下町のレストラン・ミステリー — 近藤史恵「タルト・タタンの夢」(創元社推理文庫)

美食モノのミステリーといえば、ネオ・ウルフものとかがあるのだが、レストランを舞台にした連作ミステリーというのは、場所が固定されているし、登場人物も之押されがちということで結構難しいものだと思うのだが、そのあたりをそつなく押さえたミステリーが、この「ビストロ・デ・マル」シリーズ。

構成は

 

タルト・タタンの夢
ロニョン・ド・ヴォーの決意
ガレット・デ・ロワの秘密
オッソ・イラティをめぐる不和
理不尽な酔っ払い
ぬけがらのカスレ
割り切れないチョコレート

 

となっていて、ほとんどが料理名とかお菓子の名前とかが表題に入っているのだが、かなりの部分が具体的に頭に浮かばない”フランス料理」音痴なので、それらの料理の講釈はご勘弁を願いたい。
で、ミステリーは、そのレストランで起こる、ちょっとした謎がほとんで、例えば、「タルト・タタンの夢」では、歌劇団の人気女優と結婚することになった男性の体調が急に悪くなった理由であるとか、「ガレット・デ・ロワに秘密」のように、店のサブ・シェフの志村さんが、奥さんと親しくなり、結婚した陰のちょっとした犯罪とか、謎が解けると、少しほっこりするようなお話が収録されており、最近、少し凝っている「ほんわり」系のミステリーである。
心が少し弱っていたり、逡巡することがある時に、ひと時、「憂きこと」を忘れされてくれるによろしいミステリーであります。

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