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半藤一利「日本型リーダーはなぜ失敗するのか」(文芸春秋)

昭和史をはじめ近世日本の歴史評論の名手である半藤一利氏によるリーダー論。

リーダー論というものは、ビジネスの現場には付き物で、大概のビジネスマンが、出処進退あるいは何か組織内の自分の立ち位置や行動を起こす時や上司の批評をする時にそこかしこに顔を出してくるものではある。そういう時によくあるのが「戦国武将」や「三国志の英雄」になぞらえて人物批評をしたり行動を模索したりといったところで、太平洋戦争の際の◯◯司令官に、なぞという人はあまりいない。

構成は

第一章 「リーダーシップ」の成立したとき

第二章 「参謀とは何か」を考える

第三章  日本の参謀のタイプ

第四章 太平洋戦争にみるリーダーシップⅠ

第五章 太平洋戦争に見るリーダーシップⅡ

となっていて、近代史の語り手らしく、太平洋戦争の際の陸軍・海軍のリーダーたちを引っ張り出してきた、どちらかといえば反面教師的なリーダー論といっていい。

そのあたりは「参謀が大事」という日本型リーダー論の無責任な側面を指摘するとともに、「参謀」を『「軍事オタク養成機関」「軍事オタク」が優等生になった、と考えていい』(P85)といったあたりや日本の場合参謀の任命権は参謀総長がもっていたがアメリカでは大統領が軍事統帥権をもっていて強力なリーダーシップを発揮できた(P91)

といったところや

山本五十六連合艦隊司令官の欠点は「真の目的を部下と共有」できなかった点で、真珠湾攻撃を何のためにやるのかということを、もし機動部隊の指揮官に言い、その参謀たちにも言い、さらには作戦を統轄する軍令部の参謀たちにもキチッと伝えていたならば、太平洋戦争緒戦の戦い方は自ずと違っていたでしょう

といったあたりはかなり手厳しいのであるが、太平洋戦争という日本が負けた戦の中に数々のリーダーのあり方の反省や示唆を捜すのは「失敗に学ぶ」という意味で気が重くはあるが大事であろう。

本書によるリーダーの条件は

・最大に仕事は決断にあり

・明確な目標を示せ

・焦点に位置せよ

・情報は確実に伝えよ

・規格化された理論にすがるな

・部下には最大限の任務の遂行を求めよ

でという。太平洋戦争時の失敗例を噛み砕きながら、リーダーの姿を考えてみるのも、ちょっと仕事の行く末に悩んでいる時にはよろしいかと。