西村ミツル・梶川卓郎「信長のシェフ 8」(芳文社コミックス)

第8巻は顕如の率いる石山本願寺との再度の和睦。この席で、信長に食中毒の罠をしかけて政治的暗殺が企まれるのをからくもケンが阻止するのだが、顕如があいかわらず貴人の冷たさと謀略好きを見せて悪役ぶりが良い。

巻の中ほどは、松永弾正の裏切りの鎮めと、武田信玄の元での幽閉生活

松永弾正が、自分は誰の味方でもなく、「わしはわしだけの味方」「欲しいのは混沌と混乱」とうそぶく辺りが裏切りの連続で戦国時代の陰のところを象徴する武将の姿がよく描かれている。

また、武田での幽閉生活は、織田領から武田信玄の命令で始末されるところを、薬膳の知識にすくわれて、信玄の料理番として命をつなぐのであるが、武田の家中の印象というのが、個人的な印象では少々暗さが過ぎる。

これも信玄に信長を評させて、「あの男のように全てを破壊し全てを変えていくよりも、守っていくことこそが正しいこともあろう」と言わせている「守り」の故でもあろう。

「変化」の厳しい折には「守り」の美しさに惹かれることも多いのは事実で、他の書評をみると信長と対照的な信玄の姿勢に憧れるむきもあって、それはそれで良いのだが、「守り」は特有の停滞と暗さを伴うものであるところは押さえておくべきかな。

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