あるいは仕事の進め方や流儀を尊重する。しかし、見えないところでは、ゴールとイシューを発見する(P149)
・イシューを見つけるために有効な視点は「大きな仕事やプロジェクトを、小さく分割してみること」(P151)
・転職先で、できるだけ早く「新参者」から脱却するためには、「売上げアップ」よりも「時間短縮」のほうが成功しやすい(P154)
 
といったものや、新規プロジェクトがスタートできない主要な理由の一つである「上司のやらない理由」を潰す方法として
 
・「何をやるか」も大事だが、有効なのは「何をやるとどれだけ成果が出るのか」を必ず数字で示すこと
・仮にうまくいかなかった場合の「逃げ道(バックアップ)」も用意しておくこと(P164)
 
といった、転職経験の豊富さを活かしたアドバイスは秀逸である。
 
さて、転職云々は別として、およそ全てのビジネスマンが、強制的に、社内環境、労働環境が、「転職」と同様に大激変することがある。そう「定年」である。「再就職後」を希望するビジネスマンは、誰もが新しい場所で、能力発揮と結果を出すことを求められるし、結果を出すことを望んでいるはず。転職希望社だけでなく、「そろそろ・・」のビジネスマンも読んでおいたほうがよいのかもしれんですね。
 

「デキる」(と言われている)人への、辛口アドバイス — 小倉 広「自分でやった方が早い病」(星海社新書)

ヤリ手と言われる人ほど、部下のやっていることが、要領が悪く見えるという悪癖を抱えがちで、つい口出しをして冷たい目でみられたり、部下から仕事をとりあげたり、といったことをやりがちなもの。
そうした「デキる」(と言われている)上司へのアドバイスが本書。
 
構成は
 
はじめに 「自分でやった方が早い」という病の恐ろしさ
第1章 病が進行すると「孤独な成功者」になる
第2章 病を克服すると「幸せな成功者」になれる
第3章 病の根本にある「自分さえよければ」という考え方
第4章 「自分でやった方が早い病」への処方箋
第5章 「自分でやった方が早い病」が再発しないために
おわりに 「自分でやった方が早い」の正体は「自分でやった方が遅い」
 
となっていて、本書によれば
 
この病にかかっている人は、平気でまわりの人の悪口を言います。まるで自分は違うと訴えたいかのように、堂々と言います。嬉しそうに、ドヤ顔で言う人もいます。
しかし、勘違いしてはいけないのは、まわりの人のレベルは自分のレベルだということ。自分のレベルが高くて、まわりのレベルが低いと思っていること自体が勘違いです。優秀な人が集まって来ないのは、あなたが優秀なリーダー的存在ではないからです。ろくでもない部下しか集まって来ないのは、あなたがろくでもないリーダーだからです。
 
ということらしく、「自分でやったことがはやい。」と思いだしてそれを喧伝し始めたら、要注意というところであるらしい。そういわれれば、「自分がやったほうが・・・」という口癖の「デキる人」というのは、当方の周囲で幾人か見受けられるのだが、総じて本人が優秀でも、徐々に干からびたりしてしまうことが多くて、そこは、その人の周囲に「人」が集まらなくなり、「人」からもたらせられる情報も枯渇し、「人」の援助や応援も少なくなるからであるようだ。
 
そして、チーム全体のパフォーマンスを考えると、一人のプレイヤーのパフォーマンスがいかに高くても、チーム全体が力をつけている場合に比べると、どうしても持続力や永続性の面で劣る場合が多く
 
一人の百歩よりも、百人の一歩のほうが、両輪がうまく回る仕組みになっていると言えます。
外部環境適応で言えば、百人が一歩を踏み出しているのですから、変化の激しい外部環境に適合しているでしょう。
 
といった状態をつくることが、組織全体にとって最適解であるようだ。
とはいうものの、今まで「デキる」と言われてきた人が「人に任せる」という境地になり行動を示すのは、そう簡単ではなく
 
「自分でやった方が早い病」を克服して、まわりの人と成長していくことに決めたあなたは、もう「エースピッチャー」ではありません。
昔の快感が忘れられずに、いつまでもマウンドに登り続けていれば、若手のピッチャーが成長しません。
若手の活躍できるチャンスをみすみす奪っていることに他ならないのです
 
「我慢」が必要なのです。
一時的にトラブルが多発しても、子どものことを信じて待つしかありません。40%のパワーで我慢していれば、いずれ子どもは少しずつ変わっていきます。
本当に徐々にではありますが、プラスに向かっていくのです。
 
といった風に、今まで自分のパフォーマンスを挙げてきた手法とは、視点の異なる手法が必要となるようだ。そして、さらには
 
会社の中は、ビギナーコースです。
つまり、任せるけれど、すべて見ているし、細かくチェックもする。
一挙手一投足を眺めて、脇からハラハラしながら見守る必要があます。
いざとなればすぐに助けを出せる態勢を整えておくわけです。
 
まわりの人や部下に仕事を任せると楽になる。
そう勘違いしている人も多いのですが、それはまわりの人が一人前だったり、部下が立派に成長してからの話です。
最初は、必ず仕事量が増えるので、任せた本人の負担も大きくなります。
 
ということらしいので、「人に任す」というのもスムーズにやるのは、結構骨が折れるものである。
 
ただまあ、
 
伸びている会社の社長さんには共通点があります。「忙しい」と言わない。また、いつも余裕があって、ニコニコしている、ということです。
伸びている会社ほど仕事は多いはずなのに、そのトップである社長が余裕の表情を浮かべている。この謎ももちろん「自分でやった方が早い病」が絡んでいます。伸びている会社のリーダー、マネージャーはきちんと任せることができているのです。
 
ということであるので、「自分でやった方が早い病」の克服は、成長を目指す「個人」や「企業)に必須のようだ。本書を読んで、治療をがんばってはいかがでありましょうか。
 

「新しいこと」を始めるには、良い意味で「鈍感」になることが大事

最近読んだ「社長の「まわり」の仕事術」の「サニーサイドアップ」のところで、「良いな」と思ったフレーズがある。それは
 

 

これはどんな組織でもあると思いますが、何か取り組みを進めると懐疑的だったり、否定的なことを言われたりすることもありますよね。そういうときに、直接受け止めると、疲れるし辛いわけです」
  だから、絶対にいいものだ、本気でやるべきだ、と判断したものに関しては、〝鈍感〟になることにしている。
(略)
「それは、本当に鈍いんじゃなくて、自分を鈍く仕上げていくということです。それで丸く収まることがすごくたくさんある。全部にいきり立って、こうあるべき、こうじゃないか、というスタイルもあるのかもしれませんが、そうではないポジションを取るべきだな、と思っています。」
というもので、新しいものに常にチャレンジしている同社の中枢にいる人らしい発言である。
とかく、目新しいことや、今までのやり方を変えようとすると、有形無形の抵抗に遭うのは、どこの組織でもあることで、ともすると、そういった内部の抵抗を打ち破ることのほうが、新規事業をやることより難しい場合すらある。
とりわけ、その抵抗は「客観性」などといったもっともらしい衣をまとってやてくるから、その撃破に結構力がいって、どうかすると面倒になって、新規プロジェクトをやる気が失せて、プロジェクト自体が雲散霧消してしまうことすらある。
そういう時に、この「鈍感になる」というアドバイスはとても有益である。そして、この「鈍感になる」ということは、けして、「抵抗を無視する」、「傍若無人に振る舞う」ということを意味しているのではなくて、プロジェクトの欠陥の指摘については謙虚に受け止めつつ、漠然とした不安感や、新規なものの考案者に対する嫉妬については、キレイに無視する、といった感じで捉えるべきであろう。
「客観的に分析すると」や「現実を直視すると」といった、新規プロジェクトに対する批判は、「主観的で」「個人的な思い込みと夢想」に根ざしていることがよくあるもの。いつも明晰であるよりも、適度に「曇って」いて、「鈍い」ことが、突破力をつけるには大事なように思えてきますね。
 

自分の優秀さを誇示しない「ひと味違うリーダー」のあり方を考えてみる

Business insiderで「優秀な人が、”優秀なボス”になるために不可欠なこと」と題して、同僚によるリーダーの評価がIQが128を超えると落ち始めるといった事象から、高い能力を持つ人が「優れたリーダー」になる秘訣として
・常に勝とうとしない
・常に正解であろうとしない
・常に自分の優秀さを見せつけようとしない
といったことをあげている。
さらに、「私はだれかがヒーローになることを手助けするためにここにいる。自分がヒーローになるためにここにいるわけではない」といった気持ちが大事だとアドバイスしている。
とかく「リーダー論」といえば、統率力を磨き、正しい方向性を自らが探し、先頭に立って動く、といった姿を推奨しがちなのだが、それとは違う「リーダー」が模索される時代になってきているのかな、と思った次第。
これは、最近読んだ「自分がやった方が早い病」のいくつかのエピソードとも共通するもので、「自分でやること」が一見効率的に見えて、かえって非効率になる場合がある、ということの一例でもある。
とくに「リーダー」のパフォーマンスという視点で考えた場合、リーダーの個人的能力を中心に達成される成果と、チームとして達成される成果が同じである場合、後の「再現性」という点では、チームとしてのそれに軍配を挙げざるを得ない。前者の場合は、リーダーがこけたらそれまでだが、後者の場合はリーダーがこけても復元力が働いて、全体で同じパフォーマンスを達成する可能性が高いからである。
ただ、そうは言っても、リーダーになろう、あるいはそのポジションについた人は、今まで先頭に立って動き、他人より優れたところを見せ、成果をあげてきたからこそ、そのポジションに就いたという経緯もあるから、前述のようなリーダーのような振る舞いは、そう簡単にはできるものではない。
さて、どうしたらいいのか、というところで、ふと司馬遼太郎の「この国のかたち 1」に収録の「高貴な”虚”」の
大概大概(テゲテゲ)という方言が薩摩にある。テゲだけでもいい。
「将たる者は、下の者にテゲに言っておく」
そういう使い方をする、薩摩の旧藩時代、上級武士にとって配下を統御する上で、倫理用語ともいうべきほどに大切な言葉だった。
上の者は大方針のあらましを言うだけでこまごましたさしずはしないのである。
(略)
マスタープランを明示したあとは部署部署をその責任者にまかせてしまい、自身は精神的なー高貴なー象徴性を保つだけで終始する
というくだりを思い出した。時代が求める「リーダー像」は、「織田信長型」から「西郷隆盛型」へと志向が変わりつつあるのかもしれない。幕末の薩摩の「英傑」たちに学んでみてもいいかもしれないですな。

「お客を主語にする」の本当の意味とは何か?

先だってレビューした「社長の「まわり」の仕事術」で組織運営に関して、「おっ」と思った記述があったので、ちょっと引用。それは、中川政七商店のデジタルコミュニケーション部部長の緒方恵さんのインタビューで
 
「会社にはいろんな仕事が発生するわけですが、『これは社長はどう思うかな』という主語で議論がなされたりしたら危ないですね。お客さまを主語にしないといけない。内向きの話が多くなる企業は、組織として黄色信号です」
「あそこの人材配置悪いよね」「あっちのチーム、ラクしてない?」なんて声がでてくると、危険だという。
「それは、お客さまを主語にすることで、けっこう防げたりするんです。大事なことは、工芸を元気にすることであり、社長を納得させることではない」
 
というところ。
 
これは特にトップダウンで進んで、うまくいっている組織の落とし穴として気をつけたいところですね。もちろん、トップダウンで組織を活性化し、時代をとらえて躍進したことは、トップの眼力とリーダーシップによるところが大きいのだが、一時期をリードした人でも、時を経ると奢りもでるし、時代とのズレ・ブレがでてくることは避けがたいこと。組織全体から見ると、その価値判断の基準を、いつまでもトップのものだけに頼ってしまうことで、時代の変化を取りこぼして、組織が衰退してしまう恐れがでてくる。
 
この時代とのズレが出ていないかどうかを、「お客さま」という視点から点検するということなのだが、ここは、ありきたりの「お客さま」目線で、といったことではなく、「多様な価値観でとらえること」の重要性としてとらえるべきだろう。
というのも、状況悪化が少ないときに、従来の価値観に基づいた「お客さま目線」では、時代や世間の変化に気づかない事が多い。この段階で異変の兆候をつかむには、いろんな目線で物事を捉える、分析するといったこと、すなわち、「はぐれた」視線から今の状況を分析するといったことでしか発見できないものである。
 
好調なときには、人知れず衰退の種が忍び込んでいるもの。そんなときほど「越境」した視点から捉え直すことが必要なんでしょうね。