意識の慮外にあった古代マケドニアが以外に面白い ー 岩明均「ヒストリエ 2」

エウメネスの牧歌的な幼年時代が一転して、父親の不慮の死、一般市民で裕福な家庭の坊っちゃまから奴隷へ、といった転変が語られるのが第2巻
収録は
第10話 斃すイメージ
第11話 足音
第12話 トラクスの戦い・1
第13話 トラクスの戦い・2
第14話 トラクスの戦い・3
第15話 2つの死体
第16話 証言
第17話 別世界
第18話 図書室・3
第19話 ペンダント
エウメネスの地位の転落のきっかけとなったのは、彼と同じ民族であるスキタイ人奴隷のトラクスの反逆。
多民族を狩って「奴隷」にするということが、日常であった時代というあたりも、なにやら世界史の授業の「ギリシア」の輝かしさと食い違って微妙な感があるのは事実。

さて、金持ちのおぼっちゃまから奴隷、おまけにギリシア人から蔑視されていたらしいスキタイ人としての奴隷になる、というところが、以後のエウメネスに影響を及ぼしている、という設定で、
人の心は弱いもの・・・というより、かなり変形しやすいものだという事をこの経験は学ばせてくれた。
アレクサンドロス率いる遠征軍の中で目立ちまくる”勇ましい連中”
そんな者らをどこか信用できないと感じるのは。この時の思いがひっかかっているからなのかもしれない。
といった独白にそのあたりを象徴させているのかもしれない。
とはいうものの、第2巻では、まだカルディアから歩を踏み出すことなく、カルディア市の所有物として、依然としてヒエロニュモス邸の中にいる。おぼっちゃま当時お付きの奴隷であった「カロン」から自分のスキタイ人の母親の武勇と最期の話を聞いて、次巻以降の放浪の展開を垣間見せるところで終わっているのが次巻への期待をつなぐところではあるな。

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