空き家を取り巻くお寒い現状 — 長嶋 修「「空き家」が蝕む日本(ポプラ新書)

日本全体の人口減少の話や地方創生・地方の活性化の話が喧しくなり始めるのと並行して、「空き家」の問題が様々な形でクローズアップされてきている。それは、空き家による都市の空洞化の問題であったり、空き家を活用したリノベーションの話であったり様々であるのだ、皆一様に膨大な空き家の数に圧倒されて立ちすくんでいるように思えてならない。

本書は不動産会社での勤務を経て、不動産のコンサルタントしている筆者による。「空き家問題」についての考察本。「考察本」と書いたのは、他書と同じように「空き家」の解決策を提示しようと試みるも、途中で立ち止まっている感があるため、

構成は

第1章 日本の不動産、現場からの疑問

第2章 「空き家」が増え続けるのはなぜか?

第3章 日本の住宅はなぜ寿命が短いのか?

第4章 賃貸住宅が貧弱なのはなぜか?

第5章 物件情報はこうして囲い込まれる

第6章 エネルギー問題と住宅政策

第7章 海外シフトする不動産投資

となっているのだが、「空き家」問題について読もうというなら、第1章から第5章までがメインで、当方の感じでは、不動産業界に身を置いている人による業界の裏ネタも含めた「空き家」問題の分析という感じで読むのが良い気がする。

例えばそれは、

不動産の価格は、客観的で論理的な裏付けを持って厳密に査定されるものだとばかり思ってました。ところが、価格査定の場面では、査定の妥当性を担保するような根拠や概念が全くありません

とか

(物件情報を)登録してもすぐ削除してしまう。データベースに登録しない、などの行為がまかり通ってます。あるいは情報は登録するものの、他社に客付けさせないのです。物件情報の確認で他社が電話をすると、「話が入ってますので」などと曖昧な回答をし、情報を公開しないのです。

といったところで、これが真実であれば、「空き家」問題の解決に必須である「中古住宅」の流通という要のところ自体が機能していないこととなる。

筆者としては、リフォームた修繕を評価に入れた、中古住宅を再評価する仕組みや借地借家法の見直し(当方が学生の頃は日本の借地借家法は弱者に配慮した良法だと記憶しているのだが、時代の変遷にどうやら乗り遅れているらしい)、不動産の媒介契約を「オープン型」「クローズ型(囲い込み型)」に分ける運用など、各種の提案がされているのだが、実現には結構ハードルがありそうな気が素人ながらしてくる。

「空き家問題」は結構歯ごたえのある代物のようですな。

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