定食は日本の”ソウルフード”ー今 柊二「定食バンザイ!」(ちくま文庫)

最近、今柊二さんをはじめとする、「定食系」のブックレビューが頻発していて食傷気味のところもあるかもしれないが、個人的に「これ」と思うジャンルにぶつかると当分の間、偏”読”するという性質があるので、ご容赦を願いたい。
偏って読んでいると、作者なりにかぶって紹介されるテーマとか店とかがあって、今氏の場合も神保町界隈の”いもや”とか”さぼうる2”とかも出ているのだが、比較的重複がすくないと感じるのが本書。
構成は
第一部 街をブラブラ
 定食の聖地・神保町界隈
 青春の爆食ー早稲田から高田馬場
 ヨコハマの洋食
 地下街と定食
 あの街この街・・・味わいの定食屋
第二部 テーマ決め一直線
 立ちそば屋で定食を食べたくなって
 お好み焼きだってごはんだよ
 魚が食べたい日々
 ぶたぶたこぶた・・栄光の豚料理
 カレーの逆襲
第三部 大中華帝国の覇権
 ラーメンライスの極意
 焼き飯紀行
 横浜中華街ランチ勝負
 横浜中華街外の名店へ
となっていて、王道の定食から、定食の変形でもある「中華」まで万遍なく”定食系”を網羅しているといっていい。
ただ定食系を”網羅”といっても
大学入学当時の1986年は、私は本当に文房で、昼は学食の290円の定食、そして朝食は日々米一合を炊いて、夜のおかずは1枚100円のチキンカツと千切りキャベツ(一週間食べる)かなんかを食べている程度だった。(P12)

と述懐する筆者らしく

「キッチンカロリー」(東京・神田神保町) カロリー焼き+ご飯大盛り の
やってきたごはんを見て「あれ?盛りが少ないな?」と大食いのあなたは思うかもしれない。
でもちょっと待って下さい。おかずの「カロリー焼き」を見なさい!表面に載ったガーリックしょうゆ味の牛肉の舌には、巨大なスパゲッティが鉄板の上でジュウジュウ焼けているでしょうが!(P12)
「鶏やす」(東京・高田馬場) 肉皿定食 の
デカい鶏の胸肉が大量のキャベツとともにおかずとして君臨しているもので、鳥の皮のカリカリ感といい、肉のジューシー感といい、そりゃもう圧倒されるうまさだ。(P46)
のように、大盛りメニュー、ご飯お替わり自由への愛情は不変である。

さらに、安価で大盛りの偏愛は。定食からカレーの話題になっても変わらず
ラーメンほどではないが、カレーライスに関しても”うんちく”をたれる人が多い気がする。
こういう人たちの特徴は、ラーメンにとても似ていて、値段のことをあまり気にしないで、うまければ突進していくところであった。(P252)
と皮肉っぽく書いて、中央食堂(東京・武蔵境)のカツカレー200円 や かしわ屋(神奈川・綱島)の土・日・祝はカレーが150円 にエールを贈るのが筆者らしいところ。
さらに「アカシア(東京・新宿) ロールキャベツと並ライス」の
しょっぱいシチューとロールキャベツがごはんのおかずに合うなあ。家で食べると、シチューもロールキャベツもうれしくないのに、外で食べるとおいしいなあ。その意味ではおでんと一緒だな。よく考えてみると両方とも煮込み料理だなあ。煮込み料理は外で食べたほうが幸せなのかなあ(P122)
「王ろじ(東京・新宿) とん丼」で
まずは見た目がびっくりだ。丼の上にトンカツタワーがあるようだ。棒状のとんかつが3本立ち上がり塔を形成しているのだ。さしてごはんにはカレーが。・・このカツと一緒にカレーライスを食べると、ぜん全違う味になる。つまり、このカレーはカツとハーモニーを奏でられるようにつくられているらしく、カツ、米、カレーが幸せな融合体となっている。(P236)
など、筆者より10年前に東京で学生時代を過ごした当方にも懐かしい店が出てくるのが嬉しいところ。(社会人になって、地方から東京に出張することは多くても、訪れる店は変わってしまうので、再訪はかなわぬ夢なのだ)
最後に”ステキな定食屋でナイスな食事をとるための7つの条件”である
①「安さ」を大事する
②栄養のバランスに気をつける
③量の多さは店の良心のあらわれ
④味以外も味わおう
⑤おいしい店の「気」を察知する
・玄関が半開き
・カウンターに客が群れている
・地元の人が多い
⑥メニューに注目する
・大体値段の安い方から2番目ぐらいに、店の実力定食が隠されている場合が多い
⑦夜にも行こう
を噛み締めながら、本稿は了としよう。
<スポンサードリンク>



コメント

タイトルとURLをコピーしました