マケドニア軍は雌伏中 ー 岩明均「ヒストリエ 8」

さて、少々長い猶予期間ではあったが、エウメネスの出世物語も、ようやく戦乱の時に突入した。
しかも、その戦乱がけして大勝利、といえないものなので、今まで逼塞ぎみであったエウメネスが一躍、陽のあたるところに登場する機会もでようというものだ。
収録は
第66話 2都市攻略戦・2
第67話 2都市攻略戦・3
第68話 2都市攻略戦・4
第69話 2都市攻略戦・5
第70話 スキタイ遠征・1
第71話 スキタイ遠征・2
第72話 帰途の一戦・1
第73話 帰途の一戦・2
となっていて、最初の方は、ペリントスとビザンティオンでのアテネとの戦い。第70〜71話は、敗戦後、帰りしな失地回復とばかりにスキタイの甘言にのってしまった話とか、スキタイに勝ったものの、バルバロイに襲われて不覚をとるとか、マケドニアにとっては苦い話が続く巻である。
注目しておくべきは最初のほうの戦いで、第9巻でエウメネスが深く関わるアテネの名将にして強力な雄弁家であるフォーキオンの登場。
で、そのフォーキオンの評であるが、優秀な雄弁家、政治家であるほかに
戦場において妙策、奇策を繰り出すような天才肌ではないものの、その指揮ぶりは堅実かつ着実。
冒険を極力避けつつ最小限・最大効果の戦闘で戦局を優位に導いていく
というのは、「実力あるビジネスマン」をめざす者が目指す理想でもあろう。
で、この巻におけるエウメネスはアテネとの海戦での進言や、アテネへの敗戦後失地回復とばかりにでしゃばったスキタイでの戦い、その後引き揚げ中におけるトリバロイ部族の襲撃でのアッタロスを騙った伝令・指揮といったところで存在感を増していく、といった展開である。
最後の方で、後年、フィリッポスの后となるエウリディケと恋仲になったような描写もあり、成り上がりまっただ中のエウメネスであった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました