久々の異譚・奇譚 ー 太田忠司「奇談蒐集家」(創元推理文庫)

そのミステリーの腕力は、登場人物とシチュエーションの巧妙さにかかっているといってよい。このミステリーもそのあたりは巧妙に仕掛けてきていて、都会の場末の「starwberry hill」が舞台。ここで新聞記事で募集した「世にも稀な奇談」が買われており、老若男女が訪れては、「恵美酒 一(えびす はじめ)」という男に奇談を語るのだが、横で聞いている秘書と称する男性であるらしいのだが女性でもあるような「氷岡」という秘書も話を聞いていて、というのが最終話以外の筋立て。

収録は

自分の影に刺された男

古道具屋の怪

不器用な魔術師

水色の魔人

冬薔薇の館

金眼銀眼邪眼

すべては奇談のために

となっていて、奇談はそれぞれ、姿見に憑依した江戸時代の姫君そっくりの女性とめぐりあう話であるとか、街の中にあるバラの美しい屋敷に住む主にここに一緒に住もうと誘われる訳とか、特異なものであるのだが、それぞれの話の結末で、「氷岡」の謎解きがあまりにも現実的で夢をぶち壊されるというのがひとまずの展開。

ところが、最終話で、この奇談収集の話を小説家志望のライター見習いが、雑誌に書くために取材を始めたところから、なにやら今までの話が妙なことになりはじめ、といったところで、ネタバレになるといけないのでレビューはここまで。

ミステリーの一つのジャンルである「風変わりな話」「ストレンジ・ストーリー」を久々に読みました。

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