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「政策批判」ではあるが、移住政策の担当者は”心すべし”として読んでおくべきかな — 藤波 匠「人口減が地方を強くする」(日経プレミアムシリーズ)

日本創生会議の「増田レポート」が世に出て以降、地方公共団体の施策の一つの大トレンドが、「移住定住対策」「出生率向上対策」「婚活対策」といった「人口増施策」になっている。本書は、そうした猫も杓子も「人口増対策」に群がる状態に、横っちょから水をかける感のある「人口減対策」の本。

そのあたりは、

序章 「地方消滅」への恐れが日本を誤らせる

第1章 若者は地方にもいる

第2章 無理に人口移動を促してはいけない

第3章 仕事が人を引きつける

第4章 新しい仕事を生み出す仕組みづくり

第5章 地方大都市の果たすべき役割

第6章 コンパクトシティだけが解ではない

第7章 「生き残り」を超えて

といった構成をみても、一目瞭然ではあって、例えば

人口の地域間移動は、あくまで都市の経済的活力や魅力の差異により生じる結果と考えるべきものです。人は、経済成長があり、富がより多く生まれる地域に、向けて流れるのが自然です(P12)

といったあたりは、「故郷」を武器に回帰を訴える自治体は、少し顔をしかめるであろうし、

行政が考えなければならないのは、移住先や空き家の紹介よりも、仕事と人のマッチングです。大都市に向けて紹介すべきなのは、移住募集やその支援制度よりも、求人情報やベンチャー立ち上げに向けた事業環境です(P93)

人口減少が進む日本では、地域政策を考える上で、定住人口を増やすことよりも、より魅力的な仕事を増やすことに注力すべき(P94)

といったあたりには、解っちゃいるけど、それが今まで上手くいかないから今の状態になっているんだろ、といった半ば捨て鉢の反論も聞こえてくるような気がするし、

合併によって、中山間地域では十分な住民サービスが「受けられなくなることへの危惧が生じやすいものの、平成の大合併における地域間のあつれきを経て、私たちは不公平感の発生を抑制する術を蓄積したはずです。(P205)

といったところは、個人的には、「えっ」と言わざるをえない。

まあ、このあたりは移住政策を実施している行政関係者の多くは、指摘される事項を感じつつも、政策としての打ち出しなどから実施していることもあるだろうし、移住対策や出生率向上施策に手を打たず、仕事のマッチングなどに注力しておいたほうがいいか、ということはなんともいえないところ。ここは、都会の定住者でなく、人口が減少したために市町村合併や、選挙区の合併にあってしまう過疎地の住民としては、施策の効果以上に、人口が少ない、あるいは少なくなる時の悲哀があることは事実であろう。

まあ、筆者の言わんとすることは

今考えるべきは、50年、100年先の将来を見据え、地域の発展を目指すプラス志向の戦略です。それは、地域の資源を活用し、1人ひとりが生み出す富を増やす発想です。(P207)

ということであるらしいので、地方を切り捨てるのではなく、地方が元気に生きていく道を探りたいというところでは、地域活性化に汗を流している行政職員と同一方向と認識しておきたい。さらに言えば、本書の論説は、耳が痛いが的を得ている所も多々あるのも確か。執政者は、心を平静に保って、こうした耳に痛い批判をきちんと聞いて、よりよい施策に結びつけていくべきなのでありましょうな。