竹中正治「ラーメン屋VSマクドナルドーエコノミストが読み解く日米の深層」

識者による日本とアメリカの比較論、比較文化論というと、「日本絶賛、日本は日の昇る国」パターンか、「日本はもともとダメ。紅毛碧眼、メリケンの言葉は神の声」パターンどちらかになるのが多くて、たいてい、読んでいる途中で辟易していくることが多く、当方の場合、とりわけそれは後者の場合に顕著である(人間誰も、自分や自分の縁戚、知り合いが褒められるのは嬉しいものだものね)。
そのあたり、本書は、中間寄りから、少し日本贔屓に近い、というところであるのが、まずは良い所。
構成は
はじめに
第1章 マックに頼るアメリカ人VSラーメンを究める日本人


 1 日本人教授が米国で語る「だから日本人はダメなんだ」論


 2 日本アニメ職人の心意気


 3 「マクドナルドモデル」対「ラーメン屋モデル」


第2章 希望を語る大統領VS危機を語る総理大臣


 1 普通だったら「 Excellent」


 2 「インディペンス・デイと「宇宙戦争」


 3 それでも日本の危機管理が甘いのはなぜか


第3章 ディベートするアメリカ人VSブログする日本人


 1 文字文化の日本、対面文化のアメリカ


 2 商売上手なシンクタンク・ボスとの対面


 3 討議は闘技なり


第4章 「ビル・ゲイツ」VS「小金持ち父さん」


 1 ジャパンマネーは本当に臆病か?


 2 リスクマネーの背後にある超格差社会


 3 日本人よ、万羽のミニハゲタカになって瀕死の巨像を啄もう!


第5章 一神教VSアニミズム


 1 アニムズムの精霊「ポケモン」


 2 「ハリー・ポッター」に反発するキリスト教徒たち


 3 キリスト教公国の大統領
第6章 消費者の選別VS公平な不平等
  1 信用データ絶対主義
 2 「新銀行東京」失敗の本質
 3 アメリカの超格差社会は日本の未来か?
となっていて、目次だけをみると「判じ物」のような感じで少しもどかしい。
まあ、この辺は本文を読んでね、というところだろうが、それではレビューにならないので、当方が気になったあたりをピックアップすると、アメリカ人と日本人を比較して

アメリカ人は相手のパフォーマンスを評価する立場にある場合、ポジティブな表現に気前が良く、日本人は極めて禁欲的である。その反対にネガティブな表現をアメリカ人はあまり使わない。

この違いを類型化すると、日本人に多い類型は「危機感駆動型」であると言える。「このままではお前(日本)はダメになる!」「危機だ!}と言われると強く反応して動き出すわけである。
一方アメリカ人に多い類型は「希望駆動型」である。「できるじゃないか!」「ステップアップできるぞ!」と励まされると強く反応して動く
といったところから
(日本の組織は)事業の計画通りの遂行には強い執着力を発揮する組織なのだ。
ところが、不確実な現実な中で様々な悪環境を想定し、期待通り進まなくなった場合の次善策や軌道修正、代替策を用意しながら事業を進めることはひどく苦手のようだ。
(中略)
要するに、失敗の発生を前提とし、小規模の失敗が生じた時にはそれが大規模な失敗に発展しないようなフィードバックを働かす、あるいは起こった失敗の諸事例から失敗の要因と法則性を抽出して未然に防止する仕組みを整える、こうした運営、学習に日本型の組織、教育は弱いのではなかろうか
と日本の深い所を”とん”と突いてくる。
で、日本人の本質というのは、クールジャパンの中心であるアニメの製作・監督で有名なりんたろう氏の
「日本アニメ産業が大きく成長して、巨大なビジネス規模になったと言いましたが、それはボク達のやっていることに商業ビジネスが群がって巨大市場になったということであり、ボク達は昔も今も面白いものを作りたいという気持ちだけでやっている」
という言葉に象徴されるように、「職人」であるように思われ、
「アーティスト」と「職人」の違いは何か?私なりに定義すると、自分の創作したいものを創って、結果的に得れたり得れなかったりするのが芸術家・アーティストである。一方、受注があって初めて仕事が始まるのが職人である。だからアーテイストは創作に好きなだけ手間暇をかけるが、職人は発注者との関係で時間と予算が限られており、その制約条件の中で腕をふるう。
といったところが肝のような気がする。
では、当方も、その職人気質を掘り起こすような仕事ができるよう、腕を磨かねばならぬな、というところであろうか。

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