駅の立ち食い蕎麦にも風情あり ー 「東西」駅そば探訪(交通新聞社新書)

西日本出身の当方が東京で大学生活をおくり始めた時に、まず驚いたのがあの麺汁の「濃い醤油色」であった。もちろん、明治の御代ではないから、東西のだし汁の違いについては知識もあったのだが、聞くと見るとは大違い、ましてや食してみるとさらに・・、といった具合で、最初の頃は、うどん、そばの類は全くといっていいほど口にしなかったのだが、郷に入ればなんとか、で居住年数が経てば経つほど、あの「濃さ」が好みになるのが不思議なところではある。
さて、本書の構成は
第1章 麺・つゆの東西「駅そば」味くらべ
第2章 似て非なる東西の「駅そば」
第3章 関東ならではの「駅そば」ラインナップ
第4章 関西ならではの「駅そば」ラインナップ
終章  水が違う関東と関西
となっていて、主なテーマは表題のとおり、関東と関西の「駅そば」比較で
関東では、麺が増量されたメニューを既成メニューとして扱っているケースが多く見られます。特に多いのが、もり・ざる系のメニュー。・・(中略)一方の関西では、大盛りではなく「替え玉」のサービスがある店を見かけます (P38)
とか
すべての「駅そば」メニューの中でもっとも人気の高いメニューは、関東・関西どちらにおいても「天ぷらそば(うどん)」です。・・しかし・・関東の「駅そば」ではほとんどの店で「天ぷら」は「かき揚げ」を指します。・・関西では「天ぷら」と「かき揚げ」が別物を指すことが少なくありません   (P67)
関東ではネギをお好みトッピングできる店が点在します。・・関東では、天かす、揚げ玉は憂慮雨トッピングとして提供している店がほとんどですが、関西では各席においてあり、無料でお好みトッピングできるシステムの店も珍しくありません。 (P111)
といった東西の食の「違い」といったものに”ふむふむ”と頷いてもいいのだが、筆者自らが、かなり多くの店を実食しての比較・紹介のレポートである。どちらが優れているか、どう違うかといったあたりより、それぞれの店のそばの特色なりを楽しむのが本書の愉しみ方も良いのでは、と思う。
もともと味や効能というよりは、ホームや改札の階段を降り立ったあたりに漂う、そばつゆの香りに惹かれて、さほど空腹でもないのにおもわず食してしまうっていうのが「駅そば」である。紹介されているそれぞれの店のそばを想像して楽しむっていうのが、実際に食すよりも「駅そば」の魔力に浸るコツでもあるのかもしれない。
天ぷらそばからざる・もりといった大御所から、さらには、「納豆そば」や「唐揚げそば」「カツそば」といった落ち武者を狩る伏兵的なそばも登場してくるので、「駅そば」の隅々をバーチャルに「味合える」のが本書のお得なところであろう。
まあ、なんにせよ「駅そば」である。1000円あれば大盛りにしてもお釣りがくる。本書を片手に駅を巡ってみるっていうのも良いのでは。

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