スコット・バークン「マイクロソフトを辞めて、オフィスのない会社で働いてみた」(新潮社)

マイクロソフトに勤務し、その後コンサルタントの仕事をしていた筆者が、ワードプレス・ドットコムというブログ・サービスを提供するIT会社に、一つのチームのリーダとして雇われ、リモート・オフィス環境で、1年間、仕事をしたあれこれの記録

構成は

第1章 ホテル・エレクトラ=リモートソフィスとチーム
第2章 初仕事=採用と新人の訓練
第3章 キャタデーのチケット=社員管理法
第4章 文化はつねに勝つ=企業文化①
第5章 打ち合わせは文字で=社内コミュニケーション
第6章 伽藍のバザール=社内イベントの効用
第7章 おおげさな話=最強チームをつくるために①
第8章 仕事の未来Ⅰ=組織と人材
第9章 チームを動かす=リーダーの役割①
第10章 火事の起こし方=危機管理術
第11章 本物のアーティストは世に出す=リーダーの役割②
第12章 アテネで迷ってみつける=リーダーの役割③
第13章 ダブルダウン=プロジェクト進行法①
第14章 ひとつにする=企業文化②
第15章 仕事の未来Ⅱ=リモートオフィスの要諦
第16章 イノベーションと摩擦=最強チームをつくるために②
第17章 インデンス・ディベート=プロジェクト進行法②
第18章 太陽を追いかけて=スランプ脱出法
第19章 ジェットパック発射=プロジェクト進行法③
第20章 お金はどこに?=企業文化③
第21章 ポートランドと集団の問題=企業文化④
第22章 社会化局=リーダーの役割④
第23章 ハワイ経由の退場 後継者育成
第24章 仕事の未来=理想をあきらめない
となっていて、1年間のビジネスの記録といった態なのだが、注目すべきは、筆者がプログラマとして勤めたのではなく、「チームリーダー」という、一定程度、管理的な側面のある職種での。リモートオフィスのレポートであるということで、最近、話題になっている「テレワーク」の参考本に使えないかな、と思って読んでみた次第。

「オフィスがない会社」ではあるが、バーチャルな働く場は確保されていて、Skypeによる会話や、専用のグループウェアなどは整備されているし、また、世界各地でリアルなミーティングの実施など、単に経費削減や休暇中の在宅者の対応なんてところで、この会社を見習うと、火傷しそうな感じはある。

ただ、
社員がほとんどの時間をメールやウェブ・ブラウザーを見てすごしている職場なら、この新しい働き方(リモート業務)を試す条件はそろっている。
 
部外者は、リモートの仕事というと自宅で働くものと思っているが、それは大きな勘違いだ。実態は、社員がどこでも好きな場所で働けるということだ(P186)
といったところで、多くのホワイトカラー職場にも適用できそうなところはあるそうなので、テレワークの一つの実施例として分析してみても損はないだろう。
本書で、テレワーク・ネタと同じくらい興味を引いたのは、
シュナイダーによると、よくある会社のあやまちは、法務、人事、ITといったサポート部門を、デザインや開発など、プロダクトを生み出す重要な部門と同等に考えてしまうことだった。どんな会社でも、プロダクトを生み出す部門、なかんずくイノベーションを担う部門は真の才能の集まりだから、プロダクトを産まないほかの部門は、彼らに奉仕すべきである。・・・マネジメントを含めたサポート部門が会社を牛耳るようになれば、とたんにプロダクトの質が落ちてしまう。
(P52)
そびえ立つ超高層ビルの建築家や、特大予算の映画の監督を想像してみてほしい。あらゆることに細かく計画を立てる、ひとりの優秀な絶対君主が頭に浮かぶのではないか、これが「伽藍」型の考え方だ。・・最初は小さく、いくつかの基本のコードから始めるが、すぐにそれを変更し、互いに貢献し、音を借り、実験し、思うままに協力しながら、また変えていく。これが「バザール型」だ。中心となる大計画の代わりに、ひとつのアイデアのまわりに仕事のコミュニティができて、育っていく。(P137)
といった「企業文化」に関連した辺りで、オフィスがある、ないに限らず、企業内の管理部門と実業部門の対立、指揮命令の階層性の課題な¥というのは共通の課題であるのだな、と思った次第である。

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