「七姫」の謂れは、織女の7つの異称、秋去姫、朝顔姫、薫姫、糸織姫、蜘蛛姫、梶葉姫、百子姫であるらしい。
そのあたりを受けて、収録は
ささがにの泉
秋去衣
薫物合
朝顔斎宮
梶葉襲
百子淵
糸織草子
となっていて、それぞれが独立の物語。話は「七姫」となっているとおり、なにかしら男女の色恋沙汰にまつわる話で、その主人公は、「ささがにの泉」は衣通姫、「秋去衣」は軽大郎女、「薫物合」は軽女、「朝顔斎宮」は藤原娟子、「梶葉襲」は藤原生子こと梅壺女御、「百子淵」は不二原の里の水都刃、「糸織草子」は京都西町奉行所同心の奥方の志乃、といったように素性も、知名度もバラバラで、時代も古代から江戸時代までと、かなり幅広い。
ただ、根っこのところは、先日の「葛野盛衰記」のように、「土地」が主人公の物語といってもいいのかもしれなくて、どれも「藤原の泉」あるいは、そこの出身者ということが共通していて、連続で読むと、独特の共通した風合いが感じられてくる。
ミステリーという分類になるかどうかはちょっと「?」がつくのだが、ストレンジ・ストーリー、異色短編といったところであろう。変わった風味の話が好きな人はぜひどうぞ。
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