とてもライトな女子高生ミステリー — 谷原秋桜子「天使が開けた密室」(創元推理文庫)

ミステリーの風合いにはいろいろあるのだが、どことなく食わず嫌いがあって、手にとってはみるものの読むところまでいかなかったのが、本書のような、ライトノベル系のミステリー。どこが気に食わなくてというわけではないのだが、どことなくふわふわして地に足がつかない感じに違和感があったのだが、今回、家族の入院の付き添いの際の時間をうっちゃるにはもってこいのミステリーであった。
収録は「天使が開けた密室」と「たった、二十九分の誘拐」
「天使が開けた密室」の構成は
第一章 アルバイター・美波
第二章 とんでもないアルバイト
第三章 密室出現
第四章 意外な犯人
となっていて、南米で失踪した父親の行方を捜すため、コンビニでアルバイトをして渡航費用をためている女子高校生「倉西美波」が、コンビニで悪質な詐欺にひっかかって女子高生にしては多額の借金を追うところから始まる。
その借金を返すために、葬儀社の深夜のアルバイトを引き受ける。このアルバイト、報酬は高価いのだが、なんにことはない病院で死を迎えた人を葬儀会場や家族の家まで運ぶ車まで運ぶ、というもの。
で、そのアルバイトで死体運びの様々な出来事に翻弄されている中、その病院で葬儀社の同僚の殺人に出くわして、犯人扱いされて・・といったのが大筋。
途中、同級生のアスリートや深窓の令嬢や、隣に住む得体のしれぬ大学生”修矢”や、病院に入院中の高利貸に会社社長などなどとのやりとりもかなり軽いタッチで進む、ライトノベルタッチの”ほんとう”に軽めのミステリー。
ただ、このあたりは批判でも何でもなくて、大層な社会的問題をどうこいうといったミステリーも多い中で、「密室殺人」しかも”衆人環視のもとの密室”という本筋のネタを使っていながら、軽い読み物に仕立てるという、”時間をうっちゃる”というミステリーの王道の一つをきちんとおさえた一作である。
「プロローグ」のなにやら意味不明の感謝の言葉らしきものは、初読のときはなんのことやらわからなかったのだが、トリックが判明すると、あぁと合点がいくのだが、その頃にはプロローグのことは忘れているのが私の場合通例である
二作目の「たった、二十九分の誘拐」は、美波の友人のアスリートの直海が遭遇する事件。彼女が先輩から借りた携帯に、その先輩の弟の誘拐の脅迫電話が入り、といったところからスタートして、その電話に彼女は振り回される、といった筋立てて、誘拐事件の真相は本書を読んでね、というところで、高校生といえども全国クラスのアウリートとなると、いろんな利害が絡んで大変ね、ということをネタバレしえおこう。
まあ、肩の凝らないミステリーとしてはオススメでありますな。

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