秋葉図書館の人間模様 ー 森谷明子「花野に眠る」(東京創元社)

東京の郊外、秋葉市の秋葉図書館を舞台にした図書館ミステリーの第2弾。
今回の構成は
第一話 穀雨
第二話 芒種
第三話 小暑
第四話 白露
第五話 寒露
となっていて、それぞれが独立した話で秋葉図書館の寄贈者であった秋葉家の孫の佐由留くん父親の実家の秋葉家に滞在中の出来事の謎解きや両親の離婚話の顛末が大きな流れではある。
ただ、途中、第一作の「二月尽ー名残の雪」の秋葉家の現在の当主が子供の頃に見た「雪女」の謎や「冬至ー銀杏」の深雪さんと若き日のの恋愛話の遅まきながらの決着といったことが並行した流れとしてでてくるので、できれば一作目を読んでから、二作目にかかったほうがよいのではないかと、老婆心ながら思うところ。

 

図書館や美術館を舞台にしたミステリーは、世間離れしたところと認識される図書館・美術館で世間のドロドロを持ち込んだような殺人事件や、あるいは贋作・盗作ものといったところが通例であるのだが、この秋葉図書館シリーズはそれとは一線を画すもので、秋葉図書館を舞台にして地域の人々が持ち込んだり、地域の人のそばにある謎解きをするという、ホンワリ系のミステリーといっていい。

 

今回は「雪女」の謎のところで、どことなく暗いイメージが漂うのだが、最後に「希望」を遺した感じで終わらせていて、そのあたりに筆者のこのシリーズに対する温かい目線を感じないでもない。
心荒む時に、しばし殺人や社会的陰謀や深い怨恨のないミステリーで時間と精神をうっちゃるのもいいのではないかな

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