(ブックレビュー)高城 剛「2035年の世界」(PHP研究所)

数々の新しいメッセージを世の中に送り続けている高城 剛氏による未来予想図である。

分野的には
SECTION1 身体科学
SECTION2 科学
SECTION3 移動
SECTION4 スタイル
SECTION5 リスク
SECTION6  政治
SECTION7 経済
SECTION8 環境
と芸術の分野を除いた我々の生活のほぼ全般に関しての予測といっていい。
まあこういう類の本は、予測が外れた、だの、倫理的でない、などといった野暮なことは言わずに、おお、そういう捉え方があったのか〜、と面白がりながら読むのが良いのだが、あまりに荒唐無稽だと興醒めなもの。そのあたり高城氏の予測は、我々の凡庸な予測の、手が届きそうで届かないところにボールを落としてくれるのが見事なところである。
で、「予測」というものはあまり詳しくレビューしてしまうと身も蓋もなくなってしまうので、ざっくりとしたところでいうと、どうも20年後の世界は、長寿命化がすすむものの、今までの国家的な強固な縛りと保護は緩んでいき、個人は移動の自由を手に入れるも流動化はとまらない、といった感じであろうか。
そのあたりは、
12 人間不在の起業
AIが人間社会にうまく溶け込めるかどうかは、AIが古いしきたりを守っている、と表面的にはプレゼンテーションすることにかかっている。AIは人類の敵ではなく、人間以上に人間的、すなわちそれは人間以上に古いしきたりを守ることを意味し、まるで何千年も生きているおじいさんのようなキャラクターを演じるだろう
23 No move,No life
一か所に定住するのは、ビジネスチャンスも小さく、非常にリスクが高い生き方になる。・・20世紀は国境という見えない壁が強固で、移動コストも高かった。だから移動可能な人や企業に富が集中した。しかし21世紀は国家が融解して移動が大幅に自由になり、技術の進歩によって移動や通信のコストもさらに下がっていく
45 ガバメント・オプトアウト
これまで国民と国と一蓮托生の関係であった。国が順調に成長しているときはそれでもよかったが、これから、何らかの大きな転換やハードリセットが起きれば、国家の破綻に国民も巻き込まれてしまう。それを避けるために、国に対して物理的に距離を置く動きがいま広がっている。
といったあたりで示されている。
そうした中で、個人が不幸かというと
51 人生100年時代における「第二の人生」
平均寿命が82歳のいまでも、すでにリタイアした人たちは暇を持て余している。これが人生100年時代に入ったらどうなるのか。おそらく第二の人生の過ごし方が、いまよりもっと深刻な社会問題になるだろう。
ただ、裏を返せば、人生100年時代は、人生を従来の2倍楽しめる時代だといえる。僕が思うに、まずリタイアという概念がなくなる。60代で会社を定年退職してもまだピンピンしているのだから、おそらくその年齢から起業したり就職し直す人が激増する。
といった感じで、私のようなロートルの部類に入った年代にも少しは救いはあるのかも、と思うのは楽観がすぎるか・・
最後に、氏が他の著述でも主張している「地域づくりと観光」のあたりは、
86 観光都市
都市には経営センスが必要で、現代中小都市経営の中心は観光戦略だと思う。観光をきっかけに「この町はいいな」と感じてもらえれば、人が増え、投資が増え、産業が興り、産業がさらに人を呼び寄せ、地価があがることは、世界の常識である。このサイクルが回り始まれば、都市は勝手に成長していく
日本の都市を見ると観光資源はあっても、まともな観光戦略をほとんど持っていないのが現状である。
と、辛口まじりではあるが、取り上げてある。
地方創生で浮かれるのもいいが政府のタクトに踊らず、きちんと戦略を練らなば、という地方政府の関係者への檄をもって、本書のレビューは〆とするか。

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