アジアの週末アラカルトー下川裕治「週末アジアでちょっと幸せ」(朝日文庫)

タイ、台湾をはじめとした、「アジア」の旅行記を、広く、深く書いてきた下川裕治氏の、ちょっとした「おやつ」といった感のある「アジア旅行記」
いくぶん、ベトナム、台湾など沖縄など、ちょっとしたエピソードが、どこかで読んだような・・というものもあるのだが、最近、アジア旅行記を精力的に出しているのでいたしかたないところもあるか。
構成は
第1章 韓国 大阪〜釜山
 釜山に向かうフェリーで、手品を習ってみようかと思ってみる
第2章 台湾 台北〜馬槽花藝村
 台湾の秘湯で、「後ろめたさ」という湯あたりに浸ってみる
第3章 マレーシア
 日本からのメールには返信せず、夕日を見ながら、こそっとビールを飲む
第4章 シンガポール マレーシア バトゥパパ河
 金子光晴の「マレー蘭印紀行」のように、熱帯雨林の深い森に堕ちていってみる
第5章 中国 星星峡
 そこから先は果てしない異国といわれる街で、寒さに震えながら星を眺める
第6章 沖縄 多良間島
 本土のルールを無視したアナーキーな島で浮遊感を味わう
第7章 ベトナム ドンダンー憑祥
 国境を歩いて越えるという憧れの一時間
第8章 バンコク プラカノン運河、センセープ運河
 街の底を走るような運河船にのって、バンコクの街をぼんやり見上げる
となっているのだが、「おやつ」と表現したのは、どの旅行も、定番のコースから外したものである所以。

例えば、韓国・釜山へ向かうフェリーでは、韓国料理が供されるのは当然として、船内のレストランのウェイトレスやショーのダンサーは、一人で何役もこなすウクライナ人に目をつけるのは、さすが面白いところにきづきますね、というところであるし、台湾で向かうのは、台北駅からバスに乗って、野犬に怯えながら向かう、秘湯の温泉などなど、週末旅という制約の中で、ちょっと変わった旅がレポートされていく。
ただ、そこはやはり放浪旅の大家でもある下川氏のこと
週末にアジアに行く・・・。それはとりたてて難しくはない。・・・
しかしもうひとつの旅がある、あてもなくといったらオーバーだろうが、あり余る時間を弄ぶように、ただ歩いていく旅である。こういう週末度は難しい。だいたいそういう目的のない度は、圧倒的な時間の空白の中から生まれてくるものなのだ。
といった風に、「週末旅」の慌ただしさに物足りなさを覚えるのは、やはりバックあパッカーの血が騒ぐ、というものか。
ほかの「週末旅」シリーズに比べると、幕の内弁当的な旅行記ではあるが、様々なものをあれこれ味わいたいという向きにおすすめかな。

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