タグ別アーカイブ: 池上彰

情報活用のオール・イン・ワン的な手引本 — 池上彰「情報を活かす力」(PHPビジネス新書)

おなじみの池上彰さんの今回の本のテーマは、「情報を活かす」。

構成をみると

序章 情報活用力をいかに高めるか

第1章 私の情報収集術

第2章 私の取材・インタビュー術

第3章 私の情報整理術

第4章 私の読書術

第5章 私のニュースの読み解き方

第6章 私の情報発信術

1 情報発信のためだけでなく、自分の考えを整理するために文章を書く

2 書いたものを発表してみよう

3 相手への想像力を働かせ、わかりやすい説明の工夫をしよう

となっていて、書籍・新聞・人といったリソースからの情報の集め方、そして情報の発信の方法といったことが内容で。情報の整理活用といった狭い範囲でないのが、本書のおトクなところであろう。

で、その一端は

メディアの人間や専門家という人種は「視聴者や聞き手は何がわからないか」がわからなくなっている(P24)

といった反省を踏まえながら

民放の夜のニュースは、大都市部のサラリーマンの視点で番組がつくられる(P42)

東京で読んでいる全国紙は東日本のブロック紙、九州で読んでいる全国紙は九州のブロク紙なのだと心得ておくべき(P47)

といったメディアの世界で長く活躍してきたらしい辛口コメントがでてくるのが興味深い。

続きを読む

時事解説ではなく、「歴史書」として読むべきか — 池上彰「池上彰のこれが「世界のルール」だ!」(文藝春秋)

国際問題や時事問題の解説本というのは、少し古くなった旅行記と共通のものがあって、時間の経過とともに事態が動いてしまっていたり、本が書かれた時点では、さてどうなりますかとなっていたことが、あっと驚く結末になっていたりする。

なので、あまり未来予測的であったり、志向性の強いものは、後になると、読むに絶えないものになることが多いのだが、池上彰氏の時事解説は、その時点の、その事態に至った歴史的な経緯もしっかり書き込んであることが多いので、原稿時点からの推移をこちらで補足していけば、おおむね冷静な時事評論として読むことができるのがよいところであろう。

本書は2015年時点で再整理されたもので、構成は

RULE1 組織拡大術ー「イスラム国」が急成長したわけ

RULE2 トラブル解決法ー間違いの誤り方が勝負だ

RULE3 ホンネを見抜くー公開情報から推理する

RULE4 歴史の勉強法ー社会人は教科書「世界史A」を読もう

RULE5 究極のリーダー術!?ー独裁・中国はどこに行く

RULE6 お金、マネー、資本を知ろう

RULE7 交渉術、プレゼンテーションを磨け

RULE8 ビジネスのカギは科学にあり

RULE9 インタビュー術!ー「いい質問」をする秘訣

となっていて、イスラム国(現時点では”IS”か)、STAPLES細胞、TPP、スコットランドの独立といった、執筆時点からかなり事態の変化したものも多いのだが、

フランスの風刺画はキリスト教も対象に取り上げます。しかし、イスラム教の預言者ムハンマドを風刺すると、イスラム教徒の心を傷つけてしまう事態になるのです。

イスラム教徒にとって、ムハンマドとは、どんな存在なのか。彼は預言者です。予言者ではありませんよ。「神の言葉を預かった」人です。神は、ムハンマドを選び、人々に神の言葉を伝えるように命じられた、ということになっています。ということは、ムハンマドへの風刺は神の宣託を風刺すること。神への冒瀆と感じてしまうのです。

といったイスラム国での記述は、テロが個別のテロとなり、それがアメリカやヨーロッパの移民論争、ひいてはトランプ政権の誕生に至る発端を示すものであるし、

仮にスコットランドで独立賛成派が過半数を獲得していたら、ヨーロッパ全体が混乱に陥ったでしょう。  しかし一方で、長期的に見れば、地域への帰属意識を基盤とした、実にエネルギッシュで多様性のある世界に転換する、重大な分岐点になっていた可能性もあります。

というスコットランド独立の騒動に関する記述は、イギリスのEU離脱という当時は思ってもいない事態への”予兆”を敏感に感じたものといえなくもない。

続きを読む

リベラル・アーツとは何なのか — 池上 彰「おとなの教養 私たちはどこから来て、どこへ行くのか?」(NHK出版新書)

「教養」あるいは「教養主義」というのは、特に日本においては毀誉褒貶の幅が広いもののように思えて、半藤一利氏や出口裕明氏は「世界史としての日本史」あたりでも「教養主義」の重要性を口を酸っぱくして言われるのだが、新自由主義や効率のみが基準となりがちなビジネスの現場では、旗色が悪いと言わざるをえないだろう。

で、本書の構成は

序章 私たちはどこから来て、どこへ行くのか

第一章 宗教ー唯一絶対神はどこから生まれたのか?

第二章 宇宙ーヒッグス粒子が解き明かす私たちの起源

第三章 人類の旅路ー私たちは突然変異から生まれた

第四章 人間と病気ー世界を震撼させたウイルスの正体

第五章 経済学ー歴史を変えた四つの理論とは

第六章 歴史ー過去は絶えず書き換えられる

第七章 日本と日本人ーいつ、どのようにして生まれたのか

となっていて、「ギリシャ・ローマ時代に源流を持ち、ヨーロッパの大学で学問の基本だとみなされた七科目のことを指します。具体的には①文法、②修辞学、③論理学、④算術、⑤幾何学、⑥天文学、⑦音楽の計七科です」とされる「リベラルアーツ」を、現代流に翻案して、タイムリーな話題を語るといった構成である。

で、リベラル・アーツを学ぶ効用といえば(こんな風に「効用」を言うってのは「リベラル・アーツ」の本旨とは離れるのかもしれないのだが)「歴史」学を例にとると

私自身は、イラン・イスラム革命は言ってみれば宗教ルネッサンスではないかと考えています。この革命の後、イスラム原理主義が中東で広がっていきます。こうした動向を見ると、あの革命は、力の衰えた宗教に改めて命を吹き込もうとする動きだったのではないでしょうか。

とか

こう見ると、これまでの過去の歴史は、ある意味ではとても単純でした。勝った者が記録を残し、負けた者の記録は残っていないからです。  過去のさまざまな歴史というのは、勝者が残した記録を後世の学者が分析をしてつくり上げたものです。一方で敗者の歴史というのは、この世界から抹殺されています。  ですから、私たちが学んだ歴史は言ってみれば氷山の一角で、実はそれ以外にも知られざる歴史がたくさんあるということを、常に頭の片隅にとどめておいてほしいのです。

といったことがあって、総じて言えば、「自分を相対化する」視点を得ることができるということであるようで、それはとりわ、最近のように「自国ナンバーワン主義」や自国意識が肥大化する時代にあって

国家意識というのは不思議なもので、自分たちの中だけでは生まれてきません。つまり、自分とは異質な人たちと接触をして初めて、彼らとわれわれは違うという認識が生まれてくるわけです。

健全な愛国心というのは、上から押しつけられるものではなくて、みんなが自然に持つものです。オリンピックのときみんな日本を応援するのも、別に誰かに押しつけられたわけではない。普段は日の丸を意識しなくても、オリンピックのような場では自然と日の丸を意識し、みんなで日本を応援するという意識が生まれてくる。

自然に湧き出てくる健全な愛国心というものはあると思います。ところが愛国心を政治的に利用しようとすると、やがて居心地の悪いものへ傾いていく

といった、醒めてはいるが、適切な「愛国心」というものに結びつくような気がしてならない。

ともあれ

現代に生きる私たちにとって、知識の重要さもそこにあります。単に受け取るだけではなく、それを現代に生かし、より良い社会をつくり、より良い人生を築いていく。それがリベラルアーツというものの価値なのです。

ということであるらしいので、目線と興味は幅広めに持って、目先の成功や小粒の利益にアクセクしない、という心構えを持たないといけないのかもしれませんね。

新聞は”読み飛ばす”だけが能ではない — 池上彰「池上彰の新聞勉強術」(文春文庫)

以前レビューした「新聞活用術」の対といっていいのが、この「新聞勉強術」。エピローグのところをみると社会人にはじめてなるか。あるいは就活中の学生さんたち向けかなとも思うのだが、「新聞」に親和性があって、なおかつ聖域感があるのは、当方のような中高年であろう。

構成は

プロローグ 一本の新聞記事が世の中を動かす

第1章 「ニュースを見る目」は、新聞で養う

第2章 まず、何から読んだらいいのだろうか

第3章 速読から読解まで 池上彰流・新聞の読み方作法

第4章 「新聞の読み比べ」で身につく情報力

第5章 ネットにテレビに! 池上流・メディアミックス新聞術

第6章 知れば知るほど面白い、新聞の取材現場

第7章 新聞の情報整理術&知的活用術

エピローグ 新入社員の新聞勉強術

となっていて、新聞から情報収集を始めたばかりの学生からスクラップにはまり込んだ人まで、かなり幅広い「新聞好き」をレンジにおさめている。

こうした「新聞」の話となると、とかく新聞を褒めて、その神話化を図ってしまうことがあるのだが、筆者の場合、

数字が重要な記事を見つけたら、必ず他の新聞の見出しと見比べる。・・事実の中に盛り込まれた「主観」を見つけ出すことから、私達の新聞勉強術がスタートする。(P30)

社会の多数が「けしからん」と怒っているときに「ちょっと待てよ」ち、「アナザービュー」(異なる視点)を持つ姿勢が大切(P37)

「アナザービュー」とは「本当にそうなのか」を、別の角度から考える癖をつけること(P38)

といった感じで、「新聞」そのものを疑ってみる、違うポジションに自分を置いてみる大事さを主張するところが、その誠実さを現しているというものか。

で、本書の場合、「新聞」のあらゆる側面をとりあげているので、どういう読み方をしてもよいのだが、当方としては、新聞取材の方法論や新聞報道の優秀性というよりは、その使い方の方に関心があって、例えば

自分でも気づかない自分自身の関心は、デジタルでは決して発見できないのです。

新聞をスクラップするために必要な記事を探していると、その横に思いもよらないような記事を発見することがあります。

そんなとき、まったく関係ない記事同士が結びついて、いままでにない発想が生まれることがありました。スクラップは”新たな発見”の喜びを与えてくれるのです(P221)

新聞に文章だけで記述されている内容を自分なりに図解してみるのです。

図解しようとすると、その問題について深い知識を持っていないと図解できないことに気付きます。そこから、何を学べばいいかがわかります。

こうして理解できたら、図解します。

そのうえで、その図解を今度は言葉で表現してみるのです。

この言葉での表現こそ「まるで図解をしてくれるようにわかりやすいですね」と言ってもらえる説明になるのです(P223)

といったところは、新聞を使った発想の手法、表現力を磨く手法として「ふむ」と思わせるし、

スクラップは、ひとつの事件を追いかける場合のように「この記事を切り抜かなければ」とテーマを決めて行う方法もありますが、どんなジャンルでもかまわず「これは面白いな」と思った記事を切り抜く方法もあります。

実は、このノンジャンルで切り抜くやり方が、意外な発見をもたらすのです。・・・自分自身がこれまで気づかなかった自分の興味・関心の分野が、次第に明確に姿を現してくるのです。(P230)

短歌や俳句でも、釣りやドライブであってもいいと思います。それを積み重ねておいておく。そしてときどき棚卸しをしてスクラップを見返してみると、いつのまにか、自分が本当に趣味にしたいものは何なのか、「自分探し」をすることができるはずです(P231)

といったところは、隙と時間ができた定年後に、それからの人生をうっちゃっていくものを見つけるに良い方法かもしれないな、と無芸大食の輩はつぶやいてみる。

さて、筆者のように五紙以上の新聞を購読して、スクラップするといったことは小遣いも限られている身としては難しいものではあるが、せめて、複数紙をとって、やってみると少しは賢くなれるでありましょうか?

リーダー、組織の再生はどうすればよいか — 池上彰・佐藤優「新・リーダー論ー大格差時代のインテリジェンス」(文春新書)

現代日本屈指のジャーナリストと国際政治分析家の二人による「リーダー」の在り方についての論及である。

構成は

1 リーダー不在の時代ー新自由主義とポピュリズム

2 独裁者たちのリーダー論ープーチン・エルドアン・金正恩

3 トランプを生み出したものー米国大統領選1

4 エリートVS大衆ー米国大統領選2

5 世界最古の民主主義国のポピュリズムー英国EU離脱

6 国家VS資本ーパナマ文書と世界の富裕層

7 格差解消の経済学ー消費増税と教育の無償化

8 核をめぐるリーダーの言葉と決断ー核拡散の恐怖

9 リーダーはいかに育つか?

書かれた時期が少々古いので、トランプ大統領の誕生やイギリスのEU離脱などは、まだ可能性の段階で書かれているので、時事解説として読むのは適当ではないが、新帝国主義の時代と言われる現代の「リーダー論」としては最も最新の情勢を踏まえたものといっていい。

もっとも現代にでるべきリーダーについての対談として読むか、あるいは普遍のリーダー論として読むかは、各々の好み次第で、当方としては、後者の読み方のほうが、曲者的な読み方で好みにあう。

それは

世界的に見ても、民主主義は岐路に立っているようです。各地で「強いリーダー」を求める声が高まっています(P23)

強いリーダを育成しようとしても、これだけ個人が砂粒のようにバラバラにアトム化しているところでは、リーダーは出てきようもありません。(P24)

と「リーダー不在」ではなく「リーダー誕生」が難しい「個」の時代の特性をあぶり出し、

リーダーが現れているのは、宗教があるか、あるいは「敵」のイメージがあるところです。アトム化していない、耐エントロピー構造があるところだけに、リーダーが出てきている。イギリスには、リーダーはいないが、スコットランドにはいる。沖縄にもいる。何らかの差別を受けている集団、特殊なイデオロギーや特殊な宗教によってまとまっている集団の中にはリーダーがいる(P231)

とするあたりは、経済も文化も成熟した日本の国家情勢の難しさに嘆息させる。

もっとも、明確なリーダーがいた時代が幸福だったかといえば、日本の場合はむしろ、明確なリーダーではなく、リーダー群あるいは、小粒ではあるが厚みのあるリーダー層がいた時代の方が、江戸期をはじめとして”幸福”であったのが、余計にリーダー論を不毛にしている所以でもあろう。

とはいうものの、明確なリーダーもおらず、能天気で傲慢なリーダー層がいる時代がもっとも不幸であることは間違いなくて、そのあたりは現代が

会社という組織も、国家と同様に、業績が傾きかけてくるとトップの独裁権が強くなります。部門で言えば、総務部主導になる。(P32)

といった時代であることを考えれば、やはり一定のリーダーは必要だ、という結論にならざるをえない。

さて本書によれば

どの組織でも、下士官暮らすのリーダーがうまく育っていない、シールズにような運動では、下士官クラスのリーダーは生まれようがない。

日本でもう一度システムを活性化させるには、やはり企業が重要ではないでしょうか。中小企業でも大企業でも、何らかの形で終身雇用があって、帰属意識が生きている企業、そういうリーダーシップはある企業は生き残るし、その企業がある地域は強くねっていく。あるいは職能組合や地域活動がしっかりしているのなら、それでもいい。人間が成長するには、やはり何かに帰属することが大事です。(P238)

「リーダー」と「組織」は相互に補完的な関係にあります(P239)

とのことである。そろそろ「個」の偏重による組織運営論ではなく、かつての「集団」による組織運営論に立ち返らないと、リーダーはいつまでも不在で、かといって時代の変化に耐えて我々を守護してくれる「組織」も再生せぬままなのかもしれないですね。

よりよく「伝える」には ”技術” が必要 — 池上 彰「わかりやすく<伝える>技術」(講談社現代新書)

ここのところ、池上彰さんの「伝える」ということをテーマにした本を続けてエントリーしているのだが、今回は、「わかりやすく<伝える>技術」。

「伝える力」の第1版は2007年、「伝える力2」の第1版が2012年で、本書「わかりやすく<伝える>技術」が2009年なので、「伝える」シリーズの中間どころのレクチャー本という位置づけだろう。ただ、「伝える」「伝える2」との違いは、講談社現代新書らしく、かなり細かなテクニックも紹介されているところ。

それは構成にも現れていて

第1章 まず「話の地図」を相手に示そう

第2章 相手のことを考えるということ

第3章 わかりやすい図解とは何か

第4章 図解してから原稿を書き直す

第5章 実践編 三分間プレゼンの基本

第6章 空気を読むこと、予想を裏切ること

第7章 すぐ応用できるわかりやすく<伝える>ためのコツ

第8章 「日本語力」を磨く

第9章 「声の出し方」「話し方」は独学でも

第10章 日頃からできる「わかりやすさ」のトレーニング

といった成り立ちで、「話す」といったことに限定しないで、「表現する」「説明する」上での技術論が添加されている。

それは、

一つの長い文にすると、文章の中身の要素同士が論理的につながっていなくても、まるでつながっているように思えてしまうのです。(P61)

わかりやすい説明をするうえでは、「絶対に必要な情報」と「あってもなくていい情報」を峻別し、「絶対に必要な情報」だけを伝えること。「ノイズ」をカットした、クリアな情報が必要なのです(P85)

パワポには。文章を書いてはいけません。文章にすると、聴衆は、画面の文字を読んでしまいます。そんなことなら、そのパワポをプリントして聴衆に配ればいいのです。

プリントにしないのであれば、文章にせず、伝えたい要点、キーワードだけを抜き出すのです。(P91)

パワーポイントは1枚40秒で見せていく(P114)

3つの項目に組み立てて、パワポの見出しは文章にしない(P121)

といったところでも明らかであろう。

続きを読む

「伝える」テクニックの第二弾 — 池上 彰「伝える力2」(PHPビジネス新書)

前作「伝える力」で、伝達することの、かなりのテクニカルなものを披瀝されたのだが、その第2弾。前作から第二作の間に、東日本大震災があり、その際の政府や電力会社の情報を「伝える技術」の稚拙さが話題になっただけに、注目されたのも事実なニオであるが、それから数年経過した今は、少々は冷静に評価しつつ読んでもよいだろう。

構成は

第1章 東日本大震災と「伝える力」

第2章 テレビの現場から私が学んだこと

第3章 世間にあふれる「わかりにくい表現」「伝わりにくい言葉」

第4章 もっとわかりやすく伝える方法 1

第5章 もっとわかりやすく伝える方法 2

第6章 気になる言葉、気になる表現

第7章 日本語は乱れているのか

第8章 かつて私も「伝える力」に悩んでいた

となっているのだが、「伝える」テクニックを学ぶのであれば、第5章あたりまででよいかもしれない。

で、今回は他の著作でも共通のテクニックとして出てくるものがあって、例えば

わかりやすい説明をするには、相手にまず「話の地図」を渡す(あるいは示す)ことが大切だと私は思っています。

「話の地図」とは話の全体像で、最初に伝えるべき内容でもあります(P32)

といったあたりがそう。

さらに、この本で引用されている事例はちょっと古いが、最近のトランプ大統領の演説を聞くと

印象的な言葉を何度も繰り返す。この演説の酒保言うはアメリカ人がよく用います。

最近では、アメリカのオバマ大統領の”Yes We Can”があります(P49)

野田総理の所信表明演説が”アメリカ流”だったのは、同じフレーズを繰り返すことだけではありません。国のため、公のため、人々のために命がけで尽くしてくれた人をその名前まで出して紹介したことも、アメリカ流(P50)

といったところは、アメリカの演説のセオリーを教えられる。

まあ、「力」とは表現されているが、様々なテクニックの集合体が「力」になるものと考えれば、小さなテクニックをこつこつ学習していくことが有効であるような気がする。

何事も「積み重ね」ということでありますかな。

「新聞」はまだまだ面白いメディアだ — 池上 彰「池上彰の新聞活用術」(ダイヤモンド社)

新聞の発行部数は、日本新聞協会のデータによると2016年現在で一般紙、スポーツ紙あわせて43,276,147部であるらしく、2000年の53,708,831部に比べると15年ほどで1000万部減らしている勘定になるらしい。だが、1世帯あたり部数は2000年が1.13部、2016年が0.78部と、まだまだメディアとしての力、影響力は計り知れないものがあるね、ほとんど世間様への影響力を持たない当方としては恐れいるしかない。

本書の著者の池上彰さんはテレビ出身とはいっても、ニュースキャスターも長年努め、読書術や新聞のスクラップや情報入手の方法など、「紙」ベースの情報収集にもとてつもなく見識のある人で、「新聞の読み方」なども様々な媒体で論じておられているのだが、そんな池上彰氏の「新聞愛」にあふれた著述が本書。

構成は

第1章 ニュース力を磨こう

第2章 数字力を磨こう

第3章 伝える力を磨こう

第4章 書く力を磨こう

第5章 想像・推理力を磨こう

第6章 見せる力を磨こう

第7章 発想・コミュニケーション力を磨こう

となっていて、筆者の朝日新聞の連載コラムをまとめたものである。なので、とりあげる範囲も新聞の活用術だけというわけではなく、「世の中が物騒になった、昔がよかった」という論調に対して、

凶悪事件は減っていても、「凶悪事件報道」は増えている(P76)

といった冷めた視点を提供したり

現場の臨場感を伝えることができない新聞記事は、優れたものとはいえません(P81)

と新聞記事批判を展開したかと思うと、最近、さるスキャンダルのせいか画面や紙面で見かけなくなった、女優の江角マキコさんの早世した「お父さん」と、家族を残して癌に倒れた「弟さん」についての記事を紹介(P120)して「ホロリ」とさせたりと、技は冴えているのである。

で、「うむ」と思わされたのは、新聞記者の資質に関しての

新聞記者に必要な資質、それは世の怒りをいち早く察し、切れ味するどい短文で表現する能力(P154)

であったり、「後期高齢者」という名称をめぐっての騒動に際して、同じく

記者の資質として大切な要素の一つは想像力。世の中の人は、どんな思い出暮らしているのか、何に怒っているのか、そんな気持ちへの想像力です(P165)

といったあたりで、ここらは、「新聞記者」だけでなく、「公」に携わる者が心に刻んでおかねばならないことであろうな、我が身を振り返ったのでありました。

新聞の読み方指南、新聞情報の活用指南というよりは、「新聞にまつわるエッセイ」といった感じで読んだほうが、すっきりする一冊でありますな。

池上 彰さんのスケジュール管理と手帳・メモ術

池上 彰さんの「伝える力」(PHPビジネス新書)を読んでいたら、氏の手帳の使い方についての記述を発見。

スケジュール管理が必要になったのは

スケジュールを管理する必要に迫られるようになったのは、社会部の遊軍になってからです。遊軍とは、もともと軍隊用語、特定の作戦に投入される部隊とは別にいて、戦闘で苦戦する部隊の応援に回される組織のことです。・・・

それまでのいわば「発生待ち」の仕事のスタイルから、自ら企画を立て、取材をする仕事のやり方に変わったことで、スケジュールを管理する手帳が必要になったのです。

ということで、2007年の初出なので、今とはスマホとかのデバイス事情が異なっているので今は違うかもれないが、スケジュール管理などには「紙の手帳」を利用されているようで

◯スケジュールは公私共に一冊で管理する

週間タイプの手帳で、左ページにはテレビ番組の出演日やインタビューを受ける日時、打ち合わせのの日程などを書き、右ページには、原稿の締め切りやプライベートな予定などを書きます

NHK時代は左ページにはNHK職員としての仕事に直接関係することを書き、右ページには個人で受けた本の原稿の締切やプライベートな予定を書いていました

手帳を仕事とプライベートで分けてしまうと、ダブルブッキングをしてしまう恐れがある

◯年始におおまかな一年の予定を組む

「衆議院選挙の公示日」とか行事も入れる

自分の仕事に関係しそうな行事や計画はその都度、新たに書き足す

大切な取引先やお世話になった人の誕生日や記念日を書いておく。当日は、お祝いの言葉をかけたり、メールを送ったりする。

◯思い立ったらすぐにメモ

取材用には通常の大学ノートを使います。ちょっとしたメモは、いらなくなったA4y用紙の裏に書いています。

電車の中で、ふと企画を思いついたり、得意先に提案したいことが浮かんだときは、A4の用紙を取り出し、メモを走り書きするのです

というのがスケジュール管理と手帳・メモ術の要点。

当方は「Googleカレンダー+iPhoneのジョルテで同期」という方法で、紙と離れて長いのだが、今回参考になったのは、自分に関連しそうな公の行事やトピックを自分のスケジュールにいれてしまうということ。これにより「自分の仕事に関係しそうなイベントがあるなら、それを手帳にあらかじめ書き込んでおくことで、その日までに自分がすべきことが見えてきます」とのこと。

なんとなく用意周到で、気配りの人のイメージが見えてきますよね。

「伝達すること」の難しさを吹き飛ばすテクニック — 池上 彰「伝える力」(PHPビジネス新書)

フリージャーナリストとして、様々な場面で顔をみる池上 彰氏による物事を「伝える」ための技術論。
もともとはアナウンサー、キャスターであるので、「喋り」自体はプロであるのだが、そjのプロがこうした平易な技術論を書くということは、ネタバレであるとともに、読者がえっと思うと、本業のほうにも影響があるので、結構勇気のいるものと推察されて、そのあたりは「おわりに」の「この本は”陰謀”によって実現しました」といったあたりに表れている。

構成は

第1章 「伝える力」を培う
第2章 相手を惹きつける
第3章 円滑のコミュニケーションする
第4章 ビジネス文書を書く
第5章 文章力をアップさせる
第6章 わかりやすく伝える
第7章 この言葉・表現は使わない
第8章 上質のインプットをする

となっていて、奇をてらう構成になっていないところが、実は「能ある鷹は爪を隠す」というところでもある。で、その「伝える力」は、

意味がわからないまま読んだり話したりすると、それを聞いている相手も意味がわからない(P19)

「伝える力」を高めるためには、自分が深く理解することが必要であるとわかります。
では、理解を深めるにはどうしたらよいのか。そのためにはその前段階として、「自分がいかに物事を知らないか」を知ることからスタートするしかありません。(P29)

といったところ基礎にしていて、オーソドクスなところに立脚点がある。
そして、その技術とは「「つかみ」が大切」「10秒あれば、かなりのことを言える」「「型をくずす」のは型があってこそ」「会議では一人一人の目を見ながら話す」といったわかりやすくはあるが、不自由なく使いこなすには結構練習が必要であろうようだ。

ついでに言うと、「伝える」技術論だけでなく、

日本にはいわば「けしからん罪」が存在しています。
それは、法律には違反していないけれど、何かけしからんよね、という多くの人たちの気持ちであり、感覚、空気です(P77)

謝ることは危機管理になる。
一言謝られることで、なんとなく納得し、なんとなく許してしまう。非常に日本的といえば日本的ですが、これが多くの日本人の感性です。(P93)

といった処世の技も披露されると思うと

仮説を立てて現場に臨めば、たとえ仮説とは状況が大きく異なっていたとしても、土台があるので、軌道修正をすれば、対応は比較的容易にできるのです。
つまり、白紙の状態で調査を開始するよりも、効率はずっとよいといえます。(P115)

現地にいって問われるのは「五感」や「雑感」(P117)

といった取材の技術のようなものもあって、結構おトクな本であるようだ。
「伝える」ということは、何の苦労もなくひょいとできる人もいれば、汗水たらして頑張っても「よくわからない」という無情な一言で全てを破壊されてしまう人もいる。どちらかというと後者のほうが圧倒的多数であるように思われるのだが、こうした「方法論」を地道に学んで練習する、っていうのが「伝達力」上達の近道なのかもしれないな。