カテゴリー別アーカイブ: 仕事術

アメリカ流フロンティア精神で前へ前へと進んでいく方法論 — 「やり抜く人の9つの習慣ーコロンビア大学の成功の科学」(Discover)

アメリカの成功に向けたステップを解説するビジネス本は、日本のそれに比べて妙な説教臭さや求道精神がないのが好みである。
本書もそうしたアメリカ流ビジネス本のスタンダードのようなつくりで、一種の明るさをもって、これから仕事や人生にどう向うかってなことを考えさせてくれる。
 
構成は
 
第1章 目標に具体性を与える
第2章 目標達成への行動計画をつくる
第3章 目標までの距離を意識する
第4章 現実的楽観主義者になる
第5章 「成長すること」に集中する
第6章 「やり抜く力」を持つ
第7章 筋肉を鍛えるように意志力を鍛える
第8章 自分を追い込まない
第9章 「やめるべきこと」より「やるべきこと」に集中する
 
となっていて、目次を見てわかるように、人生ないしは仕事でどういう目標を設定し、それをどう達成するか、といったアメリカらしいプラグマティックなつくりである。
 
それは
 
目標について、私がいつも最初に教えることーそれは「具体的にしなさい」ということです。例えば、「やせたい」と思うのならば、目標は「やせる」ではなく「5キロやせる」とすべきです。
 
とか
 
「これから思考」を重視して、目標までの距離を測ると、モチベーヨンは維持されます。さらには、「これからやるべきこと」を意識することでモチベーションを高めることもできます。
 
「望むことは簡単にできる」「ほしいものは簡単に手に入る」と感上げると失敗の確立が高まるという研究があります。
 
といったところにも見て取れる。
 
目標を設定するときは「今、何ができるのか」ではなく「これから、何ができるようになりたいか」を考えるようにしてください。
 
 
「証明ゴール」の問題点は、まったく未知の課題や難しい課題に取り組むときに、逆効果になる可能性があることです。
 
「成長すること」にフォーカスすると「仕事の意味」が変わってきます。
 
といったところは、とかく求道的になって、新しい課題がでてくると縮んでしまう”日本”のやり方とは対象的におおしろい。
 
そして、こうした楽天的なビジネス本で嬉しいのは、打ちひしがれているときや、失敗して失意の中にいるときに、なんとか前へ立ち上がっていく力を注入してくれる所で
 
行動を変えたいのなら「やめたいこと」を考えるのではなく、「やりたいこと」「やるべきこと」を考えるのです。
 
成功とは「正しい選択」「正しい戦略」「正しい行動」によってつかむものです。決して生まれつきのDNAで決まるものではありません。
 
といったところは、とかく失敗を考えて縮みこんでしまいがちな我々の行動と精神を鼓舞してくれる一冊ですね。

手帳やノートは文字だけで構成するものではない — 「手帳で楽しむスケッチイラスト」(エムディエヌコーポレーション)

手帳術、ノート術ってものは、ちょっと深みにはいりかけたあたらりが一番面白いような気がしていて、はまりこむところは、人によってはスタンプであったり、シールであったりとい千差万別ではあるのだが、憧れつつもなかなか敷居の高いのが、「イラスト」というやつ。
 
本書は、そうした「イラスト)をノートや手帳にばりばり使っている人たちの実際の写真などを紹介しながら、レポートしてくれる。
 
構成は
 
第1章 達人の手帳を大公開
第2章 すぐに描ける・使えるイラストの描き方
第3章 スケッチ手帳を使いこなすためのヒント集102
第4章 相棒探しのために知っておきたい基本の「き」
 
となっているのだが、ボリューム的には第1章が一番多く、第2章以降は、まあ、技術論を少々プラスしました、といった感じで読んだほうがよさそうだ。
であるのだが、こうした手帳術とおいうものは、くだくだと理論編は続く、というのが一番退屈なもので、こうした実際の「達人」たちのノート、手帳がビジュアルに見えるものが最も楽しい「手帳本」になりうると確信している。
 
紹介されるのはイラストレーター、造形家といったところがメインなので、コクヨのノートシリーズや日経アソシエの手帳特集といったところとは一線を画すのであるが、やはりイラストのプロたちの手帳は、実際に真似できるかどうかは別として楽しいのは事実。
 
どこまで自分の手帳やノート術に取り込めるかは別として、「絵心」あふれる技の数々は見ていて楽しいですな。

ポスト・イットを使った仕事の作法。適材適所でね。 — 嶋ひろゆき「仕事はすべて「ポスト・イット」で片づく」(かんき出版)

仕事の効率化のアナログ・ツールは、綴じられているものとそうでないものとに分けられるのだが、そのうち「綴じられていないもの」の主流は、十数年前は情報カードであったようだが、今はポスト・イットがその地位を継承している。しかも。ポスト・イットはサイズから色、フォーマットまで多種多様なものが販売されるようになっているせいか、「綴じられているもの」の主要勢力であるメモ帳の地位も脅かしそうな勢いであるような気がしている。
 
構成は
 
プロローグ ポスト・イット仕事術の仕組み
PART1 グチャグチャの頭を整理する「1分ポスト・イット 思考術」
PART2 どんどん時間と結果を生み出す「ポスト・イット 時間術」
PART3 コンサル思考が身につく「ポスト・イット 問題解決術」
PART4 高い目標も難なくクリア「ポスト・イット 目標達成術」
PART5 利益を生み出す黄金の「ポスト・イット アイデア術」
PART6 仕事が10倍速になる「ポスト・イット デジタル活用術」
エピローグ 読書、会議、資料作成にも使える「ポスト・イット応用術」
 
となっていて、メインは、アイデア出し、時間管理、タスク管理、資料作成といったビジネスの「肝」のところをポスト・イットで片付けていこうというもので、分類的的には「テンミニッツ」をはじめとする「フセン仕事術」の一族といっていい。
 
いくつか「ふむふむ」と思ったものを簡単にレビューすると
 
まずは「長期のプロジェクトの管理・スケジュール立て」
①まず、日付の一番下にプロジェクトのゴールを設定
②次にゴールを達成するのに必要な作業をさかのぼってポスト・イットに書き出す。それとは別のその作業の締切の日時をポストイットに書き出す
③それをA3ないしA4用紙に、貼り付ける。
Post it 01
④次に自分だけでなく、プロジェクトに関係する他者、他部門の作業もポストイットに書き出し、貼り付ける。
⑤ポスト・イットでつくったスケジュール表をコピーして情報共有
 Post it 02
⑥コピーが終わったポストイットははがして、手帳の該当する日付のところにToDoとして貼る
 
といったものや
 
①気がついたこと、役に立つと思ったことを、ポストイット1枚に1項目づつ書き出す
②読み終わったら、全体を眺めて、ダブっていたり意味が同じものは1枚にまとめる
③ポストイットを手帳やノートに貼る
④これを写真にとるか、コピーして読書録にする
⑤このリーディングメモのうち最も大切だと思うものを手帳に貼っておく
 
という「ポスト・イット読書術」や
 
エピローグのところの
 
①ポストイットに目次(資料の骨組み)を書き出す
②見出しや図表の位置をポスト・イットで決める
③PCで資料を作成
 
といった「ポストイット資料作成術」のあたり。
 
いずれも、ポストイットの利点である「張り替え自由」「追加・廃棄自由」といったメリットを活かした仕事術であるといえる。
ポスト・イットを使っての仕事術やメモ術は、散らかって散逸することがある、とか、保存をどうするか、といった課題があって、ノートにかわる汎用性が獲得できているとは言えない状況のように思う。ある程度、利用シーンを考えながら、PCやノートと併用するのが一番良いと思えていて、例えば「頭の中の散らかったアイデアなどを整理する」といったバラバラなものの重複をなくしてまとめあげていく、といった作業、仕事に向いているように思う。
 
ともあれ、こうした仕事のTipsは一つの方法で絞りこむというよりは、様々な利用シーンに応じて、一番適したTipsを使えば良いと思っているので、ポスト・イットだけにツールを限定して、ノートやメモはゴミ箱へ、といった急進に走らず、適材適所で楽しみながらツールを使い分けるのがよろしい気がいたしますな。その意味で「すべて」ポスト・イットで対応できるかもしれないが、「全て」やる必要もないような気がいたしますな。

トヨタ流の仕事術である”紙一枚”の「思想」のところが学べるビジネス本 — 浅田すぐる「トヨタで学んだ「紙1枚」にまとめる技術」(サンマーク出版)

ひと頃、仕事術は「猫も杓子もトヨタ、トヨタ」の時があって、それは、「猫も杓子もアップル、アップル」「猫も杓子もGoogle、Google」「猫も杓子もサムスン、サムスン」と同じ「流行り廃りもの」であるのだが、少なくとも、このA3ないしはA41枚で仕事の書類をまとめるという手法は、なかなか真似出来ない「カイゼン」に比べ、個人レベルでも導入できる、仕事術のスキルとして評価してよい。

 

本書の構成は
 
 
Chapter1 なぜ、トヨタはナンバーワンなのか
 
Chapter2 トヨタで学んだ「紙一枚」にまとめる技術〜基本編〜
 
Chapter3 トヨタで学んだ「紙一枚」にまとめる技術〜応用編〜
 
 
となっていて、Chapter1は、仕事のもろもろを「1枚の紙」にまとめるメリットが説明され、Chapter2では「エクセル1」というフォーマット、Chapter3では、エキセル1の応用形でもある「ロジック3」のフォーマットと実際の活用方法が解説されるという構成。
 

 

先だってレビューした「高橋政史「すべての仕事を紙1枚にまとめてしまう整理術」」と少々被るところもあるのだが、そこは同じ「紙一枚にまとめる」というコンセプトを扱ったビジネス書ゆえ致し方ないところか。
 

 

ちょっと意外だったのは
 
トヨタでは通常、A3用紙を横にシて使います。ふだんお業務ではA4サイズの用紙を使うことが大半でしたが、企画症やスケジュール管理等の複雑な案件に関しては、より一覧性に優れたA3サイズを用いました
 

 

というところで、トヨタ式の書類作成というと必ず「A3」ということが喧伝されているのだが、そこはやはり柔軟に場合・状況に応じてだよな、と安心してみる。
 

 

で、ちょっと注意を要するのは、「まとめる技術」とあるように、本書は、トヨタのプレゼン資料のまとめ方とか、ビジュアルな構成の仕方をレクチャーするものではなく、あくまでも発想を「トヨタの紙一枚にまとめる方式」の理念にそってまとめる方法のレクチャーである。

 

「エクセル1」にしろ、「ロジック」3」にしろ、フォーマットそのものは複雑なものではなく、その使い方が「ほぉ」とうならせるもので、しかもいくつかのビジネスシーンでの実際の使い方が紹介されているところが肝である。

 

その意味で、本書を読んだだけでは、あくまで手法の知識を得たというレベルに留まるので、実戦で磨きをかけないと本物にはならんわな、と「畳の上の水練」にならないよう気をつけねばなるまい。
 

 

ま、「エクセル1」や「ロジック3」のフォーマットを細かくレビューするのは、営業妨害になろうから、詳しくは原書で確認願いたいのだが、特に「エクセル1」はちょっと試してみようかなと思わせる、手軽でありながら実効のありそうな仕事術である。お試しあれ。

「努力」はアメリカ・日本共通の処世訓 — アンジェラ・ダックワース「GRIT やり抜く力ー人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける」(ダイヤモンド社)

きらびやかな才能の磨き方や、パンチのあるプレゼンの力の伸ばし方など、キラキラ光るビジネスの能力の鍛え方をコーチするビジネス本は多いのだが、今回、本書で注目し推奨するのjは「古くて良き」能力である。

構成は

PART1 「やり抜く力」とは何か?なぜそれが重要なのか
 第1章 「やり抜く力」の秘密ーなぜ彼らはそこまでがんばれるのか
 第2章 「才能」では成功できないー「成功する者」と「失敗する者」を分けるもの
 第3章 努力と才能の「達成の方程式」ー 一流の人がしている当たり前のこと
 第4章 あなたには「やり抜く力」がどれだけあるか?―「情熱」と「粘り強さ」がわかるテスト
 第5章 「やり抜く力」は伸ばせる―自分をつくる「遺伝子と経験のミックス」
 
PART2 「やり抜く力」を内側から伸ばす
 第6章 「興味」を結びつける―情熱を抱き、没頭する技術
 第7章 成功する「練習」の法則―やってもムダな方法、やっただけ成果の出る方法
 第8章 「目的」を見出すー鉄人は必ず「他者」を目的にする
 第9章 この「希望」が背中を押す―「もう一度立ち上がれる」考え方をつくる
 
PART3 「やり抜く力」を外側から伸ばす
 第10章 「やり抜く力」を伸ばす効果的な方法―科学では「賢明な子育て」の答えは出ている
 第11章 「課外活動」を絶対にすべしー「1年以上継続」と「進歩経験」の衝撃的な効果
 第12章 まわりに「やり抜く力」を伸ばしてもらうー人が大きく変わる「もっとも確実な条件」
 第13章 最後にー人生のマラソンで真に成功する
 
となっていて、後段のPART3でわかるように、自分で自分の能力を伸ばすビジネスノウハウ本ではなく、もともと教育書として書かれたもの。
 
本書で説かれる一番大事なものとは、表題のとおり「GRTIT やり抜く力」であるのだが、それがなぜかというあたりは
 
ウェストポイントの入学審査では、志願者総合評価スコアがもっとも重要な決め手となっていたが、「ビースト」の厳しい訓練に耐え抜けるかどうかを予想するには、残念ながらあまり役に立たなかった。
それどころか、志願者総合評価スコアで最高評価を獲得した士官候補生たちは、なぜか最低スコアの候補生たちと同じくらい、中退する確率が高かった。
 
といったように、アメリカの名だたる陸軍士官学校の実例などの実例やインタビューで実証していくのが、アメリカの論文らしいところ。
 
アメリカのビジネス書といえば、GoogleやFacebookなどなど若くて才能あるアントレプレナーをとりあげた「天才」「タレント」のビジネス手法を紹介して、そのうち少しばかりでも真似出来ないか、といったものが目立つのだが、こうした「努力」「積み重ね」「たゆまない力」といったところを強調するものが評価される場面もあるのだな、とアメリカの多様な評価を見直してみる。

 
そういえば、ハリウッドのヒット映画のパターンの一つは「外敵に対し、才能のない(若い)人が、努力・修行の末、敵を倒す」ってのがあることを思えば不思議でもないのかもしれない。
 
一方で、
 
偉業を成し遂げた人たちに、「成功するために必要なものは何ですか?」とたずねると、「夢中でやること」や「熱中すること」と答える人はほとんどいない。
多くの人が口にするのは「熱心さ」ではなく、「ひとつのことにじっくりと長いあいだ取り組む姿勢」なのだ。
とか
時間の長さよりも「どんな練習をしているか」が決め手になることだった。
ほかのどんな練習よりも「意図的な練習」が、大会を勝ち進むための要因になっていることがわかったのだ。
と「努力の大事さ」と「特別な練習」を強調するとともに
自分の興味があることを掘り下げるにしても、練習に励み、研究を怠らず、つねに学ぶなど、やるべきことは山ほどある。
だからこそ言っておきたいのは、好きでもないことは、なおさらうまくなれるはずがないということだ。
保護者や、これから親になる人や、年齢を問わず親以外の人たちにも、伝えたいことがある。
それは、「必死に努力する以前に、まずは楽しむことが大事」ということだ
と「刻苦勉励」ばかりを主張しないところが現代的であるところかな。
 
もっとも、
おそらくパットナムには想像に難くないはずだが、家庭所得とグリット・グリッドのスコアには、懸念すべき相関関係が見られる。
私の研究に参加した高校3年生のうち、国から給食費の援助を受けている生徒たちは、恵まれた家庭の生徒たちにくらべて、平均でグリット・グリッドのスコアが1ポイント低いことがわかった
といったように、「才能」が成功の秘訣ではないにせよ、「やり抜く力」をつくるには「環境」が影響するところも大きいといったところも指摘されているので、あらゆる環境に人に平等の理論ではない(所得の低い環境の人たちは、そうでない人よりGRITを身につけるに一層のちからが必要になるということだな)のは注意が要る所。
 
なんにせよ。成功の決め手は「才能」だけではない、という提案は、キラキラした輝きを見せる同僚の横で、力を落としているフツーの人達への一つの光明ではある。さらには失敗して落ち込んでいるフツーの子どもたちにどうアドバイスしていくかの道標にもなるだろう。
 
「努力」というのは日本もアメリカも共通の処世訓であるのですね。

「最速」「Google」という言葉に弱いビジネスマンに捧げるビジネス書 — ジェイク・ナップ「SPRINTー最速仕事術 あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法」(ダイヤモンド社)

「最速」という言葉は、常日頃、タスクに追われているビジネスマンには、一種の「キラー・フレーズ」で、この言葉がチラとでも見えると、思わず手に取ってしまうのは、一人二人ではあるまい。
本書はGoogleのデザインパートナーをしていた人たちによるもので、「スプリント」とは「個別の作業、プロトタイプ作成の時間、逃れられない締切をワークショップに加えて、開発したプロセス」「アイデアをプロトタイプのかたちにすばやく落とし込み、それを顧客としてテストすることによって、たった5日間で重要な問題に答えを出す手法」で「デザインの短距離走(スプリント)」として名付けられたもの。
 
本書の構成は
 
INTRODUCTION スプリントとは何か?
SET THE STAGE 準備をする
 第1章 「課題を見抜く」
 第2章 「オーシャンズ7」を決める
 第3章 「時間」と「場所」を確保する
MONDAY 目標を固める
 第4章 「終わり」から始める
 第5章 「マップ」をつくる
 第6章 「専門家」に聞こう
 第7章 「ターゲット」を決める
TUESDAY 思考を発散させる
 第8章 「組み替え」と「改良」に徹する
 第9章 「スケッチ」する
WEDNESDAY ベストを決める
 第10章 「決定」する
 第12章 「ガチンコ対決」をする
 第13章 「ストーリー」を固める
THURSDAY 幻想をつくる
 第13章 「フェイク」する
 第14章 「プロトタイプ」をつくる
FRIDAY テストをする
 第15章 「現実」を知る
 第16章 「インタビュー」をする
 第17章 「学習」する
おわりにー「仕事のやり方」が根本的に変わる
 
となっていて、1週間で製品開発ないしは既存の製品・サービスの改善を仕上げるといった内容。
 
ただ、
 
過去のワークショップの結果を見直してみると、ある問題に気づいた。ワークショップのあとで実行に移され、成功したアイデアは、喧々囂々のブレーンストーミングで生み出されやものではなかったのだ。最良のアイデアはちがう場所で生まれていた。
 
といった刺激的な言葉で始まるように、ここで提案される手法も結構刺激的である。
 
それは
 
普通に考えれば、自分のソリューションを紹介し、そのねらいを説明する機会を、誰もが公平に与えられるべきだ。
たしかにその通りだが、スプリントではそうしない。
アイデアを説明することには、いろんな弊害がある。
感動的な主張をした人や、カリスマ性のある人の意見に流されがちだ
 
とか
 
民主主義は国をまとめるにはいいが、スプリントには向かない
 
とか
 
優れているが相容れない2つのアイデアがあるとき、どちらか一方を選ぶ必要はまったくない。
両方のプロトタイプをつくって、金曜日のテストで顧客の反応を見ればいい
 
などといったフレーズでも明らかで、結構小気味いいのは確か。
 
もっとも、本書で取り上げられている例は、ブルーボトルコーヒーの販売成績UP、「スラック」というグループウェアの販促といったものであるし、短期間に、ひとつのプロジェクトを発端からある程度の仕上げ(顧客テストまで)をするまでの仕事の手法として応用範囲は広いことは間違いない。
 
ただ、この「スプリント」という手法、筆者群はGoogleベンチャーの出身ということもあって、IT企業色が強いし、「ドット投票」など、当方の属するような古いタイプの企業組織では、導入にはかなり説得作業が要るよなと思わせるものもある。さらには1週間の間、プロジェクトメンバーの拘束を職場風土が許容してくれるかな、といった懸念がでるのも事実。全ての企業に、本書の全ての提案が適用可能ではないだろうなということを考慮すると、まあ、翻案しながらやってみたら面白そう、といった感じでまずは進めるのがよいかもしれない。
 
なんにせよ、本書によれば
 
スプリントは当たれば大きい、リスクの多いソリューションをテストするのに一番向いている。
だから普段とは優先順位を逆にして考えよう。
成功まちがいなしの小さなチャレンジなら、わざわざプロトタイプをつくる必要もない。
そういう楽勝案はパスして、大きく大胆な賭けを選ぽう。
とのこと。
 
食わず嫌いせずに、どんな課題解決でもいいので、あれこれ試してみるのが一番本書の目的に沿うのかもしれませんね。
 
 
ー追記ー
 
大きなプロジェクトだけでなく、巻末のQ&Aによれば、会議での小さな決定や問題が行き詰った時でも「どうすればメモ」(P111)、「4段階スケッチ」(P159)、「メモって投票」(P207)、「顧客インタビュー」(P273〜)が有効であるそうなので、詳しくは原書で確認の上、試してみてくださいな。

「知的作業」の要点は「紙一枚」にあり — 高橋政史「すべての仕事を紙1枚にまとめてしまう整理術」(クロスメディア・パブリッシング)

「仕事、勉強、プライベートの趣味や日常生活、整理をしないといけない場面はどこにでも存在しています。
本書では、そうしたいろいろな意味での整理を、すべて紙1枚でできるようになる。その方法を紹介しています」
という、結構タカピーな宣言で始まっているのが本書。
 
ただ、頭の中を整理する、仕事で提案することを整理する、会議の内容を整理するといった「仕事上の整理案件」はビジネスの要であるともに、永遠の「課題」でもあるので、書き出しのキャッチ力は非常に高いのは間違いない。
 
構成は
第0章 紙1枚で整理するとはどういうことなのか
第1章 思考力・仮設力を磨き上げるSの付箋
第2章 インプット・アウトプットの効率を劇的に高める16分割メモ
第3章 本を一冊15分で読むキラー・リーディング
第4章 いらないものをシンプルに捨てる1枚引き継ぎマップ
第5章 会議時間を半分にするマッピング・コミュニケーション
第6章 言いたいことが誰にでも伝わる3つの型と1・2・3マップ
第7章 どんな相手も納得させる物語プレゼンテーション

 

となっていて、1章ごとにメソッドが提案されるので、1〜7章で、7つの手法が示されるとともに、それに使用する紙1枚の「フォーマット」(「図」化されてます。)が提案されるので、1冊で一提案みたいなビジネス・ハウツー本が結構ある中で、おトクといえばおトク。

 
いちいち紹介していると完全に営業妨害になるので、当方が本書を購入する際に一番に気になって購入を決めた「キラー・リーディング」の手法を少し紹介すると(「フォーマット」は原書で確認してくださいね)
ステップ1>著者に何を聞きたいか、その本で何を得たいか、という「問い」を決める
 
ステップ2>目次や本文をザーッとめくりながらきーわーどとなる言葉を探す。キーワードは1つあたり20秒ぐらいのペースで抽出するが、数は16個まで。
 
 
ステップ3>本文を、設定した問いとキーワードに引っかかる箇所を探すように読む。読む時間はおおよそ10分間ぐらい。引っかかった箇所を例えば、付箋を貼るとか、アンダーラインを引くとかのアドバイスはないので、ここは応用範囲なのであろうが、10分間という時間を考えると手間のかかることはムリであろう。せいぜいページ数をメモするか、印をつけておくぐらいであろうか。
このステップの仕上げとして、16のキーワードの中から特に重要と思われるキーワードを選ぶ。
 
ステップ4>問いへの答えを1つのメッセージにまとめる。本書によれば
 
「こんな「問い」の切り口でこの本からそのエッセンスを結晶化すると、要はこのひと言」という具合です。
 
とのこと。
この方式であると、当然「問い」によって切り口が異なってくるから、その人のその時なりの読み方になってはしまうが、もともとビジネス書のどこが参考になると思うかはごく個人的な事柄なので致し方ないところであろう。
 
残りの6つの手法は、原書でぜひ確認をしてほしいのだが、いずれもかなり具体的な処方箋が示されているのは間違いない。どう使うかは「読み手」次第、というところでありましょうかね。

「食費バカ高世帯」への処方箋を仕事のオーバーフローに応用できる?

President Onlineで「「贅沢してない」食費バカ高世帯の常套句」という記事が掲載されている。

そこそこの収入がありながら赤字家計の世帯にアドバイスをするもので、食費がやけに高い家庭へのアドバイスがされているのだが、食費の高い家庭の特徴は「みんなが食べたいメニューを食べる」「食べたいと思ったものはその日のうちに食べないと気がすまない」「食べることに対して全く無計画」といった特徴があるようだ。

これって、仕事がオーバーフローを起こしている時によく似ていて、組織の受け入れ体制を感上げずに仕事をうけてアップアップしたり、メンバーがぞれぞれの思いで仕事を勧めまとまりがつかなくなっている状態と同じ。

この記事の処方箋は「現金主義」「1週間単位で支出を管理する」というアドバイスがされているのだが、これは仕事のオーバーフローに対処する時にも共通で

今の受け入れ体制に応じて、仕事を分割する、あるいは小分けにして片付けていく

ということが有効で、なによりの基本は、自らの組織のリソースをしっかり把握しておく、ということが基本でありますね。

タニタの社員食堂の存続は経営者のやせ我慢にあったのかも

先だって、とある会合で、タニタの系列の「ヘルスケアオンライン」のタニタ代表取締役の講演を聞いた。氏は、体脂肪計や社員食堂で云有名な、タニタの創業ファミリーの人であるだが、その講演の中のタニタ食堂についての話が印象に残ったので、感想も込めて記録しておこう。

タニタの社員食堂は、もともと体重のアドバイスを行う「ベストウェイト・センター」を会社全体の経営状況の悪化で閉鎖せざるをえなくなったのが発端。だが、当時の二代目社長の「(社員の)リストラはしたくない」という過去のトラウマにも根ざす強い意思で、社員食堂へと変化させたものらしい。

センターの職員のうち、転職とかが困難であったのが、管理栄養士で、その職場としての「社員食堂」であったらしい。ところが最近のタニタ食堂の高評価とは違って

・味が薄い(塩分が少ない)

・量が少ない

といったことで、社員の評判は芳しくなく、10年間、赤字であったとのこと。

それでも、アウトソーシングすることなく、内製化したままで存続させ、今の地位・評判に至っているわけなのだが、氏によると、存続させてきた理由の第一は「(社長が)とにかくリストラしたくなかった」とのこと。

まあ、真偽の程はよくわからないのだが、こうした経営者の一本気的な運営は、いろいろ評価はあろうが、大成功の一つの必須条件であるような気がする。

もちろん、一つの成功の影には死屍累々であって、タニタの場合も時流に一歩乗るのを間違えると経営圧迫の典型例として語られたのかもしれない。

しかし、こうした頑固さがないとうまくいかないことがあるのは、経営だけでなく、ビジネスをはじめとした人生のあちこちでよく聞かれることで、当方もこうした頑固さ、一途さは大事にすべきだな、と改めて感じ入る次第である。

さて、みなさんは、タニタ食堂の例にどんな啓示をうけますか?

ウォズアニック氏の「次の技術革新はアップルではなくテスラ」からに思う”「権威」になるとそこで止まり”ということ

C-netで、スティーブ・ジョブズとともにアップルを世界的企業にしたウォズアニック氏が「次の技術革新はアップルではなくテスラから」という記事を読む。

記事の本体はこちらを読んでいただきたいのだが、最初、技術革新がテスラからのなのは、そのCEOの尖り方の違い、つまり、ジョブズのいたころのアップルは技術革新力があったが、クックにはねー。イーロン・マスクぐらい尖ってみなよ、ということかと思っていたら

「Google、Facebook、Apple、Microsoftのように世界を変えてきた企業を見てみるといい。そしてTeslaもだ。こうした企業はたいてい若い人たちが始めている。大企業から生まれたところはない」(Wozniak氏)

ということが本筋らしい。一読すると「若いものの単純礼賛かよ」とおっさん世代は思いがちなのであるが、ここは、技術革新という海のものとも山のものともわからないものの実現に賭けられるのは、失うものの少ない「若い世代」が圧倒的有利である、ということであると当方は解釈している。つまり技術革新をするには、いろんなリスクと今までの価値観を壊さないといけないが、いっぱしの権威になって失って惜しいものがふえてくると、そんな乱暴なことは無意識にセーブしてしまいがち。なので、技術革新とか新しいものを創造するのは、精神的にも物理的にも、できるだけ身軽にするっていうのが秘訣、ということであろうか。

 

そうであるなら、年齢的に年をくっていて、新規事業に取り組む時間が少ないというハンデはあるにせよ、いかに自分を徒手空拳的なところにおけるか、というのが大事になるんではないでしょうかね。