タイムトラベラーネタを使った時代ミステリー — 柴田よしき「小袖日記」(文春文庫)

以前のエントリーで森谷明子さんの「源氏物語」のシリーズを取り上げたのだが、それとはまた違った風味の「源氏もの」のミステリーがこの「小袖日記」。
設定は、というと、森谷さんの「白の祝宴」「望月の後」といった作品が、紫式部ないしは、その侍女の阿手木が主人公であるのだが、この「小袖日記」は、雷によって、紫式部の侍女「小袖」と意識が入れ替わった、現代の不倫相手に捨てられたOLというSF仕立ての設定である。
で、そういう仕立てであるから、源氏物語のSF的解釈かというとそうではなく、源氏物語の各帖の裏にある隠された事件の解決ないしは、各帖の基となった事件を解決する、という形。
収録は
第一章 夕顔
第二章 末摘花
第三章 葵
第四章 明石
第五章 若紫
となっていて、源氏物語のメジャーな帖ばかりである。
で幾つか、さわりなりをレビューすると、
第一章の「夕顔」は、原作では、六条の御息所の生霊にとり殺される夕顔なのだが、「小袖日記」では、彼女はいつも袖の中に菓子を忍ばせていて、ある時、それを口にすると血を吐いて死ぬのだが、彼女がいつも菓子を持っていた理由と彼女を殺害したのは誰か、
といった謎解きであるし、
第四章の「明石」は、舞台を明石で、原作では源氏の流罪中に寵愛を受け、源氏が都に帰った後、都へ呼ばれる「明石の君」の真相で、紫式部と小袖が明石で出会った「明石の君」と、都で再会するあ「明石の君」が別人なのだが、そのわけは
といった感じである。
まあ、森谷明子の「源氏シリーズ」とは違い、「源氏物語」を本歌どりした「異譚」といて読むのがよろしいのではないかな。

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