「職人の組織」の運営は、意外に日本的なポイントが大事であった ー 鈴木敏夫「仕事道楽 新版 ー スタジオ・ジブリの現場」

ジブリのプロヂューサーである鈴木敏夫氏が「宮崎 駿」「高畑 勲」そしてジブリの会社としての誕生から現在まで、「ナウシカ」「トトロ」をはじめとするジブリの作品数々の誕生からリリースにまつわる逸話を語ったのが本書。
構成は
序にかえてー体にしみこんでしまった記憶
1「仕事は公私混同/まかせた以上は全部まかせる」
 ーアニメージュ創刊のころ
2「つきあう以上、教養を共有したい」
 ー高畑勲・宮崎駿との出会い
3「一番大事なのは監督の味方になること」
 ー『風の谷のナウシカ』そしてスタジオジブリ設立
4「企画は半径3メートル以内にいっぱい転がっている」
 ー宮崎駿の映画作法
5「みんなで坂を転げ落ちるのが映画づくりだ」
 ー高畑勲の論理と実践
6「人間、重いものを背負って生きていくもんだ」
 ー徳間康快の生き方
7「いいものを作るには小さい会社のほうがいい」
 ー「町工場」としてのジブリ
新「こつこつ努力することで開ける未来がある」
 ーつねに現在進行形で考える
となっていて、一定程度年年齢がいっていれば、ジブリ映画の記憶とともに、人生のあちこちで様々な思い出が蘇ってくるような仕掛けになっている。
では、あるのだが、当方が興味をそそられたのは、本書の中で見つけられる組織論的なもの。当然、ジブリはアニメ製作会社であるので、そこで働くのはアニメーターをはじめとする製作者が中心。「一匹オオカミ」的な職人たちの個性をどう発揮させ、どう尖らせ、といった「新選組」的な組織運営を考えていたのだが、どうもそうではないらしい。

そこで重要視されるのは
映画づくりで才能は必要ですが、誠実さも同時に必要です。実際、才能のある人ばかりで一本の作るというのは不可能です。一人の人間が考えたものをみんな寄ってたかって作るわけですから、数人の才能のある人と誠実にこなしてくれる人の両方が必要なんです。(P176)
機能と人間というか、才能と誠実さのバランスは難しいけれど、その両方が絶対に必要です。まじめだけれどまだ力が足りないという人がいると、みんながそれを助けようとする。助けるなかで、助けている人自信が新しい面を出して伸びていく。これが組織出ることのよさだし、単なる「一匹狼」の集合だと、力は単純に足し算で、下手をすると引き算になってしまう。新選組は実際に仲間内で斬り合ってしまいますしね。教え教えられという関係がうまくできる、掛け算にもなるかわけですから。(P178)
といったことであるようだ。当然、そういったシチュエーションでの指揮官の役割は
プロヂューサーの仕事で重要なことのひとつは見取り図を書くことです。モノゴトを大きく把握し、進行状況を確かめるために、図で表示する。これはある意味で地図を描くのと同じです。地図は空間把握・時間把握の表現ですからね。(P164)
といったことであるらしく、意外と「和」というものは、職人集団のマネジメントに大事なのね、と改めて知らされる。
さらに、ジブリのミーティングのやり方も
「楽しい会にすること」
「若いメンバーの参加」
「全員に意見を言わせる」
「自分の意見を用意せずにのぞむ」(P149)
といったことが鉄則のようであるから、なにやら親近感がわくではありませんか。
そして、
たとえばキャラクターを商品化して関連グッズを売るという話は、やまほどきましたよ。その方向で拡大路線をとると、本当に「商売」になってしまいます。何より作品を作ることが中心の会社であり、腕のいい町工場でなければならない。変質してしまったら、何のために会社を立ち上げたのか、わからなくなってしまう。(P243)
といったあたり、様々な「組織」「会社」の運営に「深い」言葉であるように思うんだが、どうであろうか。

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