意識の慮外にあった古代マケドニアが以外に面白い ー 岩明均「ヒストリエ 3」

引き続き「ヒストリエ」の第3巻をレビュー
第3巻では、奴隷の身に落とされていたエウメネスに買い手がつく。ところが、この飼い主がエウメネスが心の底で行ければ、と思っていたアテネと逆の方向の黒海側の都市の富裕商人。ところが、なんともこの人物が怪しげで、といったところで始まる。
収録は
第20話 書い手あらわる
第21話 出稿
第22話 アンタカイオス
第23話 アルゴ号
第24話 パフラゴニアにて・1
第25話 パフラゴニアにて・2
第26話 パフラゴニアにて・3
第27話 パフラゴニアにて・4
第28話 パフラゴニアにて・5
第29話 パフラゴニアにて・6
となっているのだが、エウメネスを買った商人のぜラルコスは、その性向が原因で途中であえなくお隠れになってしまうので、この巻の本筋は遭難後のパフラゴニアでの歳月。場所的には、ビザンティオンの先な、ティオスの近くなんてのが出てくるのだが、ギリシアから東欧に向けたあたりの地理なんぞ皆目わからぬ当方にしてみるとぼーっとするばかりである。

このパフラゴニアで、普通の、頼りになる若者として成長し、刀剣の術を覚え、好きな娘もでき、といったところで、エウメネスの今後を支える基礎がここでつくられた、といった設定であるらしい。
なんにせよ、身寄りのないところに流れ着いた男の子が、温かい村人に囲まれて、成長していくっていうのは、シュトルム・ウント・ドラングの教養小説の風合いがあってなかなかよいもの。
その上に、この巻の最期には、主人公と想い人の間に暗雲を漂わす、有力者の若旦那の姿も登場して、まさに60年代の青春ドラマっぽい仕立てになるのが、また大時代的でよろしいのである。

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