下川裕治 編「本社はわかってくれないー東南アジア駐在員はつらいよ」(講談社現代新書)

タイ、ミャンマー、ベトナムといった東南アジアや台湾、沖縄の旅行記で定評のある下川裕治氏が、東南アジアの日本企業駐在員がビジネスの現場で体験している、苦笑いや胃がいたくなるような、現地の人々とのトラブルの数々をレポートしたのが本書
小目次までレビューするとネタバレもいいところなので、大目次までにしておくが、構成は
1 すぐ休む人々
2 働かない人々
3 会社を私物化する人々
4 身勝手な人々
5 会社のカネを使いこむ人々
6 すぐに訴える人々
7 役人な人々
8 宗教で生きる人々
9 才能ある人々
10 不運に見舞われた人々
11 日本を持ち込む人々
となっていて、大目次だけでも、なんとなく東南アジアの国々の「困った人々」ではあるが、なんとなくユルくて、ギスギスしない感じが表れているといえる。

例えば、ラオス人を評して
ラオス人の八割が農業に従事している。農民気質というのは、他力本願的な部分が多い。・・・時間感覚も似たようなものだ。今日いかなくても明日がある。一日でそんなに変化は生まれない。今日、お腹が痛かったら、仕事は明日にまわせばいいのだ。(P21)

ラオス人の住居は高床式住居。住居スペースである二階部分は大きな広間があり、その奥に個室が二〜三部屋。家長夫婦と子供の寝室に別れる。そこで長男が結婚すると、一部屋を占拠するので残りは一部屋。他の兄弟はそこで雑魚寝するのが普通。
生まれてから一人で寝たことのない人もいる(P55)
であったり、最近、経済成長著しいマレーシア人を評して
マレーシア人は、だんだん経済状況がよくなって親からちやほやされて育った人が多い。いざとなったら政府がなんとかしてくれるとの依存心も強くなっている。だから、ちょっと厳しい状況に直面するとへなへなとなってしまう

マレーシアでは、3Kといわれる建設業や製造業だけでなく、飲食業やサービス業でも慢性的な人手不足に悩まされている。実際にミャンマー人労働者などが日本料理店の裏方を担っている例もある。外国人労働者抜きでは経済活動がたちゆかないような構造ができてしまっているのだ。(P27)
といったところに、未来の発展の可能性も秘めつつも、なにやら様々な課題がありそうな東南アジアの姿を象徴しているようだ。
だが、雨が降ると会社を休んだり、社内のバスケットボール大会を関連会社を含んで3ヶ月にわたって開催したり、自宅を改築するので、その現場監督に会社をやめようとしたり、郵便局が業務そっちのけで局あげて焼き鳥屋の副業に盛を出したり、と困った話ではあるが、微笑んでしまうようなエピソードになるのは東南アジアゆえであろうか。
そして、日本の会社もそんな東南アジアの風情に影響されるのか、社則はひと昔前のものが多く
・移動は社用車を使う
・屋台で食事をしてはいけない(P187)
といったことが残っているのは御愛嬌というべきか。
まあ、今後の経済環境を見れば、東南アジアとの関連性は高まる一方であろうから、こうした「ゆるさ」を身につけるのも有効な一手であるかもしれないですね。

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