高橋留美子「高橋留美子劇場 1」

普通の場合は、長編の構想力はすごいが最近短編がね、といった風で、売れっ子になって連載が忙しくなると、短編のほうがどうしても切れが悪くなるのが通例であるようで、長編と短編の才能は別物であるような気がする。

そうしたところで、どちらもこなすという稀有の才能が小説界であれば宮部みゆき、コミック界では高橋留美子の右に出るものはいないな、と勝手に評価をしている。その高橋留美子の短編を集めているのが、この「高橋留美子劇場」。たしか他のシリーズ「るーみっくわーるど」のシリーズがあって、確かそれは氏の初期の短編が多かったような気がするが、この「劇場 1」は1987年から1991年の初出のものが収録されていて、「らんま1/2」の連載中でもあるので、まあ中堅期の作品集ということか

 

収録は

「Pの悲劇」

「浪漫の商人」

「鉢の中」

「百年の恋」

「Lサイズの幸せ」

となっていて、ミステリーやらの名作にちなんだような名前だが読む限り関連性はない。

で、高橋留美子氏の短編は、ホラー色の強いものと、パロディ・お笑い色の強いものとが印象が強いのだが、この短編集のような「お笑い」の衣をまといつつも、人生の一断面を切り取って、ほろっとさせるものがまた良い味。

例えば、「Pの悲劇」はペット飼育禁止の公団住まいのサラリーマンのが商談先の外国人(サンスター氏というらしい。おそらくペンギンにちなんで、こうしたキャラを思いついたに違いない)の依頼でペンギンを預かることとなったドタバタではあるのだが、執拗にペット飼育禁止を訴える同じ団地の隣人の本音を垣間見させるところや、「鉢の中」のように、義母と旦那に事故で先立たれた隣人から預かった植物の鉢の中から見つかった「人骨」の正体にあれこれ怯えるホラー仕立てのように見せて、実はその隣人の家の意外な実情といったところは、「ほぅ」と感嘆の声を上げてしまう。

 

どうも、ずぶずぶと入り込んでしまいそうな短編集のシリーズなので、Amazonさんには全巻買いの対象にしておいてもらいたいものでありますな。(私は単品買いで4巻まで買ってしまいました・・・)

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