立ち食い蕎麦は男性の特権ではないーイトウエルマ「立ちそばガール! 」

「男もすなるものを」とて、女性の進出は、あらゆる分野に渡っていて、どうかすると男性の方が気圧されている領域がどんどん増えていて、食べ物屋の世界でも牛丼屋や定食屋がといったあたりはすでにそうなっているように思うが、この「たちそば」の世界は、まだまだ「男性」の気配が強いように思う。
そんな中に、ビジネスサイト(日経ビジネスオンライン)の取材記事とはいえ、うら若き(と思う)イラストレーターのイトウエルマさんが果敢に「立ちそば」店の数々に挑んだのが本書。
構成は
第1章 王道編
 蕎麦・冷麦 嵯峨谷(渋谷)
 さだはる(新橋)
 そばよし(日本橋本店)
 みとう庵(大塚)
 江戸や(神田小川町)
 誠や9号店(人形町)
第2章 変化球?でも本格派
 がんぎ(新川)
 まち家そば(水天宮前)
 よもだそば(日本橋)
第3章 立ちそば王国(チェーン大手)
 小諸そば(四谷新宿通り店)
 小諸そば(会社訪問)
 ゆで太郎(代々木東口店)
 富士そば(代々木店)
第4章 ならではの特別
 加賀(初台)
 おくとね(新橋)
となっていて、都内のお店が中心なのだが、「立ちそば」は、勤め人と学生の多いところほど進化する、というのが鉄則のようなので、このチョイスは正解。
で、日経ビジネスの編集者と一緒に都内の「立ちそば」の名店(?)を巡るのだが、そこは「立ちそば」初心者、なかなかハードルが高いようで
立ちそば店では、ことあるごとに決断のポイントがやってくる。悩む猶予は、ない。トッピングなどの選択が多い店では、そこでの判断が後の食し方を大きく左右してしまう(男性の決断力って、食事中にもこうして養われているのかしら?)
女子のお昼にこんな緊張、強いられることはありません。なぜなら我々がいるのは、美味しい提案がいつでも向こうからやってくるのが当然の世界。(P39)
といった具合で、「細麺」指定をするのを忘れたり、同行記者に「肉汁つけそば」を奢ってもらったのだと勘違いして注文を忘れたり、と様々な失敗はあるのだが、場を踏むに連れ、「立ちそば」の世界に馴染んでいく姿がたくましい。
そして馴染んでくると、蕎麦の描写も堂に入ってきて。
江戸や(神田小川町)「かけそば+生卵トッピング」の
「かけそば」に生卵をトッピング。上がったそばを前に、箸をそっと黄身の上に載せ、息を整えた。そうして慎重に、ゆっくりと黄身の中心に、箸を差し入れる。
ぷにん。
真ん中がじわ、と揺らいだ。それでも黄身は未だふっくら丸い形を保ち続けている。ここで、箸先についた黄身をそっと吸う。濃くて、ねっとりとした黄色を舌先がさらった。(P63)
 
今度は白身をまとったそばをひとすすり分、黄身にそっと沈める。旨いそばと、卵にこだわった「月見そば」。汁の熱さで白んだ白身は、つゆ色に染まったそばを包み込むようにして、ぬるりと、滑らかに口中に吸い込まれる。そばに絡みついた黄身は、うっとりするような濃厚さを口内いっぱい充溢させる。(P64)
誠や 9号店(人形町)の「肉汁つけそば」の
肉からの旨味が汁に滲むと、やはり旨い。肉には甘い味が合う。つゆの中の返しに使われてあ甘さと、肉でしか出し得ない強い旨味が出合うと、野性味が抑えられてフレッシュな味わいとなる、鼻に抜ける時にふんわり香るかつお出しが、つゆをうっそう華やかにしている
・・旨いなあ。野性的なそばには、濃い醤油味のお出しがよく合いますね。(P82)
といった具合に、「立ちそば」屋のそばの魅力をぐいぐいと引き出してきたり、
本来江戸前のそばは、切りたてのそばを「包丁下(ほうちょうした)」といい、すぐにゆでることはしない。なぜなら、切りたてのそば生地には空気が含まれているため、釜の中でそばが浮き上がり、上手くゆで上がらないから。そこで、少し置く。こうすると、めん体の中の気泡が水分の浸透により外へ出て、ゆで上がりもよくなる(P53)
本当にそばが旨いのは新そばの季節じゃない。真冬の1月2月、外も水温も一番冷たう時に打って、ゆでるそば。(P90)
といった薀蓄を傾けるまでなるのである。
とはいっても、こうした「グルメレポート」にありがちな、「あっという間の通人きどり」に陷ることなく、「加賀(初台)」のかき揚げそばを注文して
玉ねぎをじっくり火を通されて、只今ホックホクになっております。それが口の中で、猛烈な熱を発している!
熱さに耐え切れない舌は口内のあちこちにこの塊を転がすのですが、・・・覚める気配はないので、口を半開きにし、必死で息を送ります。
 
ところで、野菜しか入らないここのかき揚げ、大変香ばしい。使われるのは玉ねぎ、にんじん、長ねぎ・・・、と香味野菜ばかり。中国料理の仕上げ用に作られるねぎ脂と同様、揚げることにより滲みでた野菜の甘み、風味が油を旨くしている。
(P198)
と、かき揚げが冷めるの待つためにそばばかりをすすっているうちに、かき揚げがつゆを吸って巨大化している状態にしてしまったり、といった事態に遭遇するのはご愛嬌というものだろう。
「女子」のすなる”立ちそば”日記というのも、別の風味があって、よきものではありますな
<スポンサードリンク>
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

へぎそば 布乃利小嶋屋そば 乾麺200g×10袋(つゆ無) 5回の皇室献上 小嶋屋総本店のへぎ蕎麦【年越しそば/年越し蕎麦】【皇室献上そば/新潟名物/新潟そば/ソバ/そばセット】【贈り物・内祝いに!のし(熨斗)無料】【送料無料】
価格:3850円(税込、送料無料) (2020/4/7時点)

楽天で購入

コメント

タイトルとURLをコピーしました